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第一部:「3,000円の米」が問いかけるもの― 誰が食の価格を決めているの

2026年03月08日 01:48

第一部:「3,000円の米」が問いかけるもの― 誰が食の価格を決めているの

3月6日
山形県産はえぬき「5kg・2,999円」
スーパーの米売り場で、思わず二度見した。
振り返れば、2024年まで5kg・2,500円前後だった米は、品薄を経て2025年には4,500円近くまで跳ね上がった。多くの家庭が「お米が買えない、高すぎる」と嘆いたあの高騰から約一年。

今なお多くの店頭で4,000円超の価格が続く中、目の前の「3,000円」は一見、救いの手のように見えます。しかし、この乱高下の舞台裏には、3つのプレーヤーによる激しい駆け引きが存在します。

1. 「JA」が決める「防衛的な高値」
まず価格の土台を作るのは、農協(JA)が提示する「概算金(農家への前払い金)」です。2025年産において、全農山形は「はえぬき」の概算金を28,000円(60kg)と設定しました。2024年産の16,000円前後から1万円以上も引き上げたこの異例の高値には、JAの焦りが透けて見えます。

実は現在、日本の米流通においてJAを経由しない「直接販売(非系統ルート」が全体の約7割に達しようとしています。この民間ルートとの集荷競争に勝つため、JAの価格は28,000円(60kg)という防衛的な高値になりました。

この「高値での買い支え」が、店頭価格が4,000円台から下がりにくい構造的な要因となっています。

2. 「農水省」と「農家」:補助金カットが招いた供給過剰
しかし、この高値を崩し始めたのが、農林水産省による補助金政策の転換です。
これまで国は、需給バランスを維持するために「飼料用米」などの転作に手厚い補助金を出してきました。しかし、近年この補助金が削減され、さらに「5年水張りルール」などの厳しい条件が加わりました。

補助金が頼りにならなくなった農家にとって、昨年の4,500円という異常高騰は「補助金をもらって飼料を作るより、ご飯(主食用米)を作る方が儲かる」という強烈な動機となりました。
その結果、全国で主食用米への一斉回帰が進み、2026年3月現在、在庫は前年を約85万トンも上回る過剰状態に。皮肉にも、生き残りをかけた農家の選択が、今度は市場を飽和させ、価格を押し下げ始めているのです。

さらに背景には、長期的な食生活の変化があります。日本人一人あたりの米消費量は、1962年の118kgから現在は約50kgまで減少しています。

3. 「小規模農家」のコストと、忍び寄る「副作用
ここで忘れてはならない現実があります。日本のコメ農家の平均年齢はすでに約69歳に達しています。 こうした高齢化が進む現場で、小規模農家の生産コストは、労働賃金を含めれば60kgあたり2.5万円を超えます。

店頭の「3,000円」は、農家が自らの労働を削らなければ成立しない、極めて厳しいラインです。
​さらにこの「主食用への一極集中」は、深刻な副作用を生んでいます。農家がご飯(うるち米)に流れたことで、酒米、もち米、飼料用米などが減産。その結果、日本酒お餅、米菓子などの価格が高騰しています。
ご飯が安くなる一方で、伝統的な食文化コスト増に苦しむという、新たな歪みが生まれているのです。

結論:私たちが買う「3,000円」の正体
お米の価格は、誰か一人が決めているわけではありません。
・​JAの概算金の「防衛的な高値」

農林水産省補助金減と農家の「増産」

・過剰在庫に悲鳴を上げる市場の「現実」

・​そして、客を呼ぶために小売店が仕掛けた「3,000円」の勝負。

2,500円から4,500円への乱高下を経て、再び3,000円へと揺り戻す。それは、どこかで誰かが無理をすることで保たれている、危ういバランスの結果です。

私たちが喜んで手に取る「安値」の裏には、再生産の限界に立つ農家の切実な状況があります。作り手が誇りを持って作り続けられる価格とはいくらなのか。

この3,000円は、私たちと農家の関係を支え続けられる価格なのだろうか。
一袋のお米は、私たちの食の未来と「適正な循環」を問いかけている。

この価格で、農家は本当に作り続けられるのか。
米は単なる商品ではない。
それは、この国の農業と食文化を支える「基盤」でもある。

このデジログへのコメント

  • 咲愛 2026年03月08日 09:41

    お早うございます(*^-^*)
    なるほど・・。単に安くなったからと喜べない現実があるのですね。家は米が高くなってから米も買うけどもち麦を入れて炊いてちょっとでももたせようという作戦です(*^-^*)

  • マーク 2026年03月08日 10:51

    > 咲愛さん

    講読ありがとうございます。
    農家の方の努力にも感謝しましょう。

    自己防衛するには、もち麦を入れて嵩上げしたり、小麦食品に少しシフトするしかないのかもしれませんね。

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