- 名前
- シュリ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 61歳
- 住所
- 福岡
- 自己紹介
- 特になし
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「大好き」を伝えるために 2話
2009年01月06日 16:42
「え、いや、何でもない…」
「そうですか?じゃあ行きましょう」
女の子は私の手を引いて歩き出した。私達は無言で歩いた。この真っ白な空間を。白い白い道無き道を。進んでいるのかいないのか分からない。だって、辺りの景色が何時までも変わらないから。歩いても歩いても、どこまでも真っ白…。ただ歩くことに退屈した私は、前を歩く女の子に小さく声をかけた。
「ねえ、アナタ本当に死神なの?私の死神のイメージって、もっと怖い感じだったんだけど。ガイコツとか、鬼とか…」
すると、女の子は私の方に振り返らず、歩き続けたまま小さく喋り出した。
「そうですね…。確かに死神って怖いイメージ持たれますけど、実際、そんなガイコツとか鬼なんていませんよ」
「そうなんだ」
「死神の仕事は、霊をあの世まで案内することです。決して命を奪ったりはしないのに、どうし怖いイメージを持たれてしまうのでしょうね」
女の子は相変わらずぼんやりとした口調のまま、そう呟くように話した。その話を聞いて、ふと疑問が浮かぶ。
「あの、話変わるけど…。“あの世まで案内”ってことは、今いるこの場所はあの世じゃないの?」
「はい、違います」
真っ白なこの世界は、どうやらあの世じゃないみたい。じゃあ、ここはどこなんだろう?
「…ここは、あの世とこの世の境です」
「あの世とこの世の境…?」
「あ、見えてきましたよ」
女の子は前方を指差した。少し遠くの方に、うっすら灰色がかっている部分が見える。純白に浮かぶ灰色は、より濁った色が際立っていて、何となく不気味だった。
「…なに?あそこ…」
「行けば分かります」
女の子に促され、私はゆっくりその灰色の方に向かって歩いた。近づくにつれて、徐々に灰色の正体が明らかになっていく。
「川だ…」
川だった。向こう岸が見えないほど大きな川。流れは割と穏やかで、深さもそんなにないみたい。
聞いたことある。私、この川、知ってる…。
「これって、三途の川…?」
「あ、ご存知でしたか。地上では三途の川って言われてるみたいですけど、本当の名称は境川って言うんです」
私、聞いたことある…。この川を渡るとあの世に行くことができる…って。そして、渡ってしまったら、も二度とこの世に戻って来ることはできない…って。
“あの世とこの世の境”って、そういうことかあ…。
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