- 名前
- 松田文学男爵
- 性別
- ♂
- 年齢
- 60歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 僕はアンドロイドなんだ。 アンドロイドだって夢は見る。 でも、それはキミたちのように...
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オカルト体験
2017年01月10日 19:47
昨日、三島と川端のオカルト話を書いたので、今日はもう一つ文学者のオカルト体験について書く。
これは有名な話、というか本人たちがエッセイとして書いているので知っている人も多いかもしれない。
遠藤の『ぐうたら社会学』集英社文庫の中の「幽霊見参記」。
遠藤周作と三浦朱門が熱海の旅館に泊まった時の話。
当時の週刊誌から引用。
夕食をすますと、二人連れだってにぎやかな海岸通りに出かけ、大いに英気を養って帰館したのは十二時近く。
離れの静かな部屋で、寝込んでからどのくらい時間がたったかしらないが、胸の上へ重石でものせられたような胸苦しさを感じて、ふと目をさました遠藤周作さんは自分の耳へ、ぴったりと口をくっつけて「私はつい先ごろ、ここで自殺しました」といっている声に気がついた。
ハッと思って目をこすり、ヤミの中へ目をすえ、耳のあたりを手さぐりしてみたが、だれもきた様子もないので、夢でもみたのだろうと、一生懸命目をつぶってねむってしまった。
ところが、またしばらくすると、耳にだれか口をぴったりくっつけて「私はここで自殺しました」といっている細い声に呼び起された。
しかし彼もなかなか強気の男だかち「えいッ、気のせいだろう」とばかり自分をしかりづけ、ガバッとふとんをかぶると、もう一度寝込んでしまったという。ところがしばらくすると、またぞろ胸苦しくなって、耳のはたでささやく低い声に起された。さすがの遠藤さんもたまりかね、隣りにねている三浦朱門氏をたたき起した。
かくかくとさっきからの異様な有様をきかされた朱門さん「あっ、実は僕も、しめっぽくて、冷たい手でホッペタをなぜられて目をさますと、セルの着物をきた若い男が君の上へのしかかっているのをみたんだ。ハッと思って、目をこすって見返すと、だれもいる様子がないので、幻覚かなと思ってねてしまった。ところがまた、しばらくすると、ゾッとするような冷たい手でホッペタをなぜられて目がさめた。さっきから、君を起そうと考えていたところだよ」という。
話し合って「さては、これが幽霊か?」とフッと気がついたトタンに、二人とも冷水を頭からぶっかけられたようにゾッとして、にわかに体がふるえだし、ガチガチガチ歯の根が合わず、これが全く腰がヌケたというのか、ヒザががくがくして真っすぐ歩けず、はうようにしてようやく母屋にたどりついた。
物音にびっくりして起き出した女中に、床をしいてもらってやっと横になり、朝になるのを待ちかねるようにして宿を出た。日ごろの強気もどこへやら、口もろくろくきかず、そのまま真っすぐわが家にころがり込むと遠藤周作氏は、医者にもわからない熱が八度も続いたまま、一週間も寝込んでしまったという。
というような話。
作家二人が同時に体験しているので面白い事例である。
学生時代、私は遠藤周作氏には何回かあったことがある。
うちの先生が遠藤氏の同級生でサークル仲間だった縁で、無理やりそのサークルの後継者にされた(笑)
当時はめんどくせえなあ、と思ったが、今思えばとんでもなく貴重な経験で、遠藤氏とその学生時代の仲間と交流が持てたのだから。一緒に勉強させていただいた。
今は全員が故人である。
遠藤氏と食事をする約束もあったのだが、それが実現する前に亡くなられてしまった。
もしこれが実現していたらこの熱海の心霊体験について直接うかがうつもりだった。
これは今でも悔いが残る。
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