stuck

なるべく
なにごとにも
こだわらず、

見たもの
感じ取ったことを
言葉にせず、
おきとどめることもないよう、
記憶のスイッチを
切るように
こころがけているのは、

省エネ、
あるいは、
エコロジー

などという、
昨今の流行に
乗り遅れないようにしよう、
なんて、
世間に阿るための
方便ではなく

ただのひとことも、
思いや心根を
伝えようとしないのも、
ほぼ、同じ理由で

ひたすら、
消えぬ痛みに悶えつつ
わが身が可愛く、哀れで

まぁ、そのあたりまでが
せいぜい、
認めてやってもいい、
自己防衛本能
の、ようなものかと。

ペニスの先で
情熱を確かめつつ
とても美しい人に向かって
さんざん、
愛している、
なんて、言葉を並べながら
セックスをしていて
けれど、気持ちは
そこにはいなくて

そのこころねを
言い当てられ、
狼狽を隠すために、慌てて

「キミは、サトリなんだね」

なんて、昔観た映画の
主人公だった妖怪の名を
口にすると

ベッドの端っこで
下着に脚を通していたそのひとは
ボクを振り返って
冷ややかな微笑みで
胸をえぐる

そんな脂汗の中で
目覚めれば
原稿は、そのまま

どんづまり。