お年寄りの暴走

一カ月くらい前になるのだが、とある町の郵便局で速達を出す手続きを
していたところ、急に「邪魔なんだよ！　とっととどけ！」と声が飛んできた。

その郵便局はカウンターに立つと、通路が塞がる極小の郵便局だった
んだが、声の主は７０代くらいのお年寄りだった。
邪魔と言われても、その郵便局はそういう造りになっているから困るんだが、
その男性の老人は明らかに怒っていた。

その怒り自体が理不尽なものに思われたので、俺は言ってやったよ。

「失礼、くらいは言えるでしょう？　声をかけてくれたらどきますよ？」

あるいは、若いの、ちょいとごめんよ、くらいくだけた感じで声をかけてくれる
と、こういうご老人っていいなあ、と思えるんだけどな。

失敬とか失礼とか、ちょいとごめんよ道空けて、くらいの声かけって、年輩の
人だったら普通にできると思っていたのだ。

なんだかチンピラみたいな声かけされたので、つい、俺も反応してしまった。
顔を見ると、普通の年寄りだ。俺の反応が「すみません」じゃなかったので、
一瞬当惑した表情で、「そんなの、言われなくても気づけ」と捨てゼリフを
残して去っていった。

躾の悪い年寄りだ、とは思ったが、俺は思ったよ。絡んだのが俺でよかったな
って。若い人間が年寄りをぼこるのは簡単だし、武道などの心得がある年寄り
は、まずそんな躾の悪い態度は取らない。

思うに、年功序列社会で生きてきて、あげくポイされた男性の末路はこれかって
感じだな。たぶん、現役時代はえらかったのだろう。だけど、特にサラリーマン
なんてのは、会社辞めるとただの人以下になる。

あの馬鹿げた学生運動をやった団塊の世代も、実は古い日本人で、年功序列
体系に上手にはまった。学生の頃は口先だけでえらそうなことを言って、社会人
になったら年功序列、弱肉強食論理で、がうがうした世代。それ以上の世代になる
となおさら。

なんで、某大手企業で部長までやった俺を尊敬してくれないのだ？

なんてな。会社内というか組織内、ムラ内の世界観と論理で世の中を見るから、
現役ばりばりの若手リーマンだと「ああはなりたくないな」になるし、俺みたいな
フリーランスから見れば、単に「人としての躾が悪い」となる。無駄に歳をくってる
なって感じだな。ま、くだらん話題だけど（笑）。

特筆すべきは、女性は違うなってこと。性格悪い、癖がある、おしゃべり、とか欠点
は個人個人のお年寄りにあるだろうが、基本的に、権威にすがっていないところが
救われるよな。たとえば狭い歩道で女の年寄りが乗る自転車は、道を譲ってやると
必ず頭を下げるか「すみませーん」と言ってくれる。

自戒せよ、だな。残念な年寄りは、圧倒的に男性に多い。これは生活実感をもって
言えるね。

写真、会津、大内宿のねぎ蕎麦。ねぎを豪快に噛みちぎりながら、蕎麦を食うのだ。