- 名前
- ぱすかる
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- 年齢
- 73歳
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- 福島
- 自己紹介
- 中身は40代。 気が弱く臆病だが、ココロは獰猛。
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日本の医者が「ムダな薬と手術」をやめられない理由
2016年07月17日 13:15
なぜ日本の医者は「ムダな薬と手術」をやめられないのか? 現役の名医二人、南淵明宏・昭和大学横浜市北部病院循環器センター教授と岡田正彦・新潟大学名誉教授が語り尽くす。
ほとんどの薬は必要ない
南淵 週刊現代の薬と手術の特集は大きな反響があるようですね。
これだけ話題になるということは、それだけ多くの日本人が自分の飲んでいる薬に対して不安に思っているという証拠でしょう。
岡田 びっくりするくらい大量の薬を飲んでいる人もいますからね。うちの施設に入所される高齢者の中にも10種類、20種類という数の薬を飲んでいたという人がいます。
そういう人は、徐々にうちの施設流の処方に切り替えてもらうようにしています。薬の種類はだいたい半分以下になります。それから規則正しい生活やバランスのとれた食事、リハビリなどを行って生活習慣を変えていくとほとんどの薬が必要なくなるんです。
南淵 私の患者さんでも薬を12種類も飲んでいる人がいました。降圧剤、頭痛薬、睡眠薬、抗血小板剤、冠動脈を開く薬にビタミン剤など。本人もどこの病院で何科の医者からもらったかも覚えていない。不整脈の手術をすることになったので、それを機にほとんどの薬をやめてもらった。
そうしたら、それまではパーキンソン病かと思うような歩行困難や認知症状が出ていましたが、すっかり治まってしまった。本人も頭がすっきりしたと言う。こんな話はいくらでもありますよ。
岡田 うちの施設では入所される患者さんやその家族に「生活習慣を変えていきますので、今まで飲んでいた薬はできるだけやめる方向にします」と説明します。
そうすると、9割以上の患者さんや家族たちが、安心して顔がほころぶんです。「これまで病院通いをするたびに薬の量も増えてしまい、とても不安でした。ぜひ、薬を減らせるようにお願いします」と言うんです。
多すぎる薬に対する不信感を抱く患者さんが増えているという時代の流れを感じますね。逆に言うと、医者や病院のほうが薬を出し過ぎなのです。
薬を欲しがる患者に出す無害な薬
南淵 なかには「薬をやめなさい」と言ったら怒る患者さんもいるんじゃないですか?
岡田 たまにいますね。そうなると医者としては、薬を出さないで症状が悪化して、後で訴えられるのは怖いので、しぶしぶ処方せざるをえない。
南淵 診察して「あなたは病気じゃありませんから薬はいりません」と言っても納得してくれない患者さんというのは確かにいます。「せっかく来たんだから、なにか出してくださいよ」とね。
そういう患者によく出されている薬が、ビタミンを主成分にしたような薬です。神経痛や悪性貧血に効くということなんですが、巷ではずいぶんと多種多様、というかあらゆる症状に処方されているようです。
副作用がないからでしょう。効用のある薬は必ずなんらかの副作用を伴うもの。いくら飲んでも副作用がないということは、そもそも薬にも毒にもならないということです。
岡田 そんな薬でも出さないと納得しない患者さんもいるんですね。医者の側も副作用がないから安心してどんどん出してしまう。
「薬オタク」の内科医がいる
南淵 '11年に「偽薬相当」と認定されて、出回らなくなりましたが、ダーゼンという薬もよく処方されていました。消炎酵素剤ですが、酵素は巨大分子で飲んでもそのまま腸管から吸収されないということは人体生理学でも明らかなのに、やたらと処方されていた。
私が医学生のとき、指導教官から「こんな薬は絶対効くわけがないのだが、なぜか薬として出回っている」とはっきり言われました。そんな薬が保険適用されて国民全体の医療費を増やし、さらには製薬会社を大儲けさせていたわけですから、ひどい話です。
例えば糖尿病の薬は、本当に血糖値を下げてくれるのですが、逆に効き過ぎて低血糖を招くケースがよくあります。そうなるとめまいや動悸をきたし、深刻なケースでは命にかかわることもあります。
血圧の薬もそうです。血圧を下げ過ぎてふらついて転倒し、骨を折ってしまったり、脳へ血が回らなくなって認知症状が進んだりすることもあります。
またコレステロールを下げるスタチン系の薬も非常によく処方される薬ですが、横紋筋融解症という筋肉が溶けてしまう副作用があります。うちの施設ではこの手の薬を処方することは、ほとんどありませんね。
南淵 内科医のなかにはとにかく薬を出すのが自分の仕事だと勘違いしている「薬オタク」がたくさんいますからね。そういう医者が薬を使って病気を作ることだってある。
