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苦悩の果て

2009年11月01日 02:02

殿「家老、これはどういう意味か」

家老「は、ただ今・・・ と、殿、私にも分かり兼ねまする。何か、化外の民の書く文字にも見えまするな」

殿「我が藩一の知恵者のお主に分からぬとは、これは一大事であるな」

家老「は、身に余るお言葉・・・しかしこれは」

殿「うむ。その方、城外の若い娘を連れて参れ」

家臣「は、殿、・・・若い娘でございますか?」

殿「左様。ぴちぴちの娘を数名、ただちにここへ」

家老「殿、如何なさるお積りか?」



(数分後)



殿「その方らが我が藩の若い娘らであるか」

娘1「あれぇ~、お殿様ぁ、近くで見るとぉ~、意外に可愛くってぇ~、まみちょっとラブって感じぃ~」

殿「・・・その方、今何と?」

(娘1連れ去られる)

家老「は、と、殿、大変、失礼をば致しまして・・・」

家臣「と、殿、申し訳ございません。私めの失態でございます。この不始末はこの場で」

娘2、3「きゃあ~~~!!」

殿「これ、止さぬか。このようなことで切腹など必要ない」

家臣「は、これまた大変失礼をば・・・」

殿「構わぬ。・・・これ娘、この文に書いてあること、説明してみよ」

娘2「お殿様ぁ~、近くまで行ってぇ~、よろしいですか?何ちゃってきゃっ」

(娘二人、笑い合う)

家老「この戯け者どもが! 殿の前で何という」

殿「まあ落ち着け。この者らの助けがなければ、この文は読み解けぬのじゃ。ほれ娘、これじゃ」

娘2「(家老を見て)ちょっとぉ~、このおじいさん~、怖いって感じぃ~」

殿「(家老に)これ、お主は下がっておれ」

家老「と、殿、しかし」

殿「構わぬ」

家老「は、ただ今・・・」

殿「これで良かろう。さ、娘たち、この文じゃ」

娘2「・・・お殿様ぁ、これぇ、単なる遊びの誘いだとぉ、思いますぅ~」

殿「な、遊びの誘いとな?」

娘3「そうですお殿様ぁ、だってカラオケに行こうってぇ、ちゃんと書いてあるしぃ~」

殿「カラオケ?それは何じゃ」

娘2「あらお殿様ぁ、カラオケ、知らないなんてイケテないしぃ~」

(娘二人笑い合う。殿、隣の家臣に小声で)

殿「カラオケとは何じゃ」

家臣「は、どうやら演奏に合わせて歌う、下々の者どもの娯楽かと存じます」

殿「歌か・・・」

(殿、気を取り直して)

殿「これ娘、ではここには何と書いてあるのじゃ」

娘3「あらお殿様ぁ、これ簡単だしぃ~。『カワユス』って『かわゆ過ぎる』ってことだしぃ~」

(殿、呆気に取られ)

殿「・・・それでは『ス』が『過ぎる』を表しておる、ということか」

家臣「は、殿、恐れながらそのような意味かと」

殿「そのような乱れた言葉遣いを認めた覚えはない! 何処の誰が始めたのじゃ」

家臣「殿、お静まりください。文を全て読み解くまで、この娘達を怖がらせては」

殿「うむ、そうであった。・・・これ娘。その続きも読んでみよ」

娘2「お殿様ぁ~、この続きも簡単だしぃ~。『ハンパない』って『半端じゃない』ってことだしぃ~」

殿「何と。では『で』を省略した阿呆がおるのか」

娘3「その次ぃ~、超ウケルんだけどぉ~。『半兵衛ちんにコクった』って書いてあるぅ~」

娘2「ええ~っ、半兵衛ってあの油屋さん~? あの人赤いふんどし締めてるって噂だぉ~」

(娘二人笑い転げる。殿、隣の家臣に小声で)

殿「今、『だぉ~』と言ったか?」

家臣「は、そのようでございます。・・・恐らく、『である』の意かと」

(殿、宇宙人を見るような目で娘達を見ながら)

殿「これ娘、それではその方たちは、その半兵衛という男を知っておるのじゃな」

娘2「はいお殿様ぁ~、良く知ってますぅ~。下町の油屋さんの確か次男坊だぉ~」

娘3「ちょっと。お殿様に『だぉ~』は失礼だぉ~」

(娘二人、また笑い転げる。家臣、下の者に目配せして半兵衛の捜索に向かわせる。殿、憮然とした表情)

殿「・・・これ娘。して『コクった』とは何じゃ」

娘3「ああお殿様ぁ、それは『告白した』ってことですぅ~」

(殿、大きく目を見開き)

殿「・・・何と。だ、誰がそのようなことを」

家臣「殿、どうか、お気を確かに。殿、殿」

殿「・・・分かっておる。(深呼吸して) では、この部分は何じゃ」

娘2「お殿様ぁ、これ、絵文字ですぅ~」

殿「何?絵文字とな?」

娘3「はいお殿様ぁ~。記号を組み合わせてぇ、人の顔なんて作ったりしてぇ~」

殿「・・・これをいちいち入力するのは苦労であろう」

娘2「だって私達ぃ~、コピペするしぃ~」

殿「コピペ?」

(家臣、殿に耳打ちして)

家臣「コピー&ペーストのことかと」

殿「・・・」

(殿、数分間瞑想後。娘達はひそひそ何やら相談中)

殿「ご苦労であった。その方どもは帰って良い」

娘2「お殿様ぁ~、私達と一緒にぃ~、写メ撮ってくれませんかぁ~?」

殿「何?『シャメ』とな?」

家臣「携帯電話写真機能のことかと」

殿「・・・良かろう。一枚だけであるぞ」

娘2、3「超ラッキー!!」

(娘達、殿の両側でピースサインをしながら記念写真。娘2の携帯で家臣が撮影。その後退室。入れ替わりに家老が戻る)

殿「娘達には何か褒美を取らせよ」

家臣「は」

家老「殿、如何でございました?」

殿「うむ。あの娘どもはこの文を軽~く読み解いたわ。わしらには読めもせぬこの難物をな」

家老「では殿。やはり」

殿「うむ。この謎の文の出所はやはり下町の娘と見るのが正しかろう。その娘が油屋の若者恋心を抱いておると見える」

家老「そのような些末事がどうして我が密偵の手に」

殿「我が密偵は、恐らくこの文が読めぬ故に恐れおののいて報じてきたのであろう。責められはせぬ」

家老「は。・・・それではどう致しましょう」

殿「うむ。今後我が藩の密事はすべて、この文字で伝えるとしよう」

家老「は、この文字で、でございますか?」

殿「そうじゃ。我が密偵に読めぬ文字、誰にも読まれはせぬ。そこを逆手に取るのじゃ」

家老「流石殿、妙案にございまする」

殿「お主の賛同が得られるとは心強い」

家老「至急手配を」

殿「うむ。師範には、やはり先ほどの娘のような者が適当であろうな」

家老「し、しかし殿、それでは余りに」

殿「良いのだ。早速手配を」

家老「は。直ちに」



かくしてギャル文字は歴史に刻まれた・・・

このウラログへのコメント

  • あや 2009年11月06日 08:57

    偶然ログを読んだだけなのにエ●テーのすぱっと消臭の殿が頭に思い浮かんだわw
    楽しかったですw

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