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楽しかった

2015年06月12日 21:17

2000年の5月、僕は産まれた。

兄弟は僕を含めて6、僕が何番目の子供かは分からない。


でも、母親育児放棄
僕は産まれた次の日に、貰われていった。


まだ目が見えない僕は、何日か経つまで匂いだけが全てだった。



揺られながらどこかへ移動して、僕は育てられた。

だから、母親の顔はわからない。

兄弟の顔もわからない。


僕は優しいお兄ちゃんの家で育った。

優しいお父さんとお母さん、たまに遊びに来るお姉ちゃん

そして、お兄ちゃんにやけに近づく、変な匂いを出す女。




自分がいる世界や環境がわかった時、僕は名前を貰った。


お父さんもお母さんも、昼間はお仕事で家にいない。

お兄ちゃんも大学ってとこで勉強してるから、お留守番は僕の日課だった。


静かに眠れる昼間は、僕にとってパラダイス

毎日のパターンは決まっていた。

まず、お母さんが帰ってくる。
すかさず僕はご飯を催促すると、お母さんはいつも大盛りのご飯やおかずをくれた。

そして、次にお父さんが帰ってくる。
お仕事にはスーツって服で出かけてるから、飛びかかって汚すと
決まって怒られたので、そういうときは大人しくしている。

お父さんが着替えてきたら、やっと抱っこしてもらえる時間だ。

そして、毎晩9時にお散歩に行く。

お父さんとお母さんと、僕で夜道を仲良く歩く。


畑のお花の香りを楽しんだり、公園で乗り物で遊んだり


毎日楽しい



最後に帰ってくるのが、お兄ちゃんだ。


勉強したあとは、アルバイトってやつで毎日お仕事だから

僕が出迎えるのは、いつも真夜中。


でも、眠いなんて思わない。


お兄ちゃんは一番優しいから。



たまに大好きお菓子をくれたり、一緒にお散歩したり


毎日それだけで嬉しい。



でも、たまに女を連れてくる。

あの、変な匂いを出す女。



顔に顔を近づけると、変な匂いは一番キツくなる。

どうやらこの匂いは、顔の変なものから出てるみたいだ。



これはお母さんもたまにしている、お化粧ってヤツだ。


僕はこの匂いが好きじゃない。クシャミが止まらなくなるから。


お兄ちゃんと、変な匂いの女と一緒に出掛けると

ベンチでいつも、2人は仲良く座る。


僕はそれが面白くない。


だから、間に割って座るんだ。




そのたびに2人は、面白そうに笑う。


楽しそうで、僕も嬉しい。




この2人と一緒に、海に行った。


砂は暑くて、足を火傷しそうだ。


お兄ちゃんがパラソルを広げて、僕を日陰に入れてくれる。


帰りは涼しい車の中で、変な匂いの女に抱っこされて眠る。



寝て起きたら、あっという間に家につく。



やっぱり、我が家が一番だ。






雪が降った日、お兄ちゃんと目いっぱい遊んだ。


カマクラを作ったり、雪掘りをしたり


僕そっくりに雪像を作ってるお兄ちゃんを邪魔したり・・・


寒いけど、すごく楽しい




そんな雪が降る季節、僕に妹が出来た。



僕よりずっと小さくて、口を開けたらそのまま食べてしまえるくらい小さかった。



お父さんもお母さんも、「妹に優しくしてね」って僕に言ってきた。


だから、僕に買ってくれたガムを妹に持っていかれても怒らなかったし

僕のご飯を妹が黙って食べちゃっても、僕は怒らなかった。


そのたびに、「お兄ちゃんは偉いね」って褒めてもらえるのが、嬉しかった。



留守番は妹と一緒にするようになった。


仲良く遊んだり、たまに喧嘩したり


でも、妹だから叩いたりすることはしなかった。


妹も、僕が身体が大きいから、僕を攻撃したりしてこなかった。




妹は、変な匂いの女が大嫌いだ。


同じ女だからか、お兄ちゃんと仲良くしていると

必ず女のバッグを隠そうとしたり、ハンカチを隠したりした。


そのたびに、お兄ちゃんが探すんだけど

妹は懲りずに何度もやっていた。



僕は、お兄ちゃんに言われたから

変な匂いの女に嫌がらせをしたりしなかった。


だって、僕は男だから。





楽しい毎日を過ごして9年、

お兄ちゃんが帰ってこなくなった。



お父さんもお母さんも、毎日朝早くどこかへ出かけて遅くに帰ってきて

2人は毎日、寂しそうだった。




喜んでもらおうと、僕は散歩のたびにわざと転んで見せた。


いつも笑ってくれる2人が、笑ってくれなかった。



そんなことを2.3日してから

お兄ちゃんが帰ってきた。


でも、何も話してくれないし

ずっとお布団で寝たままだった。


「あっちに行ってなさい」って、お母さんに言われたけど

