遠距離恋愛

夜の新幹線、東京行き。その日はかなり混雑していた。
京都から乗ると、隣には太ったおじさん。僕の席まで微妙に体がはみ出ている。座ると圧迫感。うーん、ついてない。

さっさとお弁当を食べ終えて、仕事をしているとすぐに「まもなく名古屋」というアナウンス。早いなぁ。すると隣のおじさんが席を立つではないか！良かった^^

次は細い人だといいな、なんて思っていると女の子が。しかもなかなかカワイイ子！
これはついていると思いながら仕事に戻る。

仕事に戻ろうとしたものの、やっぱり隣の子が気になる。ちょっと変わった本を読んでいるみたい。「英国式庭園の××」。英文化の学生か？
仕事も飽きたし、せっかくだからこの子と話がしたいな。何かきっかけないかな。そう思っていると斜め後ろに座っていた外国人の集団が酔って大きな声を出し始める。彼女も気になっているようだ。今だ、と思い声をかける。

「話し声が気になりますよね」
「えぇ、そうですね」
「英文化を勉強してるんですか」
「そうなんです、卒論の準備なんですが」

いい反応。これは楽しい時間になりそうだ。
それから東京までずっと話に花が咲く。

彼女の名前は宮本聖子。名古屋の大学の４年で英文化を専攻。今年は暇だったはずだが、無理してたくさんの授業を取ったので、かなり忙しい。バイトは授業の合間に少しだけやっている。自宅から学校まで時間がかかるので卒論の準備は順調に進んでいる、等々。
顔は特別に可愛い訳ではなく、そこそこというレベルだが、どこからどう見せると自分が可愛く見えるか、どんな表情が相手をひきつけるかなどをよく理解しており、色々な場面で見せる仕草がとても可愛い。
ひとつひとつの話への反応もかなり良く、頭の良さを感じさせる。気遣いの感じからは苦労人を思わせるし、知らない話でもそれなりに対処する辺りは、夜のお仕事の経験ありとも思えるし、ちょっと小悪魔っぽい反応から天然の悪女のような気もする。でも、雰囲気は清純派。なんとも不思議な子だ。

楽しい時間が経つのは早い。すぐに東京に着いてしまう。

「聖子さん、今日はとても楽しかったです。よかったらメールアドレス教えてもらえませんか？」
「こちらこそ楽しかったです。アドレスはこれです。xxx@ソフトバンク」

なんと、フリーメールではなく、携帯のアドレス！結構信用してもらったみたいだ。
それならもう一歩、踏み込んでみよう。

「君と話しながらだったから、ほんとにあっという間だったよ」と言いながら、彼女の右頬に触れる。少しビックリしたような、照れたような表情を見せたが、満更ではなさそう。僕がパーソナルゾーンに入ることに抵抗はなさそうだ。もう少しボディタッチをして、距離を縮めておこう。

新幹線の改札での別れ際。

「じゃあね。また会えるのを楽しみにしてるよ♪」と、体を近づけながら、背中を軽く叩く。今度は全くビックリした表情を見せず、嬉しそうな顔。
俄然口説く気になってきた。

それからしばらくの間、メールでのやり取りが続く。相手は学生でそれなりに時間があるとはいえ、名古屋。なかなか会うチャンスはない。そんな感じで数週間が経過するが、東京での用事が夕方には終わるチャンスが訪れる。

「月曜の夜に名古屋で降りるから、食事でもしようか」
「えっ、嬉しい！」

メールを出すとすぐに返信がある。新幹線の時間を告げると、ちょうど同じ頃に名古屋駅に到着するとのこと。名古屋駅での待ち合わせの定番である金の時計台で待ち合わせることに。

＜次回へ続く＞