- 名前
- zz987
- 性別
- ♂
- 年齢
- 61歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- スーパーアーティストzz987立川在住。平日/昼間のみ営業の秘密の遊園地・・御一緒に...
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★吉原(27)
2011年06月11日 00:04
『お茶汲み(おちゃくみ)』
吉原から朝帰りの松つぁんが、仲間に昨夜のノロケ話をしている。サービスタイムだから七十銭ポッキリでいいと若い衆が言うので、上がったのは「安大黒」という小見世。そこで、額の抜け上がった、目のばかに細い花魁(おいらん)を指名したが、女は松つぁんを一目見るなり、アレーッと金切り声を上げて外に飛び出した。
松つぁんは、仰天して、わけを聞くと、紫というその花魁、涙ながらに身の上話を始めた。
自分は静岡の者だが、近所の清三郎という男と恋仲になり・・・噂になって在所にいられなくなった。親の金を盗んで男と東京へ逃げてきたが、そのうち金を使い果たし、どうにもならないので相談の上、吉原に身を売り、その金を元手に清三郎は商売を始めた・・・と言う。
手紙を出すたびに、「すまねえ、体を大切にしろよ」という優しい返事が来ていたのに、そのうちパッタリ梨の礫(つぶて)。人をやって聞いてみると、病気で明日をも知れないとのこと。
自分は吉原の中、看病にも行けないので、一生懸命、神信心をして祈ったが、その甲斐もなく、清さんはとうとうあの世の人に・・・。
どうしてもあきらめきれず、毎日泣きの涙で暮らしていたが、今日障子を開けると、清さんに瓜二つの人が立っていたので、思わず声を上げた、という次第。
「もうあの人のことは思い切るから、おまえさん、年季が明けたらおかみさんにしておくれでないか」と、花魁が涙ながらに口説くうちに・・・ヒョイと顔を見ると、目の下に黒いホクロができた。
よくよく眺めると「ばかにしゃあがる。涙代わりに茶を指先につけて目の縁になすりつけて、その茶殻がくっついていやがった」・・・まぁ、バーチャル恋愛の国ですから・・・
これを聞いた勝さん、ひとつその女を見てやろうと、「安大黒」へ行くと、早速、その紫花魁を指名。女の顔を見るなり勝さんが、ウワッと叫んで飛び出した。
「ああ、驚いた。おまえさん、いったいどうしたんだい」
「すまねえ。わけというなあこうだ。花魁聞いてくれ。おらあ静岡の在の者だが、近所のお清という娘と深い仲になり、噂になって在所にいられず、親の金を盗んで東京へ逃げてきたが、そのうち金も使い果たし、どうにもならねえので相談の上、お清が吉原へ身を売り、その金を元手に俺ァ商売を始めた。手紙を出すたびに、あたしの年季が明けるまで、どうぞ、辛抱して体を大切にしておくれ、と優しい返事が来ていたのに」
勝さんが涙声になったところで花魁が、
「待っといで。今、お茶をくんでくるから」
・・・と言う落ち・・・いいですねぇ!こう言う噺。
●大蔵流狂言「墨塗」が原典・・・これは、主人が国許へ帰るので、太郎冠者を連れてこのごろ飽きが来て足が遠のいていた、嫉妬深い愛人のところへ暇乞いに行きます。
女が恨み言を言いながら、その実、水を目蓋になすりつけて大泣きしているように見せかけているのを、目ざとく太郎冠者が見つけ、そっと主人に告げますが、信じてもらえないため一計を案じ、水と墨をすり替えたので、女の顔が真っ黒けになってしまうという・・・。こっちの方が強烈ですね。
この狂言をヒントに、安永3年(1774)刊の笑話本「軽口五色帋」中の小咄「墨ぬり」が作られたそうです。
これは、遊里狂いが過ぎて勘当されかかった若だんなが、罰として薩摩の国の親類方に当分預けられるので、
なじみの女郎に暇乞いに来ます。
ところが、女が嘆くふりをして、茶をまぶたになすりつけて涙に見せかけているのを、隣座敷の客がのぞき見し、いたずらに墨をすって茶碗に入れ、そっとすり替えたので、たちまち女の顔は真っ黒。
驚いた若だんなに鏡を突きつけられますが、女もさるもの。「あんまり悲しくて、黒目をすり破ったのさ」。
これから、まったく同内容の上方落語「黒玉つぶし」ができ、さらにその改作が、墨を茶がらに代えた「涙の茶」。これを初代柳家小せんが明治末期に東京に移植し、廓噺として、客と安女郎の虚虚実実のだまし合いをリアルに活写。東京版「お茶くみ」が完成。・・・滑稽だけど、何だか悲しい。
今も、キャバ嬢とか泡姫とかで、毎回、違ったストーリーを語ってくれる・・・いわゆる虚言癖の娘、いますよ。でもね、所詮、今でもバーチャルな空間だから・・。それに目くじらたてるのは粋じゃ無いです。客は夢の時間を買いに来ているわけですからね。私、この噺、好きです。
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