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戸川純が謌うべきうた(再)

2010年03月15日 19:04

ぬるい風があたしたちに、

雨をもたらし、あの戸建の賃貸

座敷で

ぬるく乾燥した、あの頃の

あなたと一緒に、

雨の空気を予期して、春の引越しです

あたしは井の頭公園

痩せ細った犬たちにかこまれ、

耳朶からからしたたる

冷涼とした事どもの

創造的な、肉体を忘却せぬ

文章表現を

くりかえしくりかえし、訓練して、

いたんです




あれほど多くの人型の、

偽物たちの影の、その背後の中央を

周期的な雑踏と、なにげない

無音の地響きのように

会話の合間で、見えるか見えないか

桜のその幼児めいた

根から、煙のように生え出す

飢えたなにものかが

まぼろしめいた、鯉の群が

水煙の中で投影され

鱗にも、頭にも、

そこに灼熱の予感があって、

それは

意図する事を無理矢理停止した

肉の跡に他ならない





突如子供たちの歓声があって、

ひめやかな水音がきこえて、

記憶が許容しない、生肉の香り

もうすぐ、肉として

崩落するモノを美化し形式化する

春ですねえ

だから、あたしは水に興味を

もったの

ここのぬるいお湯は、すてき

あと2週間ほど

いや、いつまでも、いつまでも、

あたしは平泳ぎで凝固して

その隙間、はやく、

あなたも入る事が必要なのです

肌がふれあった、あのときみたいに

ほんとうに、

はやく

見つけてね





さあ、あたらしい家では、

あの時くすんだ真紅

脳の吹雪の合間に

あたしの声が、真紅の脳の

中のあたしに吹雪く

あなたが黒龍江の平野の、

吹雪のススキの原の、

赤い蚊のたかる

脈うつ脳の懐の、あの丘から、

見ているわ

あたしはあそこに行って、丘の上から

鈍痛をともない、ひたひたと流れる

褐色のものの溶解する様を

見つづけた

あなたの最後の排便を、

見とるために

あなたの悪臭でむせび、嘔吐するため

でもあなたはすでに

いなかった





あの頃のあなたが来る筈だった

吉祥寺の一軒家には、

あたしたちが、変哲のない町の中の

多くの異常な非生命の、その生命

群れつどい、憩う場所を

設営したんです

風呂につかるあたしに

嵐のような春の風が

窓からふきこみ、

あたしの開いた口を

黄色い舌を、

ふくれあがったお腹を

あたしの崩落した

黄色い大腿部から露出する骨盤

股間を覆う

飢えた蛆虫の群を、ゆるく

波うたせる




あたしを見て




白く、黄色く、紅色に

汚水の中で崩壊してゆく、

あたしを、見て




ひらいた白い目は、

ここに入って来た、あなたの

あの悪臭を

寸分たがえず、コピーする事

それをとらえる事のため

水をとめなかったのは

あたしのヴァギナ

くずれないように

すこしでも、あなたの、

汚泥になった体を

あたしの組織が

記憶できるように

くずれぬよう、そっと

抱いてください

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