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小説 CHIKUWA IS DEAD !? 第2回

2024年06月22日 16:12

3 ジワるDAYS

栞をはさむ

 さて、さっきからたびたび登場する、この「クソがっ!」という言葉、実はわたしの口癖なのだが、これについてもこんなエピソードがある。

 わたし、ちくわこと竹和未来[みらい]は青梅街道77のメンバーの中ではおバカキャラとしてやらせてもらっています。自分ではバカだとは思ったことはないですが、各々にわかりやすいキャラ付けをした方が番組制作側がやりやすいということでおバカキャラになったのです。おバカキャラとはいいますが、本当のバカには務まりません。なぜなら、アイドルグループに入る女の子など大半がバカを通り越してマジモンのヤバイやつばかりだからです。ロケ中にテンパり出して、「おかーさーん!!」といきなり叫んだと思ったら現場から逃げ出して失踪する子(わたしが探しに行かされる羽目になった)、メンタルが弱すぎてちょっと強く指摘受けたら、隠し持ったカッターナイフで、リスカをおっ始める子(結局公私ともどもわたしが世話する羽目になった)、なんでもいいからとにかく男と繋がってないとおかしくなる子(なぜかその子のクレーム担当窓口がわたしになっている)、こいつら行動はハチャメチャなくせに顔は揃いも揃ってわたしより可愛いから困ったもんだ。まあ、喰うか喰われるかのアイドル業界、心が擦り減るのも当たり前、ギリギリの精神状況になるのも仕方ない。

「敵を騙すならまず味方から、っていうしね!そんなわけで、あなたは周りのみんなを安心させるためにおバカキャラでいてほしいんだ。これは大変なことだよ。本当のおバカには務まらない。逆に誰よりも頭が良いくらいじゃないといけない」

 グループ結成した当初に、自身もかつてアイドルだったプロデューサーが私に言った言葉がこうだ。憧れだったアイドルにうまく乗せられた形になったわけだが、実際やってみると、おバカキャラ、まじ大変っすよ?


「……ったく、クソがっ!」
 いつものように周りのメンバーたちに振り回されて、ひとりごちていたわたしを見て、ホルモンバランス池田はこう言った。
「おまえ、いつもクソがクソが言ってんなー。それ、いっそネタとして昇華したほうがええんちゃう?おれが番組ん中で、ネタを伝授するって形にしてやっから。普段のゆるいバカキャラとのギャップで、絶対ハネると思うねん」

 はたして、なにをやっても失敗するというお約束ロケの最後に半泣きで「クソがっ!」と叫ぶわたしは池田の思惑通りに大ウケし、この切り抜き動画もバズりまくって、わたしの名前を検索すると「竹和未来 ちくわ」「竹和未来 クソ」と表示されるくらいである。喜んでいいのだろうか……
 まあ、これでアイドルとしての立ち位置はすっかり確立したわたし。ホルモンバランス池田には、抱かれても仕方ないくらいに思って覚悟を決めていたのだが、そんな誘いが来ることは一才なかったのだった。クソがっ!

4エキセントリック


 そんなわけで今日の予定は全て白紙に。
 どうしてやろうか。
 死のう。

 メンヘラ軍団に振り回されながら、頑張った末に待ち受けていたのが、捏造スキャンダルアイドル人生終了とか最低じゃないですか。
 こうなったら週刊醜聞呪いに呪って、自殺してやる。せいぜい世間から、ちくわ自殺に追い込んだと叩かれるがいいさ。特級呪物ちくわちゃん、ここに爆誕!!

 そうと決まれば、話ははやい。
 自殺方法を考えよう。私は本棚から『完全自殺マニュアル』を取り出し(ちなみに隣には『腹腹時計』がある)、ページをパラパラとめくる。
 ロープで首吊り。もっともメジャー自殺方法ではあるが。わたしはロープを見ると、昔のトラウマを思い出す。

 ある日の番組コント撮影の中でのひとコマ。
 誘拐テーマコント芸人演じる犯人に我ら青梅街道77のメンバーが、ロープで縛られるというシーンがあったのだが、テンションの上がった犯人がついには亀甲縛りをしてしまうというオチ。誰がその被害になるかというわけだが、普通の眉目秀麗なメンバーにやってもただ卑猥なだけでギャグにはならない。ちくわ体型のわたしが選ばれたのだった。「なんやこれ!ちくわがボンレスハムになっただけやん! ちょっとだけ高級になっただけやん! わいの費やした時間返してーな!」
「クソがっ!!」とわたしのお決まりの台詞コント終了。このコントも当然切り抜き動画になって、関連検索ワードにボンレスハムが追加されたのだった。

 ロープで首吊りは無しと、では他にどんな方法があるのだろう。
 電車に飛び込みは、、、これも無しだ。人身事故で多数の人々に迷惑を掛け、鉄道会社から事務所に莫大な請求が来るような未来は避けたい。立つ鳥跡を濁さずだ。



 とは言え、ただで死にたくない。
 竹和未来という、アイドルがいたという事実を芸能史に残して死にたい。わたしという存在がいたということをみんなの記憶に刻み込んで死にたい。そのくらいのわがまま神様も許してくれるだろう。そんなんいるのか、知らんけど。

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