起きてこないお兄ちゃんが心配で、夜にコッソリお兄ちゃんのお布団に入った。


お布団の中は、冷たかった。



お兄ちゃんの顔をなめてみた。何もなかったし、冷たかった。


気になって、全身を調べてみた。


お兄ちゃんのお腹から下は、形がわからなくなっていた。



変な匂いの女が、毎日毎日、お父さんとお母さんに謝っていた。


コイツはずっと泣いたままで、匂いもいつもの化粧のにおいじゃなくて

お風呂に入ってないヤツのにおいがした。




何度かお兄ちゃんと一緒にお布団で寝た、ある日の朝


「今日でお別れだよ」って、お母さんが言った。


妹はずっとお兄ちゃんにくっついて離れなかった。

お父さんが手を延ばしたら、すごく怒ってた。


僕は、お父さんとお母さんとお出かけした。




お兄ちゃんが、大きな建物の中で

写真に写っていた。




沢山煙をあげて、何かブツブツ言っている真ん中で


いつもの笑顔で、写真に写っていた。





「もう、顔が見られなくなるから
しっかりお別れを言っておきなさい」って、お父さんが言った。


お兄ちゃんは白い服を着て、箱の中にいた。


妹と僕は、最後まで抱き付いていた。


顔をなめたりした。



お父さんとお母さんに引っ張られて、僕はお別れを済ました。



もう、あの優しい顔が見られなくなった。



僕は悲しかった。





お父さんもお母さんも、あまり笑わなくなった。


散歩のたびに、わざと転んだり

水たまりに入って、泥だらけになって笑わせたりしようと頑張ったけど

2人が笑うことは少なくなった。




しばらく経って、変な匂いの女がまた来るようになった。


コイツはいつも泣いている。


辛気臭いのは、僕は嫌いだ。


散歩に行こうと、僕を誘うから

僕は沢山嫌がらせをした。


いきなり引っ張って転ばせたり


よそのヤツと喧嘩して、たくさん困らせた。



何度誘ってきても、何度も転ばせたし何度も泥をかけてやったりした。




そのたびに、「ごめんね」って僕は謝られた。




女はどんどん痩せていった。


食べても美味しくなさそうなくらい、痩せていった。


あまりにかわいそうなので、お父さんに買ってもらったガムをあげた。



女は少しだけ、笑った。


「食べられないから、気持ちだけ貰うね」って、ガムを返してきた。




それから僕は、女に嫌がらせをするのをやめた。


お兄ちゃんが「女の子いじめるなよ、妹なんだから」

って、妹がうちに来た時に言っていたから


コイツも一応、女だ。


だから、嫌がらせは全部やめた。



散歩のときも、コイツはチカラがないから

引っ張ったりするのをやめた。


少しずつ、女は笑うようになった。




きっと、コイツはお兄ちゃんの家来なんだ。


だから、お兄ちゃんがいなくなって寂しいんだ。


僕も寂しいけど、僕は男だから


泣いたりしないんだ。





それから5年経った。


変な匂いの女が、一緒に暮らすようになった。



コイツは前みたく笑うようになったし、前よりも僕や妹に優しくなった。



いつしか妹も、コイツと仲良くやるようになっていた。


一緒にお出かけしたり、お散歩に行ったり

女同士ってヤツは、わからないね。




休みの日は、女と妹と僕でよく遊んだ。


ボール遊びをしたり、マッサージをしてくれたり


なかなか快適な日だった。




2013年、妹の元気がなくなった。


ご飯もあまり食べないし、ダイエットでもしてるのかな?


でも、我儘なのは変わらないし

思い過ごしだと思っていた。


それから何日か経って、みんなでご飯を食べた夜


妹は昼間からずっと、ベッドで寝ていた。


心配したお父さんが、妹を起こそうとしたら


もう、妹は冷たくなっていた。




昨日、一緒に遊んだのが最後に元気な妹の姿だった。




僕より後に産まれたのに、僕より先に天国に行った。



その日の夜、僕は夢を見た。


お兄ちゃんが妹を迎えに来て、妹も嬉しそうにしながら
お兄ちゃんについて行く夢だ。



きっと天国で、お兄ちゃんに会えて

楽しく暮らしているんだろう。


そう思うと、僕は寂しくなかった。




それから僕は、変な匂いの女と一緒に寝るようになった。


コイツは、大好きなお兄ちゃんの布団で眠っているから


コイツと一緒に寝れば、お兄ちゃんの匂いがかげるからだ。




裏に続きます。




掲載元
http://ent.sina.com.cn/s/h/2012-12-25/17313820539.shtml

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