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(創作) 『S(エス) 参』

2008年08月20日 18:51

(創作) 『S(エス) 参』

『花びらの如く、波紋の如く』








彼女は意識を取り戻した

そして わたしに気づく

次に自分の姿に気づき

慌てて開かれた脚を閉じる

今更なことだと彼女もわかっている

ただ それでも 閉じてしまう

細やかな女心はわからないが

それくらいの心理はわたしにもわかる


まだ 半分 夢の中を漂うような彼女

ゆっくりと近づき彼女の足首をつかむ

脚を開かせる必要はなかった

彼女 自ら 脚を開き全てを晒す

この時間に 非日常に堕ちた証

わたしに服従する誓いの証

わたしは彼女の脚の間に割って入る

いつもなら続きはひとつ

ただ わたしはまだ衣類を身につけている

そして彼女もまだ 意識がはっきり戻ってはいない

普通に交わす口づけも今の彼女にとっては予測出来ない

日常になすことが 今の彼女には予測出来ない

それも 非日常に堕ちた証



そしてわたしは用意した次の得物を手にする

それを ぼんやりと眺めている彼女

彼女の口が小さく動く

「それはなに?」

聞き逃しそうな小さな声でつぶやく

やがて うつろな表情が 恐怖に支配される

「い、いやぁ」

怯えに支配された表情で彼女は起き上がる

わたしは それを許さない

そして 彼女を抱きしめ耳元で囁く

大丈夫、怖くはないから」

彼女から少しづつ力が抜けていく

何十回と重ねた体の温もり

何度と交わした言葉

いつだってそばにいた

そしていつだって囁いてくれた声

これが愛かどうかはわからない

ただ 信頼関係はある

彼女を床に寝せて 遮光カーテンを開ける

再び彼女の顔に浮ぶ恐怖と不安

大丈夫 誰にも見えないし 誰にも聞こえない」

彼女は わたしをじっと見る

そして 目を閉じる これは信頼の証

火の灯った蝋燭 溶けて 溜まる蝋

ゆっくりと彼女の白い肌に落ちていく

彼女が大きく目を見開く

声にならない声をあげる

ポタッ ポタッ ポタッ

白い肌に桃色の蝋がたれていく

その都度 身体をよじらせる

「うっ うううううっ」

うなるような声が漏れる

苦痛に歪む表情を見せたくないのか

顔を両手で覆う

わたしはその手を引き剥がす

わたしは 無言で首を振る

蝋が彼女の肌に落ちては固まっていく

それは 真っ白な肌が

桜の花びらで埋まっていくようにも見える

いや 彼女の肌は水面だ

そして蝋は花びら

水面に落ちた花びらが波紋を起こすように

彼女の肌に落ちた蝋は彼女の身体に波紋を投げかける

そして その波紋は体中に広がっていく

腿を伝って落ちる雫

すでに雫にあらず

洪水のようにあふれ 彼女の尻の下に

水溜りを作っている

これは 蝋が苦痛だけを与えているわけではない

快楽も確実に彼女の身体に与えている証

流れる涙を舌で救い 彼女に問う

「その涙は苦痛からか?」

彼女は大きく首を左右にふる

「悔しさからか?」

また 左右に首を振る

「喜びか?」

左右に首をふらず 縦にも振らない

ただ彼女は目を閉じる

それが 答えなのだとわかった



やがて その白い肌にピンクの花びらを纏い

大きく身体を仰け反らす

蝋が一滴身体に落ちるごとに反り返る

彼女は今 達する寸前にいる

知り尽くした身体だからこそわかる

彼女の額に手を当てる

そして唇 首筋と指を這わせる

「ぅぅ うう も   う  い  い」

彼女の胸を手のひらに包み込む

彼女がわたしを見る

わたしは無言でうなづく

恍惚の表情といえばいいのだろうか

彼女は目を閉じる

非日常の中に融けた女が

蝋の熱さに更に身体を熱く燃え上がらせ

自らの熱さで 再び融けようとしている

彼女の胸を荒々しく握り締める

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ   

            
 あ    ぁ       

            はぁぁぁっ」


再び彼女は力を失い床に崩れ落ちた

無数の花びらに覆われた白い肌を

小刻みに震わせながら

荒くなった呼吸に合わせ

白い胸のふくらみが大きく波打つ

彼女の意識は今 どんな世界にあるのだろう



やがて彼女は ここへ帰ってくる

そして わたしは三度 彼女を送るだろう

まだ 時間はたっぷりとある

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