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「大好き」を伝えるために 2話

2009年01月06日 16:42

「え、いや、何でもない…」
「そうですか?じゃあ行きましょう」

女の子は私の手を引いて歩き出した。私達は無言で歩いた。この真っ白な空間を。白い白い道無き道を。進んでいるのかいないのか分からない。だって、辺りの景色が何時までも変わらないから。歩いても歩いても、どこまでも真っ白…。ただ歩くことに退屈した私は、前を歩く女の子に小さく声をかけた。

「ねえ、アナタ本当に死神なの?私の死神イメージって、もっと怖い感じだったんだけど。ガイコツとか、鬼とか…」
すると、女の子は私の方に振り返らず、歩き続けたまま小さく喋り出した。

「そうですね…。確かに死神って怖いイメージ持たれますけど、実際、そんなガイコツとか鬼なんていませんよ」

「そうなんだ」

死神の仕事は、霊をあの世まで案内することです。決して命を奪ったりはしないのに、どうし怖いイメージを持たれてしまうのでしょうね」

女の子は相変わらずぼんやりとした口調のまま、そう呟くように話した。その話を聞いて、ふと疑問が浮かぶ。

「あの、話変わるけど…。“あの世まで案内”ってことは、今いるこの場所はあの世じゃないの?」
「はい、違います」
真っ白なこの世界は、どうやらあの世じゃないみたい。じゃあ、ここはどこなんだろう?

「…ここは、あの世とこの世の境です」
あの世とこの世の境…?」

「あ、見えてきましたよ」

女の子は前方を指差した。少し遠くの方に、うっすら灰色がかっている部分が見える。純白に浮かぶ灰色は、より濁った色が際立っていて、何となく不気味だった。

「…なに?あそこ…」
「行けば分かります」

女の子に促され、私はゆっくりその灰色の方に向かって歩いた。近づくにつれて、徐々に灰色の正体が明らかになっていく。

「川だ…」

川だった。向こう岸が見えないほど大きな川。流れは割と穏やかで、深さもそんなにないみたい。

聞いたことある。私、この川、知ってる…。

「これって、三途の川…?」

「あ、ご存知でしたか。地上では三途の川って言われてるみたいですけど、本当の名称は境川って言うんです」

私、聞いたことある…。この川を渡るとあの世に行くことができる…って。そして、渡ってしまったら、も二度とこの世に戻って来ることはできない…って。
あの世とこの世の境”って、そういうことかあ…。

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