恵理香 16-趣味

恵理香は京介の為に料理を作るのが嬉しかった。
何故なんだろ？
どうして？男なのに。

いい匂いがすぐ近くから漂って来る。
何か知らないが、ガスオーブンの窓から恵理香が始終覗いている。
作り始めて２時間が経つ頃・・・
「出来た」
「今日はなに？」
「チキンのロースト」

ふーん、大したものだ
「いつもこんなにサラダを多くする？」
「そう」
出て来たチキンは一匹丸々で、表がこんがりと焼けている。
それに甘ったるいこのいい匂いは何なんだ？
「真ん中からきってみて」
「恵理香に任せるよ」
「男が切るものなの」


ふーん、そんなものかと思い半分に切ると、鳥の中に何か詰まっていた。
「３センチくらいにスライスして」
人参とサヤインゲンとイモが載る皿を渡され、２枚にふた切れずつ載せた。
「食べてみて」

これは美味い・・・何だろう、この味は？
そんな事はどうでも良かった
美味ければそれでいい
「美味い、これ」

エスニックとか香辛料とか、食べながらの恵理香の話はさっぱり分からない。
俺は食べ専門でよく、料理など作る才能は全く無い。
それにしても嬉しそうに話している。
「料理を作るのが好きなんだ？」
「そう、大好き。趣味はこれだけ」
「うん、いい趣味だ」

「毎日美味しいもの作って欲しいのなら、フードプロセッサーと圧力鍋とミキサー買って」
「いいよ。明日買いに行こう」
「来週、引越しするぞ」
「どうして？」
「大きなキッチンのある家かマンションを借りる」
「戸建がいい」
「なんで？」
「イヌを飼う」


二人とも昼間は仕事で居ないのに、平気なのかと心配になった
「平気。教えればいい」
「夕方になれば必ず帰って来てくれると覚えれば、賢くして待ってる」
ふーん、そんな物なんだろうか？


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