例えば不整脈です。不整脈の薬というのは、要するに心臓に働きかけて、脈を遅くするものですが、効き過ぎると心臓の中で刺激が変に伝わるようになって、新たな不整脈につながることがあります。不整脈の薬が新しい不整脈を起こすというのはよくある話です。
岡田 それでも毎日多くの「無駄で危険な」薬が大量に処方されている。
このような状況がなかなか変わらない一因には、メガ・ファーマと呼ばれる巨大製薬企業が絶大な資金力を使って薬の宣伝をしているという現実があります。
こんな医者は信用するな
南淵 パソコンやテレビは技術が進歩すればどんどん安くなっていくのに、薬の値段はそれに逆行していますね。新薬になればなるほど、高くなる。従来の薬の20倍から30倍の値段がつけられるのですから、まったくふざけた話です。
とりわけ症状がない、「未病」という分野が新しい巨大マーケットになりつつありますね。
例えば、「冷え症」。女性だったら誰でも「あなたは冷え症だ」と言われれば思い当たる節がありますよね。そういう人に向けてビタミン剤やら何とか酵素のようなものを売りつける。効果のほどはわからないが、「患者」は薬を飲むことで安心を得る。
岡田 このような話は薬に限ったものではありません。過剰な医療行為で患者がよけい悪くなるということは手術でもあるでしょう。
南淵 だめな外科医は本当に多いですからね。かかるのをやめたほうがいいのは、患者を通じて、他の医者を頼ろうとする医者。例えば、「今度、白内障の手術をすることになったのですが、南淵先生から見て、なにか問題がないか聞いてくるように言われました」と私のところを訪れる患者がいます。こんな大切なことを患者任せにしてしまう医者は絶対に信用できませんよ。問い合わせるならきちんと手紙を書いて渡してくれないと困る。
そもそも本当に優秀な医者なら、目の前の患者を診れば手術が可能かどうかわかります。要するに、自分の技術に自信がないんでしょう。こういう医者に当たったら、絶対に担当医を代えたほうがいい。
南淵 私がよく無駄な治療だと感じるのは、心臓の冠動脈のカテーテル治療ですね。これは本来やるべきでないのに行われている例が多い治療の典型です。
カテーテル治療は正確にはPCI(経皮的冠動脈インターベンション)といいます。細い管を冠動脈に入れて、狭くなった血管を広げて血流を回復するもので、内科医が行います。カテーテルの先につけた風船を膨らませて血管を押し広げるバルーン療法や、その後に金網のようなものを入れて血管を開いておくステント治療などがあります。
最初からバイパス手術(狭くなっている血管とは違うルートを作る外科手術)を行ったほうが患者のためになるのに、カテーテル治療を行っている例が本当に多い。
患者の病気を見つけるのは内科医です。それで、バイパスがいいのかカテーテルがいいのか、客観的に判断してくれればいいのですが、「患者がこれだけ少ないとカッコ悪いから、この人はカテーテルでやってしまおう」と安易に治療法を選ぶ内科医もいるのです。
技術のない医師が治療すると、血管がまた詰まる。それでまたカテーテルを入れ直して、また詰まるというくり返しです。困った挙句に「バイパス手術をお願いします」と外科に患者を送ってくる。それなら最初から手術しておけばよかったじゃないかという話です。
罪作りな人間ドック
岡田 私が無駄だと思うのは、自覚症状がないのに人間ドックなどで異常を指摘されて、手術を受けるケースです。
とりわけ問題なのは脳ドックです。ごく小さい脳動脈瘤が見つかることがあるのですが、それを手術で取るかどうか判断するのは非常に難しい。患者は「もしかしたら破裂してしまうかもしれない『時限爆弾』を抱えたまま生活するか、リスクを冒して手術をするか」という究極の選択を迫られます。
しかし、中には手術を受けたばっかりに半身不随になったり、認知症になったり、脳梗塞になって命を落としたりする事例もあるのです。
欧米では、小さな脳動脈瘤を切除したほうがいいかどうかという大規模な調査も行われました。その結果、動脈瘤を放置するよりも手術を行ったほうが不幸な結果になる場合が多いという事実が明らかになりました。
岡田 基本的に症状がない場合は、手術は受けるべきではないんです。しかし、検査で動脈瘤があるとわかってしまうと、やはり気にかかるもの。それで手術をしてしまう。そういう意味で、脳ドックという検査は罪作りだと思います。
しかし、それが逆に無駄な薬や手術の温床になっているという面もあります。経済的理由や自分の面子のために、治療や手術をやりたがる医者や病院がどうしても出てきてしまう。
岡田 本当にその通りです。薬を飲み過ぎていいことなんて一つもない。薬を出したがる医者ではなく、ひとつでも薬を減らそうとしてくれる医者を選ぶことが健康で長生きするための秘訣ですね。
「週刊現代」2016年7月16日号より
このデジログへのコメント
あ、これ昨日読んだ!
すごい納得しました。
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