- 名前
- 埋葬虫
- 性別
- ♂
- 年齢
- 54歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ひさしぶりに書き直してみたぞ。うっひゃっひゃ
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干拓地奇譚(22)
2010年03月28日 04:05
ひどく侵食され、丸石が露出して非常に歩きにくい堤防の上。俺は、とびかうカモメを眺めつつ、朝食のコンビニお握りをむさぼった。おいちゃんと、例の三名は、いまだに俺たちの船の前で話しこんでいる。
左手の後方、草原の向こうに、鉄筋コンクリート製の低い廃墟めいたものが見える。そのすぐ横には、あの地下数百メートルの深さの坑道をふさぐ、円柱。もともと、巨大な煙突様の排気道で、最近とりこわされた、と何かで読んだな。
ちょいと不自然な物に目がとまる。
ススキの中の廃墟の横、真新しい金網だ。長方形のケージを構成していて、その中央に、低い音をたてる何かの設備が、稼動している。高電圧危険と書かれた看板も、そうとうに新しいな。ここに電気が来てる、ってのも、どうも不思議だ。発電設備があるともおもえず、海底ケーブルな筈だが、この役割をおえた島に、わざわざ海底ケーブル?
俺はたちあがると、港の反対側に係留してある、あの白いでかい船を、もうちょい近くで見るかな、と、釣り道具をとりあえず放置して、歩き出した。海鳥が平和にとびかうそのコンクリートの海岸線は、かなり危険。テトラポットの上をピョンピョンとびうつりながら移動した方がラクかいな、と思いはじめた。
日光に輝りはえる、その船体は妙に頑丈に見えて、しかも、なんつうか装甲板が操舵室を覆ってるように見えるんだが。船首の機銃も、さきほどちらっと見た感触より、なにかデカいぞ。中央にそびえる「司令塔」のてっぺん、のアンテナドームも、なんかものものしい。
桟橋に人影がみえる。この連中、ここで何してんだろ?て、いうか。釣りなわけねえ雰囲気。それに。。。。
桟橋でこっちを見てるおっさん。あれ、外人じゃん?!
俺は足をとめた。話しかけられたら、タイヘンだ。英語をしゃべる自信なぞまるでない。これは俺らの船の方へもどった方が得策。踵をかえして、今来た道をもどりはじめた。おいちゃんのクルーザーの桟橋を、おいちゃんふくめた4人が陸地へと歩いてくるのが見えた。
俺に接近してくる彼らは、一旦たちどまった。「...ではよろしくお願いします、ただ念のため.....ますので、その場合は一応報告し....」などという会話がきこえる。
歩みさる3名を見送りながら、おいちゃんが俺をやっと相手にしてくれる。
「いい釣り場だ。気にいったろ。ん?ふっふっふっふ」
「あのっすね、あそこの白い船にのってんの。あれ外人でしたよ」
「ほほう。何人か、わかったか?話しかけて見たか」
「いや、とんでもねえっすよ。わかんねっすけど」
「。。。。アメリカ人だ。銃撃してくるかもな。ふふふふ」
「アメ公っすか。何してんですかね、こんな、なんつうか、日本の領海内で」
「あのな、無論、正規の手続を経て、この島に着岸しているわけだがな」
ここに来て、あのぼんやりとした、疑問。これがいきなり、明確になって言語化した。俺はわれあらず自分の言動に吃驚する。
「あの連中、おいちゃんを待っていた感じがしたんすけど、なんか知り合いだったりすんすか?」
釣り道具の山にかがみこんで、今日の仕掛けを支度しはじめてる「風に見えた」おいちゃんが、なんとも普通に返答してくる。
「そうだよ。おともだち」
「んじゃ、あの海上保安庁の船じゃねえ船の外人もっすか?」
「あれはビジネス相手つうか、まあ敵」
「敵?どういう意味で敵なんすか?」
「。。。。」
「なんか変だなあ。釣りに来た感じじゃなくなってきたような」
「。。。ほれ、いいからさっさと仕掛け用意しろ。チヌつるぞ」
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