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干拓地奇譚(14)

2010年03月03日 13:06

「ま、いたいけなチュウガクセイを釣りざんまい堕落させたら申し訳ねえ。来週末はちゃんと勉強しとけ」

さて、俺は、すでに必死で親への言い訳を考えていた。つまり、次の日曜、何としてでもおいちゃんと M 島へゆくつもりになってた。しかしなにしろ学年末試験の只中。いくら俺でも、お勉強を無視してそんな事やっちまうと、親がダマってはいない。

「あのー、おいちゃん、まじでダイジョウブっすよ。月曜日に社会と保健体育だけのこってるんで。あんなもん目つぶってても点とれるんで」

そうだな。。。。友人の家で勉強する、というのが最も無難か。で、沈黙して浮きに見入ってるおいちゃんをチラ見しながら、早速、俺は懇意のワルガキにメイルをいれ、そういう申し合わせをしてくれ、と打診した。即座に返事があり「何で?何しようとしてんの?」。もっともだ。「知りあいのおっさんと、釣りにゆく」と正直に送付すると「了解。俺はおまえに貸しが出来た。俺もつれていけって言いたいけど、さすがにこの日曜にゃ無理だわ」と言ってきた。こいつ、こういう時には妙に物分りがよい。

ヤツとは、夜中に二人で材木置き場に忍びこんで「実験」をし、ボヤ騒ぎを起した事があるという仲で、そんときは訴訟沙汰になりかねない大騒ぎになった。担任と親につれられ、所有者の土建屋にあやまりに行ったが、その土建屋はワルガキに「理解」がある、というかスジに近いおっさんで、俺を見るなりニタリとわらって「次にやったらシバくぞ」と言った。。。

そんとき学校にとって何よりのショックは、そいつ(クボタ)は学年で一席、俺が三席という事実だったらしい。担任の憔悴した顔には少々憐憫を覚えた。まあその他もろもろ、ガッコーの内外で傍若無人をやらかす俺に、親は、特に親父は、もうほぼ諦めていて、苦虫かみつぶした顔しながら「だらしない真似、人に迷惑かける真似だけは、やめとけ」というだけだった。

つまり、今回の秘密旅行において、問題はかあちゃんを如何に「安心」させておくか、なんだ。彼女は寡黙なひとだが、俺は密かに親父よりもかあちゃんを恐れていた。なせか、俺のコトを見通しちまう事が多く、また怒らせると尾をひいた。口をきいてもらえねえ事が一週間くらいつづいた事もあった。まあ俺の自由闊達に見えるワルさも、恐しい限界があったわけ。

「。。。例の J工場の事だがな」

思い出したように、おいちゃんが話しはじめた。あの東新町から見える巨大な T化学の建物のことだな。ふむ?やっぱり試験をひかえた中学生を釣りにつれてゆくのは気がひけるから、話をそらしはじめた?

「あの工場はずいぶんと古い建築物なんだが、最近、中を完全に改造してある」

「。。。。はい、で、何のためっすか」

化学工場だったのが、今じゃ生物の実験設備になってるな」

「はあ。。。」

既に俺は、M 島での釣りの事でアタマがいっぱいになってる。

あそこはむしろ地下階が巨大だ。最新鋭の実験設備がそろえられ、突然変異に関連する研究がなされてる」

突然変異。はあ」

「不活性遺伝子のハナシを一度したろ。おぼえてっか?各国からサンプルがあつめられ、かなり危険な実験が2年ほど前から開始されてる」

「はい、不活性、。。。遺伝子

「。。。こりゃだめだな。もう釣りに行くつもりで計画ねってんだろおまえ」

図星。もう遺伝子のハナシなんて集中できない。何時におきよう、何系の釣りだろう、カサゴの仕掛けかなあ。ルアーももっていって見るか。でもこの季節、何がかかるんだろ?フッコの季節じゃないし。まあメインは普通の餌釣りでグチとチヌだろうなあ。

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