- 名前
- zz987
- 性別
- ♂
- 年齢
- 62歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- スーパーアーティストzz987立川在住。平日/昼間のみ営業の秘密の遊園地・・御一緒に...
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★吉原(21)
2011年06月03日 00:02
古今亭志ん生『唐茄子屋政談』
遊びすぎて、”お天道様と釜の飯は付いてくる”と自ら勘当された若旦那”徳”は最初は良かったが、その内誰にも相手にされなくなった。雨も上がって吾妻橋までさしかかり、欄干から飛び込もうとするところを、たまたま叔父さんに助けられた。何でもするからと、達磨横丁の叔父さんの家に連れられていった。おばさんに挨拶して食事もすむと疲れがどっと出て、死ぬ様に眠った。
翌朝、叔父さんに起こされ、今日から「唐茄子」を売り歩けという。みっともないから・・と言うと、さとされ天秤を担いでヨロヨロしながら長屋を出ていった。アミダになった 笠も直せず、天秤にしがみついて歩いていたが、吾妻橋を渡って田原町に来た時にはたまらず、荷を投げ出して倒れてしまった。親切な住民が手分けして買ってくれた。残った二つを担いで歩き始めたが売り声も出ない。吉原脇の田んぼの中で売り声の練習をしながら、道楽三昧の日々を思い出す。
声も出る様になって、誓願寺店に入って来ると、質素だが品のいい奥さんに声を掛けられ、売り切った。弁当を使わしてくれと頼んで食べ始めると五つ位の男の子が「おまんまだ!」と言って離れない。事情を聞くと亭主の送金が無く買う事も出来ずに、困っていると言う。ひもじいのはよく分かると、子供に弁当をやって、売り上げを全部渡して振り切る様にして戻ってきた。
完売した事に叔父さんも喜んでくれた。食事の出る間、顛末を聞いていたが、売り上げを見せろと言うが無い。誓願寺店で親子に弁当とお金を全部上げたというと本当ならイイが、これから行こうと提灯を持って立ち上がった。
誓願寺店に着いてみると、長屋では大騒動。話を聞いてみると、あげたお金を因業大家が全部、店賃として取り上げてしまったので、奥さんが悲観して首をくくってしまった。徳は感極まって大家の家に怒鳴り込んで、やかん頭にやかんで殴りつけ、溜飲を下げた。奥さんは医者に診てもらい、寿命が会ったと見えて助かり、叔父さんが親子を引き取り暮らした。収まらないのは徳さんで、自分が行かなければ奥さんは助からなかっただろう。この事を奉行に願って出た。裁きの結果、大家はきついおとがめ、徳さんは人助けをしたとして、青差し十貫目の褒美をもらい、勘当が許されたという。”情けは人の為ならず”唐茄子屋政談の一席。
叔父さんは、知らずに吾妻橋で徳さんを助けた後で、「お前だったら助けるのではなかった」、徳さん「助けてください!」。そんな叔父さんだが、叔母さんに言わせると「昨夜だってお前の為に叔父さんは寝ていないんだ」と言うほど甥の事を思っているし、叔母さんが食事におかずの魚を買いに行こうとすると、「魚を食わせる?こいつは、今 、大川で魚に食われてしまうトコだったのだ、沢庵のしっぽで充分だ」とわざときつい事を言う。しかし、完売して帰ってくると、本心が出て「暑かっただろ、肩は痛くないか、やはり商売人のせがれだ。風呂にするか、食事にするか、食事には魚を付けてやれ」と、嬉しい事を言うが、金がないとなると、すかさず現地に直行する事も忘れない。性根をたたき直そうとする叔父さんの心意気が伝わってくる。
売り声の練習をする為、人の居ない所にと歩いて行くと、吉原を遠望する”吉原田んぼ”に出ます。夏の炎天下、唐茄子を担いでやって来たのは吉原田圃。あの向こうに吉原がある。あそこにさえ行かなければこうやって勘当されることもなかったと・・・。ここでの志ん生の風景描写はさすがで、ほろっとさせて笑わせます。昨日までの遊びの主人公と今日の棒手振りの落差、吉原の中のざわめきと外の差をしみじみと聞かせてくれます。・・・もちろん、今はどこにも田んぼは無く、ビルが密集しているだけ。
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