短編小説・・・１２

カツラか・・俺はひょっとして大きな思い違いをしていたのかもしれない。髪が長いから女性・・そんな先入観に捉われていた気がする。
「そのシュプールっていうお店の場所を教えてください。」
「じゃあ、地図書きますね。そのお店、８時過ぎでないと営業していませんよ。」
「わかりました。ありがとうございます。それから貴女にとって岡部さんは今でも忘れられない人ですか？」
なんて余計な事訊いてしまったのだろう。あふれ出した涙を見たらわかるじゃないか。
「大変失礼しました。それから捜査にご協力いただきありがとうございました。」
俺は早速署に戻り、経緯を説明した。
「盲点だったなあ。私も髪の長い女性、と聞いたから男なんて眼中になかったよ。考えてみればここは新宿だ。いろんな人間がいて当たり前だなあ。」
課長がしみじみ言った。
とりあえず「シュプール」には俺と福永が今晩行く事になった。
行く途中福永と話した。男なんて見かけじゃないし、縁なんてどこに転がっているかわからないものだと。