犯罪ギリギリ（４）

ここまで引っ張っておいて何なんですが、結局のところ、何もしなかったんですよ。だから「ギリギリ」。
でも、このあとが最大のヤマ場だったんです。

私の膝の上で戯れる女の子。こちらの脳内は妄想、いやすでに性欲といったほうがいいか、それで満タン状態です。
当時の我が家では茶の間にテレビがあって、それの向かい会う形でソファが置いてありました。二人が座ってテレビのアニメを見ていた（私は見ていないも同然。何しろ、何のアニメだったかまるで覚えていません）のは、このソファの上です。
さあ、どうしようか。少女を背後から抱き締めようかと、私の両手はピクピクしています。妄想から現実へ、一線を越える瞬間が近づいているのか……
そのとき、彼女がバランスを崩したのです。
私の膝の上から落ちかけた彼女は、くるりと体の向きを変え、転落を免れました。そのかわり二人は、顔と顔をつき合わせて、向かい合う形になったのです。鼻と鼻が、あるいは唇と唇が、触れ合わんばかりの距離で。

で…顔を見合わせた二人は、爆笑しました。

ここがターニングポイントでした。
もしこのとき、彼女が……たとえば、うっとりと目を閉じたりしていたら？　たぶんブレーキは掛けられなかったでしょう。私の様子に怯えたり、泣きそうな顔でもしたら、逆にサド心を刺激されて、突っ走ったかも。
実際には、ちょうどアニメが終わったこともあって、彼女は純潔のまま、帰っていきました。
（つづく）