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禁断の恋(第2話)

2009年07月15日 01:48

<前日の続きです>

翌日、約束通り会社から少し離れた駅のイタリアンを予約。

待ち合わせは、お店の最寄り駅。
彼女は時間通りに現れる。

「お待たせしました♪」
「待ってませんよ。待ち遠しかったけど。行きましょうか」

お店は意外に空いているらしく、夜景が綺麗でロマンチックな席に案内される。
インテリアがちょっと派手で、見ようによっては下品に見えるが、ちょっと気取ったいい雰囲気と思えなくもない。

「ねえ、メニュー見て。素敵」

メニュー表に僕の名前が印刷されている。予約したお客さんへのサービスらしい。特別な場に招待した感じ。これでムードは一気に盛り上がる。

料理アラカルトで。

高山さんと食べるとすごく美味しいし、時間があっという間に過ぎちゃうよ」
「僕も同じことを言おうとしたよ、さと子」

初めてファーストネームで呼んでみる。びっくりする様子は見せず、むしろもっと進んできてと受け取れるサインを出す。本当に賢い女だ。

あっという間に時間は過ぎテーブルでチェック。
正直、味について、超満足とは言わないが、フロアでのサービスを考えるとこのくらいの金額は適切か、むしろ安いかな。

店を出ると右に進めば駅方向、左はホテル街
ここまで来たら、もう戻れない。左へ。
彼女も黙って付いてくる。

腕を組んで歩きながら少し冷静になる。
(ここまで相性が良いと体も相当満足だろう。本当に進んで大丈夫か?まあ、多少の修羅場は覚悟しなきゃダメかもな。問題はどの程度で済むかってことだな。)
この時点で躊躇することは今までに一度もなかったが、こんなに満足しながらスムーズにこの段階まで進んだ相手もいなかった。ここから進んだら戻れないかもしれない。

僕の迷いを感じたのか、彼女も同じことを考えていたのか。
「ちょっと話したいことがあるの。長くなるけどいい?」

近くのバーに入る。
「私、不倫は初めてじゃないの」
「そうだと思ってた。僕が言うのもなんだけど、さと子は仕事が出来て、プライベートも卒がなくて、ルックスも上級っていう、かっこいい大人じゃないとダメだよね。独身男性じゃ、なかなかいないよ。」
(コクリ)
それから彼女が話し始めたことは、想像していたが、想像以上だった。

大学生の頃から2人の既婚男性と付き合った経験があること。
2人目の彼は仕事上も上司だった部長で、公私共に彼に育ててもらったこと。
派閥争いに負けた彼が会社を追われ、結果として彼女も会社を辞めて転職したこと。
付き合っている時は、部屋まで送ってもらって愛し合った後、朝を迎えるまでに家へ帰っていく彼を見ながら、とてつもなく寂しくて、いつも泣いていたこと。
久しぶりに心を開ける相手が現れて、この数日はすごく幸せだったこと。

高山さんは今までの誰よりも優しい。だからあなたは奥さんと絶対に別れないし、私も略奪するつもりはないよ。」

返す言葉がなかった。
彼女を思う気持ちは正真正銘の本物だけど、彼女の洞察は正しい。

「私はあなたと気持ちよくなりたい。でも、そうなったら今までよりもっと辛い。絶対、もっと深い仲になるもん。」
「・・・駅まで送るよ」
「・・・ありがとう」

切ない気持ち。明るい笑顔の裏にはそんな過去があったなんて。そんな暗さは微塵も見せないのに。こんなに好きな相手を幸せにされられないなんて。逆に、このままだともっと不幸にさせてしまう。
そう思いながらも、並んで歩きながら、綺麗な唇に吸い寄せられる。

「えっ、あんっ」

初めてのキス。でも、初めてとは思えない相性の良さ。お互いの唇が吸い寄せ合い、お互いの舌が重なる。刺激して欲しいところが、次々に刺激される。
上の口を合わせているだけなのに、下の口に入れている感覚。

「ねえ、セックスしてるみたい。すごく気持ち良いところにあたってるよ。高山さんのって、大きいし、上手なんでしょ」
と言って、僕の股間を弄る。
(バカ、興奮させてどうするんだよ、我慢できなくなるだろ)

「さと子、ダメだよ。今日は帰るって決めたんだから」
「ゴメン」

ほんとに、キスしただけでいきそうだった。
キスがこんなに気持ちがいいものだったことは、この時に初めて知った。
人はこんなにエロイものを公然と晒して歩いてるんだ。

駅の改札の前、太い柱の横で、

「おやすみ、(チュ)」

軽く唇を合わせて、別れる。

<次回に続く>

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