【良い子の諸君】最終回-02　春はまだ。

「有希さん……？」
「……ありがと。……演劇部を頼む」
抱擁を終えると、有希は茜達のいる場所から離れてしまった。
「学園敷地内をふらふらするつもりね～？」

「有希さんは……嘗て小春だったのですわ」
不意に語りだす千歳。
「ほえ？」
ちんぷんかんぷんな小春。
「いやあの、有希さんは昔、小春みたいな仕草と性格だったのですわ」
言い直した。
「あたしみたいな？……よくわからないよっ」
自分の事は案外わからないものだ。今度「自分がどんな人間か」を言う機会があったら考えてみるといいだろう。
「でも今の有希さんはクールというかダウナーな感じですっ」
「性格が変わるような出来事があったのですわ」
それはわかる。有希は魔法少女としての闘いに敗北し傷付いた経緯を聞いてたからだ。
「それだけではありませんわ……わたくしの憶測ですが。ただ闘いに敗けて変身能力を失っただけで落ち込むようなひとではないですしね」
共にいた仲間だからこそ言える話だ。
有希には何らかの痛みや悲しみを味わった。それは何かはわからないが、あるないだけは間違いなく言える。そんな感じだった。

続く！