趣味は読書、大岡昇平の「事件」

池袋に文庫本専門の、新刊書店がある。最初にそれを知り、訪れてから恐らく30年近く経つのではないだろうか。
その店と、「八重洲ブックセンター」の文庫コーナーは、探書の最後の切り札の双璧(完全におかしな言い方だ)である。
家からだと遠いので、そんなに頻繁には行かないし、その店で探して見つからなかった時の、落胆は測りしれないのだが。
昨日手に入れた大岡昇平の「事件」は、最近絶版になったもの。僕がこの作品に興味があったのは、とても個人的な理由だ。
僕は、二歳の時、九州の大分県から神奈川に引越して来た。それから、今の仕事に就く、四十歳まで神奈川で暮らしていた。
「事件」は、神奈川の架空の町を舞台にしているが、出て来る地名から、僕の住んでいた町の近辺を舞台にしているらしく、とても懐かしい。
少し読んでみただけで、馴染みの土地の名が頻繁に出て来るので、イメージしやすいし、一体当時のどの辺りを舞台にしたのか、あれこれ想像している。これは、本当にこの作品に限っての、僕だけの読み方。決して一般的ではない。
しかし、それを抜きにしても、面白そうな作品である。
最近、西村賢太の作品を続けて読んでいるので、ログの文章に影響が出ている気がする。