- 名前
- かつみ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 57歳
- 住所
- 神奈川
- 自己紹介
- メールの返事遅れます
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美咲・アジフライ定食を食べる
2024年09月24日 06:20
楽しみやった同期の智美とのランチは、阪急清荒神駅で待ち合わせて、荒神さんにお参りした後に、お店に行くことになった
朝、10時に清荒神駅の改札前で智美と待ち合わせだ
私が着いたんは、10時5分前、智美が来たんは10時を5分程過ぎた頃やった
「いやぁ~、美咲、悪い悪い~」
智美はTシャツに短パン姿、ショートカットにしたばかりの髪がよく似合っとる
「遅いやん。あんたの方がここに近いやろ?」
「そうやねんな。でもな、今日はどうもコーディネート決まらんでな。久しぶりの美咲とのランチデートやから、お化粧含めて気合い入れたんよ」
「コーディネートっちゅう服とちゃうやん。でも、そのTシャツ、短こう切った髪によう似合っとるわ」
「そうやろ? でも、美咲の服も素敵やで~。夏のお嬢さんって感じやねぇ」
私のは、半袖のブラウスに短めのスカート
やっぱり、女同志のデートとは言え、お出かけが少ないこのご時世、たまにはお洒落もしたくなる
「でも、まだ10時やのに、熱っついなぁ。梅雨、開けたんやっけ?」
智美は、さっきから扇子で顔を扇いどった
「まだやったかな。でも、今日あたりで開けそうやとニュースで言っとったかな」
「ふ~ん。あっ、お店ここやろ? ほんま駅前徒歩0分ってこんな場所を言うんやな」
「そやろ? でも、私が荒神さんお参りした時に、まだオープンしていないこの店の話を智美にしたけど、まさか、今日来るって言うとは思わんかったわ」
「そうか。私は、あんたにここの話を聞いた時から、頭の中はここのアジフライ定食やったで。電話で言ったやろ。うち、この店が大阪の北浜にあった時に先輩に連れられて行って以来、ここのアジフライファンやねん。その店が、うちの地元の私のテリトリーに来たとあっては、行かん訳にはいかんやろ」
ランチは11時半からなので、私たちは、店の前を離れて荒神さんへの参道を歩き出した
商店街は、お日さんが陰になっていて、少しは涼しく感じられる
高速の高架を潜った辺りからの緑と小川のせせらぎは、一層涼しい感じを私たち二人に与えてくれたんやった
女三人いれば寄ればかしましいと言うが、二人でもなかなかのもんや。智美と私は、15分程の荒神さんの参道を、ゆっくり歩きながら、ずっと喋っとった
職場の人間関係、今後のキャリアアップ、男友達のこと、習い事のことなど。話題は尽きない
荒神さんに着いて、二人でお参りをする
お願いをする時は、二人とも真剣やった
「美咲、あんた何をお願いしたん?」
「そりゃ、ここは火の神さん、台所の神さんやからなぁ。家内安全に決まっとるやん」
「あんた何を辛気臭いこと言っとん! あんた彼氏と別れたばっかりやと言っとったやん。そんなもん、良縁祈願に決まっとるやろ、うちら彼氏おらん若い女の子が願うことは」
まぁ、正直言ってそれも願った
でも、彼氏作るんは、今すぐでなくてええかなというのも、正直なとこやった
「まぁ、正直言うと、それもお願いしたけどなぁ。まぁ、今は、自分磨きをしっかりせなあかんというのも、思ってんねん」
「自分磨きかぁ。あんた、バレエ教室始めたって言っとったもんなぁ。どんなん?」
「うん、きついけど、ええよ。子供ん時に習ってからブランク長いから、身体が硬とうてどないもならんけどなぁ。でもな」
「何?」
