よりにもよって、と言っていいのかどうかわからないけれど、なぜ今日だったのか？がボクには未だわからない

今日ほど、
キミのひとみが揺れているのを、
見たことはない

求めるような、
挑むような、
そんな輝きに、
満ちていたことも

だから、
よりにもよって
なぜ、今日なんだろう？

ボクが独り占めをゆるされた
キミの、とっておきの
今日という日に

あれほど
楽しげに
見知らぬ街への旅を
振り返り
ふたたびの道行きを
約しさえ
したのに

終りなの？

と、問うボクに

決然と
平然と
眉根すら
動かすこともなく
キミはうなずき

路地裏で
くちづけても
なにごとも変わることはなく

駅までの道のりは
果てしなく、長く

たちどまり
両膝に手をつき
腰をかがめ
歩けないボクに

「顔色が悪いよ？」

と、こともなげに
言い放つ、キミに
ボクは言葉を
返す力もない

ボクはまだ
キミを
抱きしめてもいないのに

なのに、なぜ
キミを喪わなくては
ならないの？

今さら、
と、いっていいものかどうか？
家族がいることを
俎上に載せておきながら
なのになぜ、
これからも
ボクと逢うの？