- 名前
- 京介
- 性別
- ♂
- 年齢
- 72歳
- 住所
- 神奈川
- 自己紹介
- 青森生まれで京都育ち。 今は横浜です。 スキーとスノーボードの先生もしていました。 ...
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いぬとひと-1
2009年06月20日 01:13
タローは石岡駅で誰を待っていたのだろう。
朝夕2回、決まって現れた。
待合室に座り、改札口を通る乗降客をじっと見ていた。
待ちくたびれると、同じ道をまた引き返していった。
茨城県石岡市立東小学校で飼われていた雑種犬。
1964(昭和39)年に、迷い込んできた。
しばらくして駅通いが始まった。
駅までは約2キロ。
学校の正門を出て歩道橋を駆け上り、車の多い国道6号を西へ向かう。
横断歩道を渡って坂を下り、交差点を右折、常磐線の踏切を渡ると駅が見えてくる。
赤と青を見分け、ちゃんと信号を守った。
先生や児童たちみんなに愛されていた。
たいていは職員室の教頭の机の下にいた。
登校時間になると、1年生の教室を順番に回る。
自分で戸を開けて入り、教室の隅で児童を見守った。
昼休みは校庭で「給食」。
好物のマーガリンと飲み残しの牛乳を子どもたちにもらった。
寄り道をして帰ることもあった。
駅前の定食屋とそば屋はなじみの店だ。
よく立ち寄ってはごちそうになった。
そんなときは帰りが夜7時を回った。
いまだったら、たちまち捕獲されて処分されるに違いない。
当時は高度成長期を迎え、人々が豊かになり始めた時代。
社会は寛容さを備えていた。
72年に校長として赴任した橋本千代寿さん(88)は、タローとの8年間の思い出を大切にしている。夏休みのある日、「店の玄関にお宅の犬がいる」と駅前のスーパーから電話があった。
迎えに行くと、店内から流れてくる冷房の効いた風を受けて、ちゃっかり涼んでいた。
「犬はつないでおいて下さい」と保健所に2度、注意された。
「黙認してほしい」と嘆願した。
保健所長は黙っていた。
主人を思って駅へ通っていたというのが地元の見方だ。
「そう思うと不憫(ふびん)でね。そんな犬を鎖でつないでおけますか」。橋本さんは保健所の指導に背いたことをいまも後悔していない。
橋本さんが退職した翌81年の夏、タローは死んだ。
20歳近いとみられる。
全校生で追悼式をして土浦市内の寺に葬った。
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