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(創作) 『S(エス) 肆』

2008年08月22日 00:13

(創作) 『S(エス) 肆』

『蝋再び 鞭 飛散』
 
 
 
 
 


彼女が意識を取り戻した

うつろな目でわたしを見つめる

先ほどの目覚めた時の彼女はいない

またひとつ非日常に融けた女

大きく脚を開き何もかも晒された身体

それを恥じらい隠す彼女はもうそこにはいない



自分を見下ろす男に憎しみはなく

絶対服従の相手として見上げる

白く美しい体とはまったく異なる

非日常に堕ちた心を持つ雌がいる

次の責めを待ち焦がれるような目

わたしは彼女に髪を束ね上げるよう指示をする



そして四つん這いにさせ 

その背中に 蝋を落とす

身体をくねらせ 背中で蝋を受け止める

さっきまでの恐怖は感じられない

むしろ愉しんでるようにも見える

彼女はすでに今の自分を受け入れている



わたしは彼女の目の前にある物を差し出す

歓喜にもにた吐息をもらす彼女

少しの間 それが何か理解出来なかった

そして 身体の動きが止まる

彼女の時間が一瞬凍りついた

そして彼女はゆっくりと振り返る

今度はわたしはそれを止めなかった

わたしは一番望んでいる表情を見せてくれる

そう思ったからだった

不安な影を落とし泣きそうな顔でわたしを見る



鞭が彼女の顔に触れる

そして首筋に さらに背中に滑っていく

彼女は怯えきった表情を見せ首を振る

彼女の耳元に口を近づけ囁く

大丈夫 さっきも大丈夫だったろ」

その言葉に 彼女は無言でうなづく

そしてわたしは彼女キスをする

ゆっくりと舌を差し込む

彼女の舌がそれに応えゆっくりと絡みつく

髪を撫で そして蝋のついた胸をそっと包む

わたしの手の動きに合わせるように

彼女の息使いは早くなっていく

「目を開けて」

彼女は目を開ける

「決して閉じてはいけない そして逸らしてはいけない」

彼女は頷く

そして再び キスをする

目と目が合ったままのキス

彼女の目が嬉しさに そうこの目は嬉しい目だ

その目のまま 潤んでいく

この状況の中でのキス 普通のキス

彼女に日常への回帰を感じさせたに違いない

この非日常において わたしは優しく触れてはくれない

そう感じ取ったのだろう



そう非日常では わたしは優しくあってはいけない

そして彼女は 忘れている

自分の身体がすでに非日常に囚われていることを

そして今は 間違いなく非日常であることを

ピシッ

その音と背中に感じる衝撃が

彼女を非日常に戻した

大きく目を見開き 

餌を求める魚のように口を動かす



ピシッ ピシッ

立て続けに二回の衝撃が身体に叩き込まれる


蝋が飛び散り パラパラと音をたて床に落ちる

彼女は驚きの表情を浮かべたままわたしを見る

目を逸らしてはいけない

その約束を必死に守ろうとしている

更に2発 背中に叩き込まれる衝撃

それほどの激痛はないはず

音の大きさと見かけで選ばれた鞭

わたしとて彼女の白い肌に傷がつくのは本意ではない

ただ まったく痛みがないわけではない

その痛みに彼女は再び 非日常に囚われる自分を思い出す

そして 今までがそうだったように

その痛みが波紋のように身体に広がり

彼女の心を揺さぶり熱くさせる

一度融けた身体は 融けやすく

服従を覚えた心は 容易に屈服する

彼女の髪をつかみ 仰向けに寝させる

振り上げられた鞭を待ち焦がれるように

両手と両脚を開く 

鞭が彼女の脇腹から胸に向け打ち付けられる

「あぁ   」

彼女から声が漏れる

そしてわたしは立て続けに彼女身体を乱打する

その衝撃で 蝋が飛び散る

その下から 赤く染まった肌が現れる

「あっ あ あっ ああああああ」

一撃ごとに声をあげ 身体を反らしていく

その表情を支配するのは 恍惚

そして けなげにわたしを見続ける

意味なく わたしの口元がゆるむ

彼女にはわたしが笑みを浮かべたように見えたのだろう

確かにわたしは心の中で歓喜していた

それが 不意に表情に漏れたのかもしれない

彼女の口元も緩み 笑みを浮かべる

「あ あああああああ い、 い いきま  す」

大きく跳ね上がるように身体を反らし

彼女は三度 沈黙した



蝋はすっかり剥がれ落ち

高揚と蝋と鞭によって赤みを帯びた身体



そんな彼女を見ながら あと何回

彼女は意識を失うのだろう

そして 全てが終ったとき

彼女は どう変貌しているのだろう


まだまだ 非日常の宴の終わりは遠い

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