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No.49傷跡

2008年04月09日 09:40

降り積もる 傷跡の行き場さえないまま 一日が去り始める
ガラスの様にもろい人の心よ 何故 こんなにもつらく 悲しいの
いくつもの出会いを信じて 夢を見続ける 光を探して灰となる
勇気づける言葉さえ 思いつかずに

冷たい風の吹くこの街は 誰のものでもなく
この人々はどこへ向かう どこから来るの
愛はどこから生まれ どこに消えてゆくのか
憎しみも紙一重なのかエロチズムに走るような妙ないらだち
おぼえノスタルジックな気分を叫びちらし
情熱に あふれる 我が心の有様
追いつめても いつのまにかに 追いつめられ
奏でられる時間もなく 滅び行く

降り積もる 傷跡の行き場さえないまま 一日が終わりを告げる
少女達のざわめきも 少年達のうれいも こんなに憎しみにかわり
いくつもの衰退を始め 悪を信じ 道を曲がり始める
愛 続ける事さえ 忘れてしまい
悲しみにかられて 皆 泣き崩れてしまう そう
苦しみにとらわれ 逃げる事もできない
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
DETECTIVE M 2.探索
暗い室内、窓はカーテンで閉じられている。ドアは閉められており、鍵もかけられている。

部屋には男が一人椅子に腰掛けている。
テーブルの上には一枚の紙、男が両手を胸の前で、何かを指で空になぞった。ぶつぶつと何かを言いながら。
テーブルの上の黒い水晶がかたりと動き出す。
黒い水晶の先が紙をなぞるたびに黒い色で線が引かれていく。
男の両腕は胸の前で停止している。
白い紙にはどんどんと黒い線がふえていく。

どのくらいそうしていたのだろうか、突然黒い水晶は停止した。
男は黒い水晶スーツの裏ポケットしまい、黒い線が書かれた紙を一瞥した後、シャツの胸ポケットにいまった。

よくみればスーツはよれよれだった。
男は立ち上がり、ドアの鍵を開けて部屋からでていった。

灰皿には暗くて銘柄まではわからないが煙草の吸殻が一つだけあった。

――――――――――――――――――

俺は三剣紫苑から聞いた情報を頼りに、三剣薊の足取りを追ってみた。
予想はしていたが、どこで話を聞いても仲良しの三つ子が楽しそうにしていたという話をしていた。
だが、三剣薊が一人になってからの足取りは一切つかめなかった。

これも大方予想してはいたから、さほど落胆もしていない。
余り使いたくはなかったが奥の手を使うしかなさそうだ。
ただ、それだけだ。

そして、俺は一度事務所に戻った。
事務所には鍵がかかっていた。
職業柄何かあった時の為、俺が外出する時は栞がいたとしても鍵を閉める事にしている。
だが、栞は買い物にいってるはずだった。
事務所の鍵を念の為に閉め、自室に戻り部屋の鍵を閉めた。
完全なる密室。窓はいつもカーテンを閉めている。

この部屋は常に鍵をかけているので、栞も入った事はない。
栞もこの能力の事は知らないし話すつもりもない。
俺以外でこの部屋に入った事があるのは、彼女だけ。
そう彼女だけだ。
ふと俺は、心の中に悔恨の情と自分自身の不甲斐なさに支配されそうになっていた。

頭を振り雑念を追い払って奥の手を使った。

――――――――――――――――――

奥の手を使い出来上がった地図の場所、俺の記憶が確かならば潰れたスタジオかなんかがあるビルの近辺だった。
奥の手と言っても万能ではない。
建物の詳細な地図があればもっと絞り込めるが、何処にいるかもわからない相手なので、大体の位置を特定するぐらいしか出来ない。

それでもこの奥の手があるのと無いのでは探すにせよかかる時間は雲泥の差である。
普通の人が持ち合わせていないこの技術があるおかげで、俺は日々の生活には困らない程度には稼げている。

「この辺りか。」
俺は誰に言うでもなく一人そんな事を言っていた。
腕時計を見ると時間は16時12分。
この時間なら人の一人でもいそうな物だが、天気が悪いせいか誰も視界には入らない。
位置的に言うのであれば目の前の古びたマンションだろう。
おそらく5階か6階立て。
周囲にも同じような古びた建物が並んでいる。
煤けたガラス張りのドアを開けて中に入るが、人の気配すら感じない。

地図にはBの記号が書かれたと言う事は探し人は地下にいるという事になる。
エレベーターは動いてないようだ。
「うち捨てられたマンションか。」
そんな事をぼやきながら先に進むと階段は簡単に見つける事が出来た。
さすがに電気もついてない状態では、うっすらとしか段差が見えない。
「ちっ、懐中電灯でも持ってくればよかったか。」
舌打ちをしながら、地下への階段へ降りていった。

地下へ降りてみると真っ暗闇で何も見えない。
だが、注意深くみてみると奥の方から光が漏れている。
位置的にも不自然な漏れ方だった。
ところどころ光は途切れているが長方形になっていると予想出来る形だ。

注意深く回りに気を配りながら光の前に進んでみると、予想通り扉がある。
静かに極力音を立てないように扉を開けてみる。
鍵でもかかっているかと思ったが、存外扉は素直に開ける事が出来た。

