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詐欺師入門(書名です)

2012年10月16日 04:08

詐欺師入門(書名です)

詐欺師入門(THE BIG CON The Story of the confidence Man)
なる本をようやく手に入れて読んだ。ロバートレッドフォードポール・ニュー
マンの競演作「スティング」の元ネタ本である。二十世紀初頭アメリカの、華
麗なる詐欺師の世界を生き生きと描いている資料的価値の高い本だ。

詐欺師とひと口に言うが、当時は分業制で、まず「カモ」を引っ張る「オト
リ」、仕掛けを構える蜘蛛の役を果たす「インサイドマン」、そして地元の治
安機関と話をつける「フィクサー」から成り立っている。フィクサーを除け
ば、これが最小構成。

これがどういう役を演じるかというと、まず競馬のノミ屋=私設馬券場(Book
 maker)詐欺の場合、これはワイヤーと呼ぶ詐欺テレビ携帯電話もない
時代だから、ノミ屋の構える店はラジオ中継の音声、そして掲示板に刻々とチ
ョークで書かれるレースの情報及び結果。電話がわんさか置かれ、賭けの注文
を受け付ける。窓口の売り場も当然設けられる。
日本ではノミ屋のメリットは、せいぜいが金がなくてもノミ屋が立て替えてくれる、
程度(?)らしいが、当時のアメリカでは、配当その他に、オモテでは得られない
特典を用意して(負けた場合でもキャッシュバック等)、繁盛していたようだ。

どういう詐欺か? 普通の正直な市民はカモにはしない。要は、カモを一蓮托
生の状況に引っ張り込むことにある。

オトリ「友人のあなたにだけ打ち明けるんですが、レース結果をあらかじめわ
かるとしたら、どうします?」

カモ「まさか、そんなことができるわけないでしょう」

オトリ「普通はそうです。まあ、これ以上はやめておきましょう。金を掴むに
は覚悟がいる」カモ「覚悟? よかったら話を」

オトリ「(ここまで話すには過程と紆余曲折がある)……実は、ここのオーナ
ーは電信技師を買収しまして、ラジオ中継を一分遅らせることができるんです
よ。あなたの五百ドルが五万ドルに化けたとしたら? いや、馬鹿な話を。忘
れてください」
オトリのセリフが恐ろしく下手(→俺は向いていないのだ。笑)なんだが、カ
モにする人間はあらかじめ調査してある。汚いこともやって、金を貯め込んだ
欲望に忠実な」アメリカンな小金持ち。何度か儲けさせてやって、オーナー

(もしくは競馬ギャンブルの顔役)にも紹介する。インサイドマン「彼の紹介
でしたか。だったら、五万と言わず、倍は約束しますよ」

などとインサイドマン=オーナー役(店主)は請け合う。どーんと賭けずに、
ちびちびやるようなら、馬券を買う列に並ばせて、前の列にいるサクラにごね
させる。「あと三十秒しかない!」とカモが抗議しようとも、サクラは断固と
して、これがはずれれば一家心中だの(!)、ノミ屋なんだから少しは金を融
通してくれ、などと時間を稼ぐ。オーナーもしくはオトリから得た一攫千金情
報の馬券を買おうと、ごね男が去った後に、窓口で注文しようとすると、「時
間です」と鼻先で締め切られる。そして買い損ねた一攫千金情報は、当たるわ
け。保守的で慎重なカモは動揺。周囲を見渡せば、自分の賭け金より桁違いの
金がばんばん飛び交う。実は客はすべてサクラで、金を納める金庫のウラは開
いていて、収めた金をまたそこから取り出して、サクラに渡して景気のよい状
況を作るわけ。

目の前で一攫千金を逃し(?)、金銭感覚がマヒしたカモは、オトリ(一緒に
買ってくれと、カモに金を預けたり)に責められる(たとえば)。
オトリ「どうしてくれるんですか! これで儲けられるはずの五万ドルがふい
になってしまった……! 言い訳無用。紳士だったら、目の前のトラブルを収
められるはずです!」

カモ「(混乱)そ、それは……」

オーナー(顔役のがいいか)「(片隅に呼び寄せ)まあまあ、焦らず。誰だっ
て初めから慣れているわけじゃない。最終レースですよ。だったら君(→オト
リ)が金を預かって賭ければいい。ハクビシンにプレイス。わたしも十万ド
ル、賭けましょう。責任重大ですよ?」

オトリ「わかりました」

ここでオトリはハクビシン(馬ね)に一等単勝(っていうのか)を三人分賭け
る。カモはこの時点で小切手を切って、最後の大勝負に出る。
レース、はじまる。ハクビシン、ぶっちぎりのトップ。カモ、百万ドルの夢に
頭くらくら。ここでオーナーが血相を変えて、オトリに詰め寄る。

オーナー「馬鹿め! プレイスの意味を知らなかったのか? ド素人め。プレ
イスってのは二等の意味なんだ! (以下、罵声)」
カモは意味がわからず、茫然。オトリは「しまった……」とだけ。
この時点でカモから(二十世紀初頭当時の)ん十万ドルは巻き上げている。仕
上げはピストルを取り出したオーナーがオトリを撃つ。オトリ、口に含んだ鳥
の内臓を噛んで、口から血を流しながら、倒れる。

「殺しだ! サツが来るぞ!」サクラが叫んで、わぁっと逃げ出す。カモも血
相変えて逃げながら、ほうほうの体で家に逃げ帰る。結論は、金は失ったけ
ど、逃げられてよかった、だ。何故なら、カモも事件関係者だから。……悪党
だね、カモも。

最近のドラマで「ホワイトカラー」ってのがあるんだが、まんま、再現してい
たんで笑ってしまった。ラジオ液晶パネルに変わっていたが、「タイム
グ」はさほど信憑性を失わぬ。むしろ今の時代こそ、情報の操作なんてしやす
いから。

ああ、ちなみに本が書かれた年代は一九四〇年代。マィノリティの隠語などを
研究する言語学者が、成功して、引退した詐欺師の話を取材した結果の本だ。
ジャーナリステックというより、本来は民俗学的な内容なんだけど、復刊され
たものをいっきに読んだ。

ちなみに、オトリ役。作者は、いろいろな詐欺師から、オトリは容姿をはじめ
TPOから人好きのする性格でなければだめだ、ということを繰り返し聞かさ
れたという。人をだますためのTPOは、さすがに教養は必要な部分しか切り
取れないらしく、「アイルランドイギリス系はだましやすいが、中国や日本
はだめだぜ」なんて。

……頼むよ。いくらスノッブで洗練された英語を使おうが、俺はわからんな
ー。ピンポイントジョークを飛ばされても、アジア系には「はあ?」という
感じだろう。そこいら辺が、目的に特化された教養の限界。
けれど、顔の見える人間が、最大限の魅力を発揮して、人間をだます。それが
基本の時代が確かにあったんだろうな。

このデジログへのコメント

  • 才谷涼太 2012年10月16日 22:18

    信用詐欺師はグリフト界(非暴力犯罪)の貴族である。と著者は書いています。映画「スティング」は名作だけど、テレビの「ホワイトカラー」もなかなかクール。本ですが、ふと見たら1800円。安いものです

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