【良い子の諸君】最終回-01　卒業式。

「和菓子の恩～。わたしは洋菓子が好きねぇ」
着物姿の琴。香住学園高校の卒業式だ。受験した小白川大学の発表がまだなので不安を拭えない彼女だが、それでも卒業式は卒業式である。
「ギリギリチョップ！」
「はうあ！」
後頭部にチョップを食らう琴。振り返れば、髪を下ろした月山有希がいる。
「……ん。おめでと」
「まだ合格発表はしてないわぁ」
「……どうせ受かってる。……大学全入時代」
有希にしては気楽な考え方だ。琴はそういうもんだと受け入れた。
「……それよりも突っ込め」
「何を？」
「ギリギリチョップ」
当たってるからギリギリではない、と。
「わたし突っ込み気質じゃないからあ～あはは～」

キンコンカンコン～♪

「いい卒業式だったわぁ」
「…悪い卒業式とはどんなだ」
知らん。
校庭には茜達が出迎えていた。
「あらあら、第二ボタン欲しいのかしら、うふふ」
「……安心しろ。……わたしの第二ボタンだ」
有希が用意した第二ボタンを取り出す。
「ん……。千歳、これ」
「有難く頂戴致しますわ♪」
以心伝心的に第二ボタンを受け渡しする。
「……千歳は相棒だから」
「ああ成る程」と膝を叩く琴。
有希と千歳は、茜や小春が闘う以前から苦難を共にした仲間だった。
「琴さん、第二ボタンください～」
「あらあら、茜ちゃんはいいこねえ～」
ハイパーなでなでする琴。
「二人とも、卒業おめでとうなんだよっ」
太陽のような笑顔で祝福を述べる小春。
「あらあらありがとう～♪」
「……ん」
素直に喜ぶ琴と、神妙な表情の有希。
むぎゅ～。なでなで…なでなで…なでなで…
「はわわっ！」
有希が小春を抱き締め、いろんなところを愛しげになでなで回す！
「キマシタワ～！じゃなくて有希さん、わたくしの小春にセクハラしないでですわ～」
慌てる千歳。
「……ん。可愛い」
なでなで…
「でも、百合って意味ではなさそうね～」
何か知ってる琴が有希の様子を見ては言う。
「子供扱いは悲しいんだよっ」
「……ん。子供」
娘を溺愛する母のような目を見せる有希。
「……お前は、それで良い。むぎゅ～」
強く抱き締める有希。
千歳ははっ、と何かを思い出した。

「ああ、そうでしたわ」

続く！