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機械女性と。

2008年09月25日 02:52

新しく始める仕事先が決まり、気持的にホッと出来たのはいいけれど、その前の準備が何かと忙しくなって来てしまった。
けどまぁ、そういうものだ仕方ない、と思って何とかこの時期を乗り越えるしかないか。

履歴書を持って来てくださいと言われているので、それ用の証明写真が必要で撮って来た。白いバックの前で三脚立ててカメラセットして、誰かピントを合せてくれる助手でもいれば自分で自分を撮ってしまえるのに、一人だけでは結局お金を払ってわざわざ撮りに行かなくてはならず、何とも馬鹿らしい気持にもなって来るけど仕方ない。手間賃と思って機械のなかに700円を投入した。

「アリガトウゴザイマス…トウニウキンガクワナナヒャクエンデス。サツエイシタイサイズヲセンタクシテクダサイ…」

今ではどこでも聞ける機械女性の声。

あれがもし野太い男の声だとしたら、どうだろう?

「トリタイサイズヲセンタクシテクダサイ」

ただちにカーテンを開けて逃げ出すかも知れない。



椅子が回転する。回転させて高さを調節するのだ。
僕は背が長いので椅子をうんと低く設定した。

「セスジヲノバシテセナカヲカベニツケ、マルノイチニカオヲアワセテクダサイ…」

意外とこれがむずかしい。証明写真の場合、顎を少し引くと上手く写るものだが、この機械の場合はその指示がない。
でも、やっぱり少しは顎を引いた方がいいのかな。それとも背筋伸ばして背中をつけて、機械に言われた通りにすれば問題ないのかな?とにかく迷う。

「ケッテイボタンヲオシテクダサイ…」

そう女性に言われた途端に、前髪がきちんとなっているのか、そういえばとても気になり出した。仕方なくカーテンを開けて外の鏡の前で自分の顔を確認した。

相変わらず冴えない顔をしているな…。

鏡を見るのはあまり良い心地がしない。
電車のなかで一所懸命に鏡に向かっている若い女のコたちの気持はおそらく生涯わからない。

再び室内に戻りカーテンをし、丸に顔を持って行き、少し顎を引くことにして決定ボタンを押した。

もう後には戻れない。

......

冴えない顔が9枚並んだ写真がぺらりと出て来た。
自動券売機できっぷを買ったときのように、自分の顔が機械からぺらりと落ちて来た。よく見るとデジカメで撮ったときのギザギザが目立つ。ギザギザした顔が尚さらギザギザになっていた。
それをしまう袋も持っていないので、仕方なくさっき郵便局で貰って来た“ふるさと小包”のパンフレットの中に挟んでしまった。

家に戻るとカバンの中でパンフレットが少し折れ曲ってて、中の冴えない男もシワになってしまっていた。
3枚は助かったからまぁ良かった。

デイパックだったのが良くなかった。

......

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