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見えない安全保障③ ― エネルギー安全保障
2026年04月04日 01:55
第3回:エネルギー安全保障 ― “当たり前”が終わる日 ―
ある夜、部屋の明かりがふっと消える。
最初は、ただの停電だと思うだろう。
暗闇の中で、手慣れた動作でスマートフォンを手に取る。
だが、画面の角にあるアンテナマークは消え、世界との繋がりは断たれている。
1時間後。情報の遮断が、じわじわと恐怖に変わる。
SNSは繋がらず、ニュースも流れない。掌の中にあった万能の道具は、ただの「光るガラスの板」に成り下がる。
3時間後。生活のすべてが、音を立てて止まり始める。
蛇口をひねっても、水は出ない。
マンションのポンプが止まったのだ。
トイレを流すことも、顔を洗うこともできない。
冬であれば、暖房は消え、部屋の温度は一気に体温を奪い始める。
夏であれば、密閉された部屋は逃げ場のない熱に包まれる。
6時間後。街は、私たちが知っている場所ではなくなる。
信号の消えた交差点で、車は互いに牙を剥き、動けぬまま立ち往生している。
コンビニの自動ドアは開かず、キャッシュレス決済は無効化され、
一枚の紙幣すら役に立たない。
エネルギーが途絶えるとは、
社会が止まることではない。
「あなた」の生活が、数時間で原始に放り出されるということだ。
私たちは、スイッチ一つで快適さを手に入れられることを、自らの「実力」だと錯覚してきた。
だが、その背後にあるのは、気の遠くなるほど脆い供給網だ。
発電所を動かす燃料のほぼすべてを海外からのタンカーに頼り、
綱渡りのような需給バランスの上で、かろうじてこの「日常」は維持されている。
輸入が止まり、燃料が尽きれば、この便利な生活は一瞬で砂上の楼閣と化す。
「止まらない前提」で組み上げられたこの高度な情報社会は、
ひとたび動力を失えば、自らの便利さゆえに、
驚くべき速さで自壊していく。
自前でエネルギーを賄えない国にとって、
供給網が切れることは、生命維持装置のプラグを抜かれるに等しい。
私たちは、便利さと引き換えに、
自力で夜を越す術を、どこかへ置き忘れてきてしまったのだ。
窓の外を見てほしい。
この眩いばかりの夜景は、決して不変の景色ではない。
それは、絶え間ない供給と、薄氷の上の制御が作り出した、奇跡のような「一時の幻」に過ぎない。
明日、そのスイッチを押しても、
何も起きないかもしれない。
そのとき、私たちは初めて知るのだ。
外の世界が、どれほど暗く、冷たいものだったのかを。








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