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命尽きるときまで~その1

2019年04月26日 13:58

命尽きるときまで~その1

私「どこの病院に入院されてますか?」

メールしてみました


2分ほどで返信があり

田中さん「入院してません、自宅で終末を迎えたいんです」

私「おうちにお邪魔していいですか?」

田中さん「失礼ですがイギリスにいるのでは?」

私「今、羽田空港に降り立ってホテルにいます。」

田中さん「本当ですか!自宅は○○ー○○です。お待ちしております」


そう会話して、電車に乗り茨城


1時間と少々ののち、最寄り駅へ到着


タクシーに乗り、田中さんのおうちまで


閑静な住宅街の一角に、田中さんのおうちがあり

チャイムを押すと、玄関で迎えてくれたのは田中さんご本人


田中さん「ようこそ!!さあ、おあがり下さい」


挨拶もそこそこに、とりあえずおうちの中へ


田中さん「突然の訪問で驚いてます・・・まさか、いらっしゃるなんて思わなくて」


私「最後ですからね」


田中さん「・・・!?いやぁ・・・イチゴさんは何というか・・・直球ですね。それがまた、魅力的と言いますか・・・
感謝してます」


アン「おじさん、お久しぶりね!」


田中さん「アンさん!お久しぶりです。私の事を覚えてくれてるんですか?」


アン「もちろん!お寿司ごちそうしてくれたことも、ちゃ~んと覚えてる」


田中さん「いやぁ・・・こんなに背が伸びちゃって。お嬢ちゃんだったのに、今は大人ですね」


リリーはじめまして。私はリリーと言います。去年からママにお世話になっていて・・・」


田中さん「ええ、ええ。日記で存じてますよ。あなたが・・・。イチゴさんはとてもあなたたちを愛してるのがよーく伝わってくるんです。日記にね、いつもあなたたちとのやり取りを綴っていてね。いや、ありがとうございます」


田中さん「あのですね、もうお母さんから2人は聞いてるかもしれませんが」


アン「ガンなんでしょ?」


田中さん「え?はい、そうなんです」


リリー「あと2月(ふたつき)だって母から聞きました」


田中さん「・・・こんなに日本語が話せるんですか!?」


リリー「ええ!必死に勉強しましたから」


アン「何をママにお願いしたかも知ってるから」


田中さん「・・・申し訳ありません」


私「何で謝るんですか?人生の最後に、どうしてもって思ったから言ってきたんでしょ?」


田中「はい、い、いや!あの・・・申し訳ありませんでした」


私「見せるわけにはいかないんですよ。それは分かってもらえます?」


田中さん「・・・はい。浅はかな考えでした」


私「いいんですよ。今日は、かつてのお礼のために来たんです」


リリー「アンとね、話したんです」


アン「ママ、私に言わせて」


私「はい、どうぞ」


アン「ありがとうママ。おじさん、あのね」


田中さん「はい?」


アン「おじさん、お寿司をごちそうしてくれてありがとう。あの時ね、まだ私が日本に慣れてなかったのもあって
あまりおじさんにお礼を言えなかったこと、ずっと後悔してたの」


田中さん「そんな!覚えてくれてただけで、私は嬉しくて・・・」


アン「それでね、ママに話は全部聞いたの!おじさんの病気のことも、おじさんが奥さんを捨てた事も」


田中さん「・・・私が捨てられたんですよ?」


アン「それが間違い!おじさんが病気になったのいつなの?」


田中さん「今年の初め、です」


アン「おじさんの奥さん、正確には元、ね。別れたのは?」


田中さん「い、いやぁ・・・」


私「すみません、性格がストレートなもので。アン!多少は・・・」


アン「オブラートに包め!って言うんでしょ?そんなんじゃないの、おじさんが捨てられたってとこが、私には納得いかないの」


田中さん「どうしてです?」


アン「おじさんが”ガンになった、余命いくばくだ”って奥さんに伝えたんでしょ?」


田中さん「ええ」


アン「で、奥さん離婚したいって言ってきた」


田中さん「はい」


アン「で、財産を要求されたんでしょ?財産の半分とか支払ったの?」


田中さん「・・・はい」


アン「じゃあ、やっぱりおじさんが捨てられたのは間違い!だってお金の面で施しをしてるじゃん。捨てられたのは元奥さん。元、ね!」


田中さん「・・・そう言われれば」


田中さん「そうですよ!向こうは病気になった私の面倒を見たくない!!って離婚を切り出したんです。
じゃあ、別れるかって私は応じた。うん、財産だって分けた。そうか、私が捨てたんですね!!アンさん、意味がわかりました」


アン「ね?おじさんは捨てられた立場じゃないの!捨てた立場。哀れなのはおじさんじゃなく、お金を貰って満足した、おじさんの元奥さんの方!!」


リリー「アンがず~っと、そればっかり言って怒ってたんですよ。”病気になった旦那さんと別れるって、何てクソ女なの!?私がケツを蹴り上げて~~~”って」


田中さん「・・・そうだったんですか!?・・・ありがとうございます」


アン「おじさん、いつも丁寧だけど、私だけタメ口でいいの?」


田中さん「ええ、ええ。アンさんはアンさんの話し方でいてください」


私「すみません!いっつもこの子、自分が親しいと思った人には遠慮しなくて」


田中さん「じゃあ、光栄なことじゃないですか!私は親しいって認定されたんですね?」


アン「もちろん!!おじさんはママにも私にも優しいもの。リリーにももちろん優しくしてくれるでしょ?」


田中さん「ええ。リリーさん、リリーさんも話しやすい日本語で話してください」


リリー「・・・いいんですか?」


私「リリー、あなたは少~し遠慮・・・」


田中さんイチゴさん、イチゴさんも気兼ねしないで下さい。私はこれが普通なんです。みんなに気遣いなく好きに話してもらったほうが
私は・・・嬉しいですから」


私「本当ですか?」


田中さん「嘘じゃないですよ」


私「じゃあリリー、お言葉に甘えよっか?」


リリー「ありがとうおじさん!実は・・・敬語ってまだ勉強してる途中なの!!」


田中さん「どうぞ、どうぞ」


アン「おじさん、ものすご~く痩せちゃったね」


田中さん「はい・・・ガンってわかってから35キロほどですかね。自然と細くなりました」


アン「ご飯食べてる?」


田中さん「食べてはいるんですが、あまり多く食べられなくて」


アン「今日はね、私たちが作ってあげる!ね、いいでしょ?」


田中さん「ええ??いいんですか?」


私「はい。そのつもりでさっき、スーパーで材料も買ってきたんです」


田中さん「それは・・・嬉しいなぁ・・・いいのかな」


リリー「おじさん、嬉しい?」


田中さん「そりゃもう!!」


私「じゃあ、キッチンお借りしてもいいですか?」


田中さん「ええ、どうぞどうぞ!!」


私「じゃあ、2人ともお願いね」


リリー&アン「了解!!」


私「じゃあ、田中さん。ちょっと失礼しますね」


裏に続きます。

このデジログへのコメント

  • LEON 2019年04月26日 14:09

    凄い話の展開でビックリだけど、田中さん喜んでる姿が目に浮かぶね

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