「先生が、めっちゃ素敵やねん。プロポーション抜群で、勿論バレエもめっちゃくちゃ上手くてな。現役のダンサーもしとるそうなんやけど、あんな綺麗な人、私見たことないわぁ」
「へぇ。そうなんやね。教えるの優しいん?」
「いや、厳しいなぁ。でも、大人のクラスやから、かなりレベルを下げとるというか、押さえた指導をしとるのはよう分かるわ」
「へぇ。それは凄いなぁ。でも、なんとなく解るわぁ。うちのお茶の先生もそうやねん。厳しいけど、うちらのレベルをちゃんと解って、何を目指してお茶を習っとんのか、そこは
ちゃんと解っとる。でも、茶道の本質は外さへんけどな。それは茶道家としての矜持なんやろな」
「矜持かぁ、なるほど、分かるような気がするなぁ。」
智美の言う矜持という言葉は、バレエの先生にも当てはまる感じやった。相手のレベルには合わせるものの、バレエの本質は絶対曲げんというプロの覚悟、それにぴったり当てはまるのは矜持という言葉かもしれん
そしてそれは、私が小学生の時に教わった若い先生には、感じられんもんやった
「そうそう。夏休みか、いつか時間取れる時、出雲大社に行かん?」
「出雲大社?」
智美は唐突に切り出す
「そうや、縁結びの神さんの総本家っちゅうとこや。職場の先輩な、三十過ぎても独身やったけど、出雲大社に一度行ったら、直ぐに今の旦那さんに出逢ったらしいで」
「ほんまそれ?」
「そうや。出雲大社最強説は、嘘でないそうやで」
「あはは。最強説かぁ。10月の神無月は日本中の神さんが集まって、色んなご縁を話し合うらしいからなぁ」
「そうや、うちらにもってこいの恋愛パワースポットやねん」
「そうやなぁ。コロナの状況にもよるけど、久しゅう旅行にも行っとらんし、出雲ならそう遠くなさそうやしなぁ」
「そうや、一泊旅行ぐらいが丁度良さそうやよ。伊丹空港から出雲縁結び空港に行けば、近いでぇ。列車やと在来線の特急が時間かかるねん。岡山乗り換えで四時間程かかるねん」
「あんた、よう調べとるなぁ」
「そやろ。ネットで調べとるとこやねん。彼氏作るなら、自分磨きもええけど、神頼みも大和撫子ならしとかんとなぁ」
「うん、ええよ、行こか。時期はちょっと相談させてな」
「ええよ、夏休みはなんか用事あるん?」
「うん。母さんと優子、生まれた私の妹な、三人で温泉でも行かんかっって、母さんに言われとんのよ」
「えっ、そうなん。そりゃそっちやろ。うちとの旅行はいつでも行けるしなぁ。週末でも行けるやん」
「そやね」
お参りしての帰り道は、下りになっているせいもあって早く感じる
ランチのお店に着いたんは、11時過ぎやった
もう二人程、夫婦らしい中年の客が開店前やけど並んではった
「わっ、もう並んではるやん。流石やなぁ。新規オープンと違ごうて、名店の移転での開店やしなぁ」
智美はそう言って、遅れまいと並んではる二人の後に並ぶ。
私が並ぶと、智美は店の前に置いてあったメニュー表を見て来るだけでなく、スマホの写真に収め、列に戻って私に見せる
「これ見てみ?」
智美はそう言ってスマホで撮ったランチメニューの写真をみせてくれた
「山陰アジフライ定食、鳥取の焼きさば一本生姜定食、ザクザクやみつき唐揚げ定食、鳥取県鶏カツ定食かぁ。どれも美味しそうやなぁ。それに、山陰っちゅうても、鳥取メインなんやね」
「そうやねん。前の北浜の店も、屋号の前に「とっとりゆかりのあじ」って書いてはったもん。店主、鳥取の出身とちゃうかな? ほら、これ見てみ、鳥取県知事からオープンのお花届いてるやん」
「ほんまや、凄いなぁ」
「どれも美味しそうやけど、今日はアジフライ一択やねん。今日の私の頭ん中は、アジフライで出来とるからなぁ。他の食べもんは受け付けんねん」
