- 名前
- nomiya8
- 性別
- ♂
- 年齢
- 80歳
- 住所
- 埼玉
- 自己紹介
- 気持も若い積りだし、身体もそうだと思ってましたが先日忘年会でボーリングをした時、運動...
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今何処(いずこ)-AB編-2/3
2007年11月22日 15:46
本当はもう一週間ほど早く赴任する事になっていたが出発予定日の一週間前に私の父が急死し、事情を話し出立を遅らせた経緯があった。
ただ前任者のビザの関係で、前任者の帰国日は遅らせられず、その為彼との引継ぎは一週間しかなかった。
赴任後数日後彼の歓送と私の歓迎を兼ねて食事会が設けられた。
大方の食事が終わり雑談が始まった頃、彼が同席していた女性スタッフ三人を呼んで一緒に写真を撮ってくれと頼んだ。その時の彼の仕草からその秘書に大分気がある事を感じた。
彼の帰国後別の日本人スタッフから聞いた話では、彼から執拗なアプローチがあった様だが不成功に終わったとか聞かされた。
確かに彼女にはそう思わせる魅力が備わっていた。しかし彼女は秘書、前任者の様に他からそれと解る様な状況は避けなければならないと思い、彼女に対しただ可愛いというだけに留め、他のスタッフと同様に接していた。
私の仕事は技術全体を見る事と、駐在邦人の統括も含まれている。日本人は私の直属で一人、機構設計に一人とデザインに一人の計三人。電気に居る一人の日本人Y君は前任者の直ぐ後に赴任して来た為、彼も近々帰国する事になっていた。
彼は前任者と橇が合わず大分冷遇されていた様で、なるべく私は彼を昼食に誘い話す様にしていた。
その内彼の部下と秘書も誘われ一緒に食事をしに、色々なレストランを食べ歩くようになった。
私が彼女に与えていた仕事は主に英文のドラフト作りだった。
彼女は中国人の母とポルトガル人の父を持ち、両親は離婚し父と暮らしていた。広東語は普通に話せるが漢字は書けない。
しかし英語は全く問題ない程で、私が業者であるメーカーに手紙を出す際、通常は私がドラフトを書き秘書がタイプアウトするのだが、彼女に頼んで言葉で私の言いたい事を説明し、手紙を書いて貰った方が早いので相する様になっていた。
メーカーへの手紙といっても年中ある訳ではなく、一日に一通あれば多い方で、それ以外は他の日本人スタッフの英訳をしてもらう位だった。
無論彼女は私の直ぐ横に居るわけだから、時々は雑談とか冗談も話すが彼女が時間を弄ばせていた事は解っていた。
初めの頃は私からの仕事を待っていた様だが、その内何時も机の中には小説が入っていて読む様になっていた。
日本で言う文庫本程度のボリュームの物だが、彼女に「一冊を何日位で読んでいる?」と聞くと「一日で数冊、これも今日二冊目」と言って手にしていた本を私に見せた。
彼女の話によると今までは前任者が色々話掛けるので本など余り読む機械も無かったけど、今度は私が話しかけてこないし仕事も少ないので暇だからとの事だった。
それから暫くして彼女は隣の部屋へ時々行く様になった。
その部屋は電気係の部屋で、一人の日本人が管轄している。以前Y君が居て、今はK君に代わっている。
彼女が時々その部屋へ行くのは知っていたが、行き始めてから半月程した頃K君が私のところへ来て彼女が彼の部下の女性の所へ行って話し込んでいるので彼女の(彼の部下R嬢)仕事が進まなくて困るから彼女を来させないで欲しいと苦情が来た。
私は彼女に届く位の大きな声で彼女を呼んだ。
戻った彼女に「する事が無く暇だったら本を読んだり何してても良いけど、人の仕事の邪魔になる事はしてはいけない」と話した。
1,2週間は隣の部屋に行くのを自粛していた様だが、その内ポツリポツリと行き始めた。
そして彼から又来る様になりましたと言いにきたので、今度はその場へ行き彼女に「OO、人の邪魔したら駄目だ、自分の席に戻りなさい」そして今度はもう一人のR嬢にも「仕事中に彼女が来ても仕事中は忙しいから断るようにしなさい」と注意した。
その頃も現地スタッフと昼食に出掛けるのは続いていた。但しK君の場合結婚して一緒に赴任していて、毎日愛妻弁当持参で日本人は私一人だった。
レストランまでの道程、今までは彼女とR所が肩を並べ話ながら歩くのが常だったが、その日を境に二人は並んで歩かず別々になっていた。私は短的に考えとった処置がその結果を招いたのだと解ったが如何して良いか解らずそのままにしていた。
一ヶ月ほどした頃、突然彼女が会社を辞めたいと言ってきた。
私は本当のところその内彼女らの中は自然に戻るだろうと多寡をくくっていた事は確かだった。
仕事の面では大きなダメージはないにせよ、知らない内に毎日彼女の顔を見る事にある種の喜びなのか楽しみなのか解らないものがある事を感じていた。しかし辞めるとなるとそれら全てを失う事になる。
しかし立場上ある程度の引止めを促したがその以上の事はしなかった。
彼女は辞める事を告げ、それと同時に私の心の中には大きな空洞が出来たのは歪めない事実だった。
私は一度として彼女にそれらしい事を言った事が無いので、私の心の痛手に気が付いているのだろうか、いや知らないだろうな。
翌日出社して彼女の席を見つめていたが始業時間になっても当然の事だが彼女の姿は現れなかった。
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