中に入ると一人の少女が猿轡と目隠しをされ、両手両足を縄で縛られてうずくまっていた。

側にかけよると俺に気付いたのか少女の顔がこちらを見た様な気がした。

俺は相手を怯えさせないように、出来るだけ優しい声で耳元で囁いた。
「三剣薊さんですか?」
こくこくと首を上下に振っている。
猿轡と目隠しをはずし、縄を解いてあげた。
なるほどさすが三つ子、三剣紫苑と瓜二つだ。違うと言えば薊はストレートにしているが、紫苑はポニーテルにしていた。
「三剣紫苑さんのご依頼であなたを探しておりました。」
「そう、ですか。」
一瞬陰りがみえた気もしたが、俺の気のせいだろうか?
「私は探偵三井龍人と言います。」
三井龍人さん・・・ですか、ありがとうございます。」
ポケットから携帯を取り出してみるがやはり圏外。
俺は三剣薊の手を取り、ゆっくりと立たせてあげ、歩ける事を確認すると、また暗がりを抜けマンションを出て行った。
誰にも見られていないだろうと思っていたが、一瞬視線を感じ辺りを見渡してみた。
だが誰もいない。
「気のせいか。」
「え?」
「何でもありません。」
彼女は一瞬怪訝そうな表情をしたようだが、まずはこの場所から離れるべきだと思い、彼女を促して俺はその場所を立ち去った。

彼女は状況から考えるのであれば誘拐されたのだろう。マンションを出て人通りのある場所に出た俺は、彼女が喉が渇いている事に気付き近くの喫茶店に入った。
奥の目立たない席に座り、俺はコーヒー彼女オレンジジュースウェイトレスに頼んだ。
ここに来るまで必要最低限のやり取りを除いては無言。
その無言に堪えられなくなった俺は彼女に聞いてみる事にした。何故あんな場所にいたのかという事を、三剣紫苑に連絡するのはその後でも構わないだろう。
「率直に聞きます。」
「はい。」
誘拐されたのですか?」
彼女は数瞬思考したようだった。
「おそらくそうだと思います。妹達と別れて私は一人歩いていました。後から口を塞がれて、そこで意識が途絶えてしまいましたので、何があったのかを明確に覚えてるわけではありません。
誰かが鼻歌を歌っていたのは覚えています。そして気付いた時にはあなたが見つけた時の状態でした。」
「そうですか、犯人心当たりはありますか?」
「いえ、全くありません。」
「そうですか。」
これ以上聞いたとしても犯人の情報は聞けなさそうだ、何よりも彼女の顔が少し恐怖に歪んでいる気がしたので俺はこれ以上聞くのはやめた。
「三剣紫苑さんに連絡をしますが、よろしいですか?」
「はい。」
本来であれば警察に連絡するべきではあるのだろうけど、今回の事をどうするのかは彼女達に決めてもらう事にした。
懐より携帯を取り出し、もらった名刺の番号にかけて見る。
「はい、エコールトランスファーコーポレーションです。」
三井と言いますが、三剣紫苑さんはいらっしゃいますか?」
「はい、三剣でございますね。少々お待ちくださいませ。」
数秒の保留音。
「はい、三剣です。」
三井龍人です。ご依頼の者を見つけました。」
「さすが有名なだけありますね。もう見つけるなんて。ありがとうございます。」
「いえいえ、依頼ですからね。」
「今どちらに?」
俺は今いる場所を伝えた。すぐに来るとの事だ。
「では、後ほど。」
そこで通話は切れたが、姉の声を聞きたいとは思わないのだろうか?
やはり不自然に感じてしまう。
それともこんな物なんだろうか。
目の前の少女オレンジジュースを飲んでいるだけで、俺と妹さんの会話も気にならない様子だった。

もやもやとした気分ではあるが、とりあえず乗り気のしない今回の仕事はこれで終わりだ。
ほどなくして三剣紫苑は現れた。走ってきたのだろうか、少し息が乱れているようだった。
三剣紫苑は姉の隣りの席に腰掛け、同じくオレンジジュースを注文した。
三井さん、本当にありがとうございます。」と言って彼女は分厚い封筒を俺に二つ差し出した。
「約束の報酬と今日一日の依頼料です。」
「あぁ、ありがとう。」
俺はおもむろに上着の内ポケットにしまいこんだ。
「中身を確認はしないのですか?」
「まぁ、依頼人を信じているという事で、それにこんなところで金勘定なんぞしたくはないですから。」
「くすくす」
予想してなかったが、三剣薊が笑っていた。「もう、姉さん、心配したんだからねぇ。」
「御免ね、紫苑。」
さっきまでの違和感は俺の思い過ごしのような気もしてきたな。
そこで三剣紫苑に彼女が捕らわれの身であった事や見つけた時の状況を掻い摘んで説明した。
警察に届けるかどうかはお二人の判断におまかせします。ただ、届けるのであればその旨は私にも報告をお願いしますね。私も警察で証言する必要が出てきますから。」
「わかりました。その点は姉と相談して決めます。」
店内の時計をみると18時21分。
「さて、では私はこれで失礼します。ここは私が払いますので、たいした仕事でもないのに報酬頂きましたしね。」
「あ、ありがとうございます。私達も帰りますね。」
三人はほぼ同時に立ち上がった。
俺は先に出て行った三剣姉妹を横目に勘定をすませ、喫茶店の外にでた。
そこには三剣薊と三剣紫苑が並んで立っていた。三剣紫苑が口を開いた。
「本当にありがとうございます。また近いうちにお会いしましょう。」
続いて三剣薊がか細い声で俺に話しかけてきた。
「ご迷惑をおかけしました。」
二人は一礼をするとくるっと百八十度向きを変えて、街の雑踏に消えていった。

違和感にすぐには気付かなかったが、三剣紫苑はまた近いうちにお会いしましょうと言ってなかったか?
その真意を問いたかったが既に彼女達の姿は見えなくなっていた。
心残りではあるが、俺は事務所に向かって歩き出した。
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