「あはは。それ面白いなぁ。うちもアジフライにするかなぁ。でも、今度来る時は、別な定食も食べたいなぁ」
「そやろ? うちもそう思うわ。でも次は次や」
一人で繁盛してはるお店に並ぶんは、ちょっと時間をつぶすんに困る時があるけど、女友達と待つんはちっとも困らんなぁ
料理の話とか、智美と色々としとる内に、「お待たせしましたぁ」という店員さんの声で、並んどった私ら4名の客は、店内に案内された
店は、カウンターが5席、奥にテーブルに5席ほど、それに2階席もあるらしかった
私と智美はカウンターの端の方に案内された
「いらっしゃいませ!」
オーナーらしい板前の男の方も挨拶してくれはった
智美は、一応、メニュー表を見た後で、「アジフライ定食二つ!」と勢いよく注文する
「早ッ! あんた、注文早いなぁ」
「注文決まっとるんやから、悩む必要ないやん。それに他の人の注文が先に入ったら、うちらに出てくるの送れるやろ? お腹減っとんのに、他の人の料理が出てくんの、あんた、我慢できるか?」
「出来へんなぁ」
私は笑ながら答えた
うちらのお隣に座った夫婦は、一人がアジフライ定食、一人は鳥取の焼きさば一本生姜定食を頼んだ
さば定食は一本丸々の鯖を使ってめっちゃ美味しそうやった
「なぁ、焼き鯖定食も美味しそうやなぁ」
智美は私の耳元で小さく囁く
カウンター席からは、店主がフライを揚げとるんが見える。
美味しそうな音をたてながら、フライが揚がっている
「美咲、「海街dialy」って映画知っとる?」
小さな声で私に聞いてきた
「あぁ、見たなぁ。四姉妹を綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの豪華な女優さんでやってた鎌倉を舞台にした話やろ?」
「そうそう。あんた、あの原作のまんが見たことあるか?」
「映画見た後、レンタルコミックを借りて見た気がするなぁ。それが何?」
「あんた、そこまで言って解らんの?」
「解らんなあ。何?」
「あのまんがでな、アジフライの美味しい食堂の話が出てくるねん、覚えとらん?」
「あぁ、あったねぇ」
「あんた、アジフライへの愛着、その程度なんやね」
「うふふ。アジフライへの愛着ってあんた、オーバーやねぇ」
「いやいや、そうやねん。私、あの映画とまんが見て、鎌倉まで行こうかと思ったわ。モデルとなっとる食堂があるそうやねん」
「へぇ」
「結局、行かんかったんやけどな。去年、インターンでうちの会社来とる時、先輩に北浜のここの店に連れていかれてな」
「うん」
「そこで、アジフライ定食を食べた時、鎌倉の店やないけど、これやって思ったわ」
「なるほどなぁ。そう言えば、アジフライ定食出てたなぁって感じやけど、私が印象に残っとるんは、ちくわカレーかなぁ」
「あはは。ちくわカレーかぁ。なるほどなぁ。あれも印象深いなぁ。でも、あれは子供の時に食べた思い出の味やないと、それ程美味しいとは思わんやろうねぇ」
「そうかもしれんね」
「お待たせしましたぁ」
女性の店員さんが、二人のアジフライ定食を持ってきてくれた
揚げたてのアジフライ2枚、サラダ、御飯にお味噌汁、香の物。シンプルだが、揚げたてはめっちゃ美味しそうやった
「ポン酢に付けてお召し上がり下さい」
見ると、フライの横の小皿にポン酢が入れてある
ソースやなくて、さっぱりとポン酢で食べるんやな
二人で、お手拭きで手を拭いて、タイミングを合わせて手を合わせて
「頂きます!」
をした
そして、お味噌汁を少し飲んで、アジフライを箸に取って、ポン酢に付けて口に運ぶ
「サクッ!」
揚げたての香ばしい音と共に、新鮮なアジの香りが口いっぱいに広がる
「美味しいっ♪」
二人同時に小さく声を出して顔を見合わせる
