- 名前
- エンドウ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 41歳
- 住所
- 愛知
- 自己紹介
- 飲食店で激務の傍ら、休日は愛車と気ままなお出かけをすることが多かったのですが、最近は...
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最後のキス
2005年11月19日 21:57
出会いがあれば別れもある。
特に男女間のことならば、すべては感情の坩堝。愛し愛され、傷つき傷つける。
そんな、エンドウさんの石なくしては語れない悲恋のお話。
なぜ石がいるのかは、読んでいればわかります。
あれは彼女と別れる二週間ほど前のこと。
いずれウラにて書くと思いますが、エンドウさんは若くしてセックスレスという現代病理に巻き込まれていました。ある意味、清純な付き合いと言えなくもありません。
しかし、キスはOKでした。むしろキスはいっぱいしようよ、というような雰囲気であったかと思われます。
そんなわけで、デートはキスに始まりキスに終わるのが当たり前・・・ではありませんでしたが、後者については決まりきった慣習のようでした。
最後のデートは買い物をして、その後に彼女の家へ行き、日が暮れるまでおしゃべりをしたり乳繰り合ったりしていました。
季節は夏を見送り、秋を迎えていました。過ぎ去った季節に比べて日没の時間が早くなっています。部屋の電気をつけていなかったのでどんどんと明るさが失われていき、やがて真っ暗とまではいかないものの、お互いの顔が良く見えないほどになってしまいました。
「そろそろ帰らなくちゃ」という言葉はどちらが発したのか、今では定かではありません。ただ、どちらからともなく、別れの時間が来たということは伝え合っていました。
彼女が部屋の照明をつけたので、二人の顔が明るみの下へ晒しだされました。
彼女はあまり思いや考えを表情に出さない人だったので、人によっては冷たい印象を与えてしまいます。そのとき見た彼女の顔はいつも通りの、解釈しづらいものでした。
いつもでしたら、こちらから誘わずとも彼女のほうから擦り寄ってきて、自然とお互いの唇を求めます。しかし、その日に限ってそんな素振りは少しも見せませんでした。
調子を崩された私は、奇妙に思いながら荷物を整理し始めました。その様子を、彼女はただ見ています。その沈黙はまるで、得体の知れない魔手が私の心臓をわしづかみにして、いつでも握りつぶせるのだと圧をかけているかのようでした。
少しもたついた手際で荷物を整理し終えました。もう帰らなくてはなりません。
ベッドに腰変えた私とそのそばに立つ彼女。私は搾り出すように言葉をつむぎました。
「キスしたい」
それは、なんと拙いささやきだったことでしょう。後になるまでわかりませんでしたが、私はこのときすでに、やがて訪れるものを感じ取って震えていたのです。その恐れがキスを求めさせたのです。
「いいよ」と応えた彼女は私にしなだれかかってきました。私は初めて唇を合わせようとする少年のように震えながら、彼女の身体に手を回して抱きしめました。二人の身体の間に挟まれて、彼女の小さなふくらみが形を変える感触がします。
少し身体を離して、そっと唇に触れます。その感触だけはいつもと変わらないものでした。
むしゃぶりつきたい衝動を抑えて、触れ合うだけのキスを続けます。やがてより確かな感触を望んで、唇が彼女のそれを欲し始めました。
まるで喰らいつくかのように私は求め、彼女もそれに応じます。多分、喰らってしまいたかったのでしょう。あの時の私はそんな心境であったと思います。唇を舌でなぞり、交差を変えて、すべての感触を逃すまいとします。
そして、上下の唇で彼女のものを押し開き、口腔をあらわにしました。その中では妖艶とも言うべき長い舌が、獲物を捕食せんと待ち構えていました。かまわず、赤い巣の中に私は舌を入れました。
差し入れた舌は、私の小さな心そのものです。それで彼女の舌を撫で、絡ませ、擦ります。舌を引っ込め、突き出された彼女のものを唇に含みます。左右にこすり、軽く吸い上げて彼女の舌を味わいました。そして、今度は私の舌を差し出します。彼女は先ほど私がしたように、舌を包みました。
そして再び、お互いを求め合いました。口内からこぼれた唾液が二人の口元を淫靡に汚しましたが、私も彼女もかまわずキスを続けました。
やがて、存分に触れ合った唇が離されました。私たちの舌先をつなぐ唾液の糸が、名残惜しそうに伸びながらも、示唆するように切れました。
彼女は口元をそっと拭いながら言いました。
「これで満足?」
私はその意味がわからずに、ただただ頷きました。
その後のことは語る意味がありません。
一週間後にメールが途絶え、さらに一週間が過ぎ、私は彼女に別れを下されたのでした。
思えば、最後のキスを交わしたあの日の時点で、すでに彼女の気持ちは逸れていたのでしょう。あのキスは、何も知らない哀れな私に対する手向け花だったのだと思うのです。
その後、思い捨てきれぬ私は無様を晒すことになります。
・・・とまあ、そんなことがあったわけなんですよ。
愚鈍な我に石を投げるがよい。いや、過ぎたことなので手加減して欲しいです。
人は痛い目を見なければ、それを呼んだものを自覚できません。自覚できなければ、過去を過去として成長できないのです。おかげさまで俺は醜態を晒しながらも大いに学ぶこととなり、途中経過は省きまして、今に至るわけです。
一年ほど前、彼女との別れがなければ今に至っていたのかどうかはわかりません。その意味ではとても感謝しているのですが、気持ちの上ではもう顔をあわせる気にはなりません。
よい経験になりました。
それ以外のものにはしたくありませんし、なりません。
このデジログへのコメント
尿管結石かと思ったのに、あはは
すみません甘酸っぱい?思い出が台無しだね
彼女の一言、うーん…
そんな想い出があったんだね・・・。読みながら切ない気分になりました。「心の詩」を贈ります。
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