おわら風の盆　　　　酔いと臭気

繋いでいる手が汗ばみ知り合ったばかりの慎之介様の歩き方が
フラフラしています「かなり酔いが回って来たみたいですね、
戻りましょう、宿までお送りしますわ」　「酔ってないよ」
「いいえ　酔っていらっしゃいますわ」　先程から慎之介様の
口臭と整髪剤の臭いが鼻に憑いて不快です、お宿の入口迄お送りし
ふーっとため息を憑き　再び　おわらの雰囲気を心地よく味わい
このまま宿に帰るのは何だか嫌で別の居酒屋さんを覗きました

そこには去年私を助けて下さった居酒屋の店長さんがお客として
お一人で呑んでいらっしゃいました　「まぁここでお会い出来るなんて
良かったわ」　「やぁ僕もお会い出来て嬉しいですよ」　去年のお礼を申し上げ
取留めの無い話が弾んでいる時　「本当は僕が送って行きたかったんですよ」
「じゃ今日は店長さんに送って頂こうかなぁ、いいかしら？」
「はい、もう喜んで」　目と目が合い急に小声で　
「ところで今日は股縄していらっしゃいますか？」
「・・・・・・えっえっ」　顔が真っ赤に成りました
「僕はお店で貴女の後姿を見た時　お尻の割れ目から細い縄が二本縦に
背筋に沿って浴衣の帯に隠れているのを見て確信したのですよ」
「・・・・・・」　「自縛してるのかな？」　「マゾか　じゃ何処かで男が別の席から
見てるのかな？色々想像しましたよ」「あぁぁ　あのぉ店長さん・・・・・・わたし・・・」
「ききょ今日は　その様な事してませんわ」　店長さんは私の戸惑う様子を見つめて
「マゾなんだね」　「あぁぁ・・・見抜かれてたのね・・・・」　店長さんは又念を押すように
「マゾなんだね」「はハイ」　「少し歩きましょうか」促されてお店を出ました

こんなにあからさまに言われて動揺して居る私はどんな風姿だったのでしょう
「項垂れて歩いてる姿も僕には堪らないマゾ風情だ」　「あぁ嫌だぁ店長さんその様な仰り方」
「店長さん　あのぉあのぉおトイレに行きたいわ」　少し歩いて下った所を歩きます「まだですか？」
「　ここ　ここでしなさい」　人通りのない農道です「嫌ぁここじゃ嫌ですぅ」　「じゃ宿まで我慢しなさい」
「あぁあぁもう我慢出来ない、お願いです向うにいらしてて下さい見ないでぇ」