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★吉原(22)

2011年06月04日 00:10

★吉原(22)

五代目古今亭志ん生『首ったけ(くびったけ)』
 

辰つぁんの敵娼(あいかた)の紅梅さんが、回しを取られて、ドンチャンどんちゃんと騒いでいる。馴染み客とすれば嫌なもので苦言の一つでも言いたくなるだろう。若い衆を呼んで騒がしくて寝られないから帰ると言い始めた。敵娼(あいかた)の紅梅さんがなだめに入ったが、売り言葉に買い言葉、見世を飛び出してしまった。


大引け後だったので、真っ暗で帰るに帰れなかった。向かいの見世に明かりが見えたので頼むと、明日、よりが戻って向かいに帰られると立場がないと言う。二度と行かないからとの約束で上がると、敵娼(あいかた)の若柳さんは前から辰つぁんの事を気にかけていたからと、充分の接待をして帰した。毎晩のように通うようになったが、行けない日があった。


今晩は行こうと思っていると、昼頃、火事が出た。それは吉原からだった。若柳さんを助けようと思って飛んで行った。表からは人だかりで入れないので、裏のお歯黒ドブに回った。花魁達は化粧気もなく走って来るが、煙に巻かれて右往左往している。そこに数人の花魁が駆けて来たが、跳ね橋から一人が落っこちて、真っ黒く汚いお歯黒ドブにはまった。泥深く直ぐに脇の下まで潜ってしまった。「助けてよ~!!」と金切り声を上げた。みんなで助けてやれ、と手を出すと、それは喧嘩別れをした、紅梅さんであった。


 「夜中俺をおっぽり出したやつなんか助けねぇ」
 「辰つぁん! 早く助けておくれよ。もう首まで来たからさぁ」
 「そんな薄情なやつは助けねぇ」
 「そんな事言わないで! もう、首ったけなんだから」



ま、そんな落ちですよ。

 

 

■首ったけ・・・「惚れて惚れて、もう貴方無しでは居られない」という状況。こんな素晴らしい言葉が広辞苑にも載っていないのが不思議。

 

■お歯黒どぶ・・・吉原遊郭の外周をかこっている堀(ドブ)。真っ黒で汚かったので、お歯黒ドブと呼ばれた。名前の由来は、遊女が化粧をする際、お歯黒を流したためとも、また、溝の水がお歯黒のように黒く濁っていたからだとも・・。


大門のちょっと離れた左右には水をたたえた大溝(おおどぶ)があり、これがぐるっと吉原を取り囲んでいたそうです。大溝は新吉原初期のころ5間の幅(約9m)があり、唯一の出入口が大門だったので、吉原は文字どおりの廓だったのです。この大溝は江戸末期から明治初期のころ2間(約3.6m)に狭められ、さらに明治 36年ごろには3尺幅となりました。もちろん現在では埋め立てられています。また、大溝は幕末ごろからお歯黒溝とも呼ばれるようになった・・そう言われています。


吉原火事・・・江戸時代から吉原で大火になるような火事は何回も起こっています。この噺の中の火事は、明治44年4月9日。当時の「日曜画報」から引用すると・・・

月九日午前十時三十分、新吉原江戸町二丁目二十番地美華登(みかど)楼より起これる怪火、花時風雨多き折りも折りとて朝来哮(たけ)り狂える西南の烈風之を煽(あお)り煽りて瞬く間に東京名所随一の吉原遊郭六街を全焼し、焦土と化す。火勢は烈風を倍加し郭外にも飛延、西は竜泉寺(町)の大半を舐めつくし、金杉下町より北三ノ輪に及び、東は橋場・総泉寺付近に至り、北は南千住車場貯炭倉庫に至って、夜十時三十分ようやく鎮火す。延焼面積一里四方、町数二十四ヶ町、六千五百余戸にして、罹災民十万余と称される。当日の悲壮、雑沓、混乱の惨景言語に絶す。

なお原因についても記されていて・・・

美華登楼の娼妓が二階の部屋で長襦袢の衿(えり)の油汚れを取ろうと揮発油で拭いて、その濡れた衿を火鉢で乾かそうとして引火、驚いて手を滑らせ、さらに、水と油の違いを知らなかった娼妓の無知さまで分かった。折からの春風に煽られて障子襖に燃え移り、瞬く間に楼を焼き、八方に飛び火し、吉原炎上大惨事になってしまった。


数年前、新宿歌舞伎町の雑居ビルで火災がありましたが・・まぁ、風俗店も入っていたらしく、そんな時にそこにいたら・・火事は、いろんな意味で恐いですね。

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