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2014年06月18日 01:07

墨

タトゥー刺青、文身、彫り物、入れ墨、紋々、数多くの呼び方を持つ、所謂『皮膚の内部に色素を取り込む行為』の歴史については、現在多くの研究や実証が行われています。日本はもとより、世界に目を向けてみた時の様々な事実や興味深いその変遷の歴史の一部をご案内します。

世界に誇る日本の刺青文化

現代に続く日本の華美な刺青文化は、江戸時代中期に確立されたものと言われています。江戸大阪などの大都市人口が集中し始め、犯罪者が多数発生するようになったため、犯罪の抑止を図る目的で入墨刑が用いられましたが、容易には消えない入墨の特性が一般的に再認識された事で、その身体装飾への応用が復活したと言われています。近代においては和彫りや総身彫りというと任侠のもののように思われがちですが、当時は大工左官、火消し、駕篭かき等の職人に好まれていたものでした。また、吉原等の遊郭でも女郎旦那衆が将来を誓う証立ての刺青を入れることが流行したりと様々な文化を創り上げてきました。そして現代においては、程良いアンダーグラウンドの風味を維持しながら、刺青タトゥーはどんどんボーダーレス化が進んでいます。男女やライフスタイルの垣根を超えて様々な人がタトゥーを愛好しています。タトゥーの持つ意味合いの移り変わり
例えば前述で触れた、約5000年前の新石器時代のアイスマン、彼は何故タトゥーを入れていたのでしょうか?同時代のものに比べて、比較的損傷が軽微だった彼からは、様々な推測が可能になります。彼からは、膝・ふくらはぎ・足首・背中の部位に、合計九箇所のタトゥーが確認できますが、その九箇所は、鍼治療における人体のツボと一致しています。と言っても、人体のツボなんてとても数多く存在するので、その事実だけを取り出して、古代人は治療の為にタトゥーを施していたと考えるのは早計かもしれませんが、少なくともその可能性はあったのではないでしょうか。次にもう少し時代を進め、約3000年~4000年前のエジプト王朝時代はどうだったかを考えてみます。この時代においてのタトゥー奴隷烙印として使用されていたと同時に、高い身分の人間からもその文様が確認できます。奴隷烙印であるタトゥーが棒線二本等のデザイン性の低いものであることに対して、身分の高い人間のミイラからは、今でも人目を惹きつけるようなデザイン性の高いタトゥーが施されています。この時代のタトゥーは、強制的に入れられてしまう屈辱の証でありながら、支配者層には自らを装飾するファッションでもあったのかもしれません。約2000年~2500年前の時代でも、ギリシャ歴史家ヘロドトスが、その文献にギリシャより東側のユーラシア大陸では、タトゥーを身分の高い人物の象徴であると書き記しています。こうした入れ墨(タトゥー)=高貴、といった風潮はこの後も紀元1500年頃まで継続している事が様々な文献から確認できます。そして約500年前頃の中世に入ると、今度はまたタトゥー野蛮人といったマイナスイメージが定着していきます。世界的な大航海時代西洋帝国主義の国々は、未開の土地タトゥーを入れている原住民を蛮族と決めつけ植民地化を正当化していきます。また、戦争が頻発していたこの時代には、刑罰としての入れ墨世界中で行われています。ここ日本においてもまだ、江戸文化が花開く前の戦国時代初期です。各地の豪族達は領民に刑罰としての入れ墨を行うのみで、その芸術性が認知されるのはまだ先の事になります。150年ほど前になると、日本の刺青は大きく世界から注目され始めます。大政奉還が成った後、明治政府は廃刀令と同時に刺青に対しても禁止令を出しました。政府としては開国と同時に少しでも世界に溶け込めるように、そして先進国にあわせたモラルや考え方を持つことで、世界から取り残されないようにと考えました。髷を落として帯刀をやめる。世界的に例のない刺青文化もこの際禁止しよう、と考えたのです。しかし政府の思惑とは裏腹に、開国と同時に世界各国から日本を訪れた人々は日本の刺青を見てその美しさに驚嘆しました。そして競って日本の刺青をお土産代わりに彫るようになります。水夫達はもちろんのこと、イギリス皇太子からロシア皇太子までが「刺青」を入れています。同時に日本の彫師達も施術の際に外国人の「タトゥー」を目にするようになりますが、それがきっかけとなって現代の様々なスタイルが生まれる事となり、また世界中でのシーンの成長へとつながったのです。極論と言われる方もいるかも知れませんが、現代のタトゥーシーンのきっかけは日本の開国と言っても過言ではないのでしょうか?ということは、もしかしたら最大の功労者坂本龍馬勝海舟かもしれません(笑)。

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