パン屑を掃う様に...

モナカアイスの屑を
はらい...

その頃の
映画館は
冷房があったのか、
なかったのか...

天井に
大きな扇風機の羽根が、
ゆっくりと廻り
紫煙の濛々と
立ち込める生温い空気を
掻き廻していた様な、

映写機から
スクリーンに投射する光線が
漂う雲の様な
紫煙を
照らしだして
ディープパープル
或はJimi.Hendrix...

でもあるまいし
東映の時代劇か
日活か、
タイトルの富士山を
見ただけで眠くなる
松竹映画か、

娯楽もない時代の
数少ない娯楽、
週末は夕食を早目に取り
お八つを持って
ピクニック気分...

皆の家族も
各々連れだって
ちょっとした
町内の映画会

蒸し暑く
中休みに買いに
行かされた
アイスクリーム...

子供達は
勿論アイスキャンディー
母のリクエストは、
カップアイスかモナカアイス
頼むのはいつも...

扇風機が廻り、
のしイカ臭い場内で
アイスキャンディーを
膝に垂らして舐め終り、
椅子に振り向くと、

バックを膝に
カップアイスをさじで
掬いとる母の
眼を伏せて...

パン屑を掃う様に
モナカアイスの

屑を

......はらい