解り難いですが。。。

桜が花を咲かせはじめました。
今年も大好きな花の時期がやってきました。
母の愛したこの季節。
私も大切にしたい季節。

兄とお墓参りの帰り道。。。
ふと気になって口にだしてみた。
（関西弁で解り難い会話ですが。。。）

「お母ちゃんって、お父ちゃんと結婚する前、好きな人とかおったんかな？」
「うん？そんな話、オレにはせんやろ。（笑）」
「許されぬ恋をしてたとか。（笑）」
「エリは、聞いてないのか？」
「聞いてないなぁ。うちは、それどころじゃなかったからなぁ。」
「悲惨な家庭環境でしたからな。」
「ほんまに。。。（笑）」
「今更なんやけど。もっと、そんな話もしておけば良かったな。」
「そやなぁ。お母ちゃんのこと、よく知ってるのに、知らない部分も多い。」
「人それぞれに心に秘め事を持って、ですか。。。」
「おニィの秘め事は、なんぞや？（笑）」
「・・・内緒や。（笑）」
『聞かぬがハナ』と、桜が揺れた。

病院の待合室から桜が見える。
もう二週間もたたぬ間に満開になるのだろうな。

「咲きはじめましたねぇ。」
「ここの桜、綺麗だって看護婦さんが言ってましたよ。」
「ソメイヨシノ？」
「さあねぇ。。。」

主人と二人で咲きはじめの桜を眺めながら
ふと口に出してみた。

「一応、聞いておきますが。。。」
「なんです？」
「愛人とか隠し子とかいないでしょうねぇ。」
「いませんよ。いたとしても、あなたに言いませんよ（笑）」
「言わないのですか？」
「そういうことは、言わないのが普通でしょ？」
（そうなのか。。。）

「私と一緒になって幸せでしたか？」
「どうでしょう（笑）。人生最大の失敗だったとは思いませんが。。。」
「人生最大の失敗は、なんですか？」
「・・・内緒です。（笑）」

「一応、聞いておきますが。私のこと愛してますか？」
「そういうことは、口に出して言わないものです。（笑）」
（口にださなきゃ、解らないこともあるのに。。。）

「あなたは、どうなんです？僕のこと愛してますか？」
「いい夫だとは思いますよ。」
「それは良かった（笑）」
「良く働くし良く食べるし良く寝るし（笑）。」
「この頃、働いてませんが。。。」
「たまには、お休みも必要です。」
「ずーと、お休みですが。。。」
「それもまた良しです。」
「愛してるとは言わないのですね。」
「そういう事は、口に出して言わないものです。（笑）」
（口にださなくても、伝えたい言葉もあるのに。。。）

『来年も再来年もこの人とこうして桜を見ていたい。』
パジャマ姿の主人の背中にそっと語りかけてみた。。。

「満開になったら、外で花見をしましょうね。」

主人は、自分の死をどう受け止めているのだろうか？
もの静かな主人は、感情をあまり出さないので、
解り難い。。。
病状をＤｒ．から聞かされたときも
「そうですか。。。」とつぶやいただけだった。
冷静を装ってるだけで、本当はすごく動揺しているんじゃないか？
大声で喚きたいのを抑えているのではないか？
そう思うと可哀そうになって胸が痛い。。。
それとも。。。
自身の中で、とうに覚悟は出来ていて、静かに余生を送りたいと思っているのかな？

「あなたは、どう受け止めているのかしら？」と、
主人に問いただしてみたい気もするけれど。。。
一番身近な人の心が読めない。

『聞かぬがハナ』と、桜が揺れた。