一人で美味しいもんを食べてもこうはいかん
やっぱり、美味しいもんは、親しい人と食べるんが一番や
「美味しいなぁ」
「なっ、美味しいやろ?」
「うん。お母ちゃんのアジフライも好きやったけど、お店のは違うなぁ。それにポン酢も合うんやね」
「でもな」
「でも何?」
「ううん。これは後でや。あんたも解ると思うわ」
他のお客さんに、この店の食材は7・8割は、鳥取の食材やと店員さんが言ってはった
御飯も美味しい。これも鳥取のお米やろうか
アジフライの一枚目を食べ終える。アジの尻尾の部分も食べられそうやったんで口に入れると、サクサクといい音がして、そのまま食べられた
お味噌汁を飲んで、二枚目のアジフライを箸に取る
美味しいな。新鮮なアジを使うんがやっぱり肝なんやろな
だけど、二枚目の終わりごろになると、なんか少し飽きてくる感じもある。ポン酢ではなく馴染みのあるウスターソースを使いたくなってくる
見ると醤油差しはあるが、ソースは置いてない
そんな私の動作を、智美はじっと見ていた
「なっ? ポン酢もええけど、ソースも使いとうなるやろ?」
智美は小さく言ってきた
「うん。ポン酢もええんやけどなぁ。やっぱり、アジフライにはソースっていう子供の時からの習慣は、抜けんのやなぁ」
それでも、美味しく最後まで食べた
御飯に、お味噌汁にフライに香の物。900円でこの味なら安いやろう
「ご馳走様でした」
私は手を合わせて小さく御礼の言葉を述べた
智美は先に食べ終えて、メニューを見ていた
「美味しかったやろ?」
美咲が聞いてきた
「うん。美味しかったなぁ。ちょっと御飯が多いと思ったけど、こんなに美味しい御飯、残すのもったいないんで、最後まで食べたわ」
二人とも、定食の器は全て綺麗になっている
「うちもそうや。ちょっと食べすぎやったね。でも行くやろ、この後、カフェ」
「行く行く。勿論や。でも、腹ごなしに、中山寺もお参りせえへん?」
「中山寺? 良縁祈願の前に、子授け・安産祈願か?」
「そうそう、ってちゃうやん。あそこのお寺の雰囲気も好きなんよ」
「ふ~ん。ええよ。川西能勢口駅降りたとこのカフェに行こうと思っとったから、中山寺、阪急線の途中やし」
二人はお勘定を終えて、店を出る
「めっちゃ美味しかったです」
そう店員さんに伝えて、テイクアウトのメニュー表も頂いていく
「ほんま、美味しかったなぁ」
私は美咲に言う
「そうやろ、美味しかったやろ」
「北浜の時の味と比べてどうなん? 何か変わっとった?」
「う~ん。解らなんなぁ。どっちも比べられんぐらい美味しかったわ。器は変わっとった気もするなぁ」
「そうか」
「ソースで食べるんやったら、テイクアウトもええなぁ」
「そうやろ。私もそう思ってん。アツアツ食べられんのはちょっと残念やけどな」
気が知れた友達との時間は、めっちゃ楽しいし、時が経つのも忘れるぐらいや
美味しいもん食べて、たくさん喋って、どんな話をしたんか覚えとらんような話やけど、女ってやっぱり気の合う人と喋るんが、一番のストレス解消やと思った
改札を通って、梅田行のホームで電車を二人で待つ
「なぁ?」
美咲が聞いてきたので聞き返す
「私ら今は彼氏おらんけど、全然困らんやろ」
「うん?」
「素敵な彼氏がおる友達は羨ましいとは思うけど、彼氏のすべてが素敵な訳やないからなぁ。そんなんやったら、気の合う女友達と会っとる方がええと思うねん」
「うん。そうやね」
私は、そんな友達がいることを、本当にありがたいと思った
二人は、ホームに入ってきた、えび茶色の電車に乗り込んだ
(終わり)
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