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日本人は農薬で認知症になる

2016年03月19日 15:25

アルツハイマー病(認知症)やパーキンソン病など脳の疾患が増え続け、それが介護の現場でも問題を複雑にし、解決を困難にしている事実は否定できません。そしてそのアルツハイマー、パーキンソンのひとつの原因として、ネオニコチノイド系農薬が強い疑いを持たれているのもまた事実です。

 ネオニコチノイド系農薬は、もともとタバコ有害成分であるニコチンとよく似ているため、「新しいニコチン」という意味で名付けられた農薬です。神経毒性があり、昆虫や人の神経系で重要な働きを担うアセチルコリンの正常な働きを攪乱するといわれています。ネオニコチノイド系農薬が原因で、07 年の春までに北半球ミツバチの4分の1 が消え去ったとまでいわれています(『ハチはなぜ大量死したのか』<ローワン・ジェイコブセン/文藝春秋>参照)。

 ネオニコチノイドは、人が摂取すると血液脳関門を通過し、中枢神経系自律神経系、骨格筋に関連する多彩な症状を引き起こすことがわかっています。指の震え、脈の異常、発熱、腹痛、頭痛、胸痛、嘔吐、不眠などのほか、短期の記憶障害も起きます。また胎盤も通過するので、妊婦が摂取すれば胎児が多大な影響を受ける危険な物質です。さらに、ネオニコチノイドが有機リン系などの農薬と複合した場合、その毒性は数百倍から1000倍以上になると考えられています。

 脳神経科学者黒田洋一郎氏は、これらの農薬注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、アスペルガー症候群自閉症、広汎性発達障害 (PDD)、軽度精神遅滞(MR)などの発達障害が子供たちに増え続けている大きな要因になっているという懸念を示しています。それが子供たちだけに限定された影響だとはいえないでしょう。大人も当然影響を受けています。

 私たちは、自分が食べるものにこのような物質が混入していることを知らなければなりません。そして、それらを食べるかどうか、子供、ご高齢者にそれを食べさせるかどうかの選択をしなければならないのです。

 世界的にみると、ネオニコチノイド系農薬の使用頻度は減少傾向にありますが、日本では逆に規制が緩和され、使用量は増加する傾向にあります。農林水産省はネオニコチノイド系農薬が少量で効き目が持続するので、減農薬推進に役立つとして「欠かせない農薬」と位置づけています。現に、最近10年間でネオニコチノイド系農薬の国内出荷量は3倍に増えているのです。私たちがこれを見過ごすと、将来とんでもない問題が自分たち、さらに子供や孫たちを襲うことになります。

 今回の老人ホームでの事件は、職員と入居者との間に起こった個人的な事件というだけではなく、さまざまな社会的な問題を孕んだ重大な事件なのだと受け止めるべきです。私たちの社会に存在している事柄が、複雑にからんで起こった事件なのです。それを単純な方法によって、同様の事件の再発を防げるとは思ってはいませんが、私たち自身でできることはやっていかなければならないでしょう。その覚悟を決めなければならない時期にきているのではないでしょうか。

 まずは私たちが日々食べる食材食品と、それらで構成される食生活を考え直すことから始めませんか。
(文=南清貴/フードプロデューサー

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