- 名前
- 埋葬虫
- 性別
- ♂
- 年齢
- 54歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ひさしぶりに書き直してみたぞ。うっひゃっひゃ
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干拓地奇譚(16)
2010年03月13日 01:27
。。。。
土曜日になった。
試験はほぼ終了も同然で、しかも勉強しに行く、って事で、親もしぶしぶ納得した。のこった重要科目は国語のみ(つまり、俺はおいちゃんにウソいっちまっていたんだ。。。)。まあ、ある種罪悪感から、俺はいつにも増して勉強していた。国語なんて、サイノーだろサイノー。おわった数学はほぼ満点が期待できたし、英語なんぞ例によって死角なしの完璧完答である。
これほどまでに、あそこに行く事にこだわっているのは、たしかに自分自身ちょいと不可解にも思えたわけだが、なにしろあの隔離された不思な人工島で、いつもとはまるでちがう獲物をねらうという状況、興奮しまくるにゃ十分すぎる。その興奮に、完全に屈服した形。しかし、どうも潜在意識ってんだろうか。。。何か他のものに魅了されてたようにも思える。
出立の時間が問題だった。おいちゃんは問答無用で早朝に船出するし、俺がそれに間にあうあわないは、俺次第だと、かなり冷酷な条件をつきつけてきた。俺の立場として、朝5時に友達んとこへ勉強しにゆく、ってのは、それがウソですと言っているようなもので、閉口したもんだ。しかし、日曜日の両親の行動様式をある程度把握していた俺は、次のような事をやって、帰宅したときに何とか言い訳できるような状況を期待したのだ。
両親は、日曜は、いつも朝9時くらいにおきてくる。これは、ほぼレギュラー。という事で、まずは完全に外出する準備をととのえた様相にて寝床にはいり、極めて慎重に発音を調整した目覚まし(というか、俺のケイタイ)を布団の中にだきこむ。それで4時半に起床。で、居間のテーブルには、「ちょっとはやめにゆくんで。ゴハンは途中コンビニでお握りかう。8時半」と書きのこす。
実は5時に家をとび出してんだけど、両親はそれを9時くらいに読み、なんかヘンだけどまあいいか、となる、という寸法。そのくらいだったら、帰宅してからあることないこと言い訳して、追求をのがれ得る程度だろ、と。さあて、寝んべ。
。。。。
。。。。そろーりと、玄関を出た。やっと薄暗くなってきた早春の朝であり、まだかなり寒い。手がかじかんで、しかも荷物が多く、音をたてぬように扉をしめるのは至難。自転車もガチャガチャなるし、冷や汗が吹き出す。しかし、俺は両親に見とがめられる事なく、どうやら無事に、門を出た、気がした瞬間。。。。
「おい巧。なにしんてんの?」
あああああ。。。。。
お、や、じ、だ。。。。二階の彼の部屋から、顔を出してる。
文字どおり、喉から心臓が飛び出すかとおもえた。後ろをふりかえったが、思考は完全停止。まさにその場に凍りついて、目を飛び出させて、ふりかえり親父を見る。間抜けな事このうえなし。肩にかついでた釣竿の袋が、がしゃあんと派手な音をたてて、ずり下った。
「釣り道具一式たづさえて、なに?クボタんちで勉強か。朝5時から」
そうか。。。ごくたまに、おやじは夜通し彼の仕事(なにやらの設計らしいんだが)をやってる事がある。昨日がそうだったんだ。昨日から寝てないんだ。。。だめだ、計画破棄。。。
「や、あ、あの、ちょ、えええと」
「ほほう。親に嘘いって、釣りざんまいか。しかも学年末試験の最終日直前」
「。。。そ、そう、なんだけど」
「ふん、誰といっしょにいくんだ?誰が計画たてた?おまえか?」
「や、ちゃう、あ、あの」
つづいて俺をどやしつける言葉を投げてくるかとおもったら、彼はそのギョロ目のけわしい顔をちょいとゆるめた。眉をひっぱり上げる。これは、彼が思考してるサインなんだな。
多分、すがるような表情の俺を、眉間の皺しるけくじぃいっと見ていたおやじ、なぜか突然、下をむく。で、すぐに顔を上げるんだけど、俺は、見て当惑するわけ。あきらかに、爆笑をこらえている。
「おまえ、ホントにアホだな」
「ええ??」
「いけよ。おかあさん音で目さますぞ」
「。。。。。うん」
「それから、釣った魚は、もってかえってくんなよ。道具はちゃんと外でおろして、手ぶらで玄関からはいれ。まあわかっとるだろーがな」
「。。。。うん」
とうちゃん、ありがとう。。。。。
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