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まら

2014年08月04日 12:11

まら

甲「えッ、おう、見てみろイ、ここァ伊勢屋の妾の寮だぜ、今度新築しやがった……」
乙「フーン豪勢な家ィたてやがったナ、なんでえ、この壁ァ……。え、真っ白な白壁じゃァねえか。 シャクにさわるなア、まったく……」
甲「どうでえ、ひとつイヤがらせに落書きでもしてやろうじゃァねえか……」 ッてんで、職人が二人、矢立てを出して墨黒々と落書きをしてまいります。
女中「あッ、ご寮さん、ちょっとごらん遊ばせ。壁に、こんな、松茸落書きがしてありますわ……」
妾「ま、やだねえ。今日は旦那が来るはずだから、これを見られたら、どんなにごきげんを
損ずるかも知れない。急いで左官熊さんを呼んで、上塗りをしてもらっておくれ」 上から塗り消しておきますと、翌朝、 甲「おい、もう、塗り直してけッかる」
乙「フーン、生意気なやろうだ。もっぺん、書いたれ、書いたれェ……」
女中「……あら、ご寮さんご寮さん、また、書いて行きましたよ、昨日より、もっと大きな松茸を……」
妾「ほんとにしょうがないわねえ。旦那は昨日来るといって来なかったから、今日はきっと 来るに違いない。早く早く、熊さんを呼んで来とくれ……」
そのまた翌朝……。 甲「見やがれ、また、壁を塗り替えやがったぜ……」 乙「よオし、こうなりゃこっちも男だ、ひっこんでたまるか。壁いっぱいに書いたれ!」
てんでナ、壁いっぱいに大きな松茸を書いて行く。女中「まーア、ご寮さん、今度は、壁いっぱいに大きく書いて行きましたヨ。左官熊さん
呼びましょうか?」 妾「もう、やめにおし」女中「あら、どうしてですの?」 妾「考えてごらん、松茸は、サワればサワるほど、大きくなるんだよ……」

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