- 名前
- ゆり
- 性別
- ♀
- 年齢
- 44歳
- 住所
- 大阪
- 自己紹介
- 気さくなゆりをよろぴく☆ ログも読んでね^^ んでもってアドヴァイスなどもよろぴ♪
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創作推理ミステリィ☆「・・もう気がついているよ」 ②
2012年10月26日 00:51
江見利夫は夏樹保に話しかけた。
「保、犯人は知ってるヤツなんだろ。声が出ないし、鉛筆も持てない、くわえられないならキーボードで押してくれないか?」と常時ノートパソコンを持ち歩いている江見利夫はバッグからノートパソを取り出してスイッチを入れた。夏樹保は非常に遅い動きだったが何とか三文字だけキーを押せた。
J U N
江見利夫はギョッとした顔で僕の顔を見た。僕も{えええ}?と驚いた。保はゆっくりと首を横に振った。
僕は「他のジュンとかジュンがつくヤツ?他にもいたっけか?そういえばB組にもジュンがいる」
江見利夫は「C組にジュンジってのがいる」
保はそれ以上キーを打つのもムリだったようでこの三文字が精一杯だったようだ。
僕と江見利夫は夏樹保のお袋さんに挨拶して病室を出た。
お袋さんは「ジュン・・・ジュン・・・」とブツブツ独り言のように言っていた。
その名に聞き覚えでもあったのだろうか?
僕は彼女に「学校や先生への連絡は僕と江見利夫に任せてください。冬休み中だけど担任の阿古先生に何とか知らせます」と言うと、お袋さんは「あ、、ありがとう、、」と言って泣き崩れた。
病院を後にしてから僕と江見利夫で学校の連絡用電話に電話をかけてみると、
夜遅かったけど、うまい具合に小用を片付けにきていた用務員さんが出たので次第を話した。
用務員さんは、先生方は3日前から慰安旅行に出ている、即刻連絡して帰ってきてもらうからと頼まれてくれた。
翌日は用務員さんからの連絡で帰ってきた阿古先生、僕、江見利夫の三人で病院に行った。
この日から鳴海宇一郎という子が見舞いに来ていた。鳴海宇一郎はJ組の子で夏樹保とは同じ中学校だったそうである。彼は、冬休みに入った日から最近まで家族で旅行中だったらしい。
阿古先生と僕たちA組一行が病室に入ったときに、鳴海宇一郎は床に座り込み泣いていた。
小さな体が余計に小さく見えた。それが鳴海宇一郎と会った最初である。
夏樹保はもうベッドに寝かされ体中にチューブが繋がれ身動きできない状態だった。
眠っているようで何の反応もない。
保のベッドのまわりで動いているのはポコポコと透明の泡を出している点滴の液体だけだった。
そのまた翌日に旅行から帰ってきた真波智弘、綾野明も含めて、僕、江見利夫、阿古先生、鳴海宇一郎とで毎日見舞いに行ったが、夏樹保はそのまま目を開けることもなく2日後に死亡した。
お葬式にも僕達と阿古先生、鳴海宇一郎は参列した。親御さん達はかなりやつれた顔だった。
お袋さんは僕達と亜子先生、鳴海宇一郎に警察から聞いた話をしてくれた。
目撃者達の話によると、犯人は小柄で薄い色のジャンパーを着ていたと。
阿古先生と鳴海宇一郎、僕達A組一行は一緒に帰路についた。
僕は再度、夏樹保の遺言とも言えるメッセージ、彼がキーボードで示した「J」「U」「N」の話をした。
僕は「一体誰なんだ。保に何の恨みがあって・・・」と話した。
「この学校の人とも限らないな。夏樹保が他で親しくなった人かも」と阿古先生は言った。
「日本の警察は優秀らしいから捕まると思う。お袋さんが最後に聞いた保の声、自分と親しげなフリして・・・ってことだから、おのずと犯人像はしぼられてくる」と僕が言うと、阿古先生はこっくりとうなずいた。
江見利夫、真波智弘、綾野明、それに鳴海宇一郎は終始無言で歩いていた。
冬休みが終わり三学期が始まった。
阿古先生は僕と江見利夫に「夏樹保は残念だったけど、君たちが彼の分まで幸福に長生きするのが供養だ。
それに、J組の鳴海宇一郎とも知り合えた。彼とも仲良くね。これでまた五人組だ」と励ましてくれた。
僕もそうだと思っていた。鳴海宇一郎の存在も知ったし、亡き夏樹保と親しかったなら僕たちとも仲良しに・・・と思っていたけど現実は違った。
江見利夫、真波智弘、綾野明は、夏樹保以外の三人にあまり好感を持っていなかったというのを他の生徒達から聞いた。
リーダーシップを取る夏樹保に調子を合わせていただけで、実は他の三人とは趣味が合わなかった、
夏樹保がいなくなったから、もう残りの三人に調子合わせる気はないと言っていて、実際に江見利夫、真波智弘、綾野明は僕に話しかけることもなかった。江見利夫、真波智弘、綾野淳もそれぞれお互いに近寄ることもなかったようである。
J組の鳴海宇一郎はアメリカへの留学がきまっていたらしく、始業式の日だけ来て担任の先生とクラスの子達に挨拶だけして翌日出発したらしい。
この話は阿古先生から聞いた。
夏樹保がいなくなってすべての友人関係がなくなってしまった。
卒業式まで残り1ヶ月程度だったが、この1ヶ月は冬休み前とは世界が変わったように思った。
いつもわいわいと賑やかだった僕のまわりには誰もおらず、登校して下校するまで誰とも何も話さない日々が続いた。
僕ってそんなに人好きのしない男だったのかな?
やがて卒業式。僕に話しかけてくれたのは阿古先生だけだった。
「椎名純一君。悲しい残念なこともあったけど、君は夏樹保君の分まで生きてね」と先生はいつもの柔和な表情で言ってくれた。
「阿古先生、僕は夏樹保の件、気がついたんです。先生も気がついてるんじゃないですか?
僕が、“犯人が誰かに気がついている”ということにも気がついているんじゃないですか?
もしかしたら他の子も気がついているかも。
でも何も仰らないのは、今更どうこう言うより、残りの4人やJ組の鳴海宇一郎がいい友達になること、それが夏樹保に対しての供養だと思ってらっしゃるからでは?」と僕は問うた。
阿古先生は意外でもなさそうな静かな表情で答えてくれた。
「君はカンのいい子だ。もう気がついているのではないか?と思っていた。
でもね、もう終わったことだ。
夏樹保君のことは警察に任せよう。人を疑うなんて悲しいことはやめておこう」
「わかりました。僕もこの考えは胸のなかにしまっておきます。探偵もどきなこともしません」
これが卒業式の日に学校で交わした唯一の対話であった。
犯人はついに捕まらなかった。昭和の迷宮入り事件となったわけだ。
でも、僕だけでなくて、他の誰かも気がついていたかもしれないと思う。
犯人は誰かに。。。
高校卒業してから30年の歳月が流れ、今日は3年A組同窓会。
江見利夫・真波智弘・綾野明は不参加だった。
彼らが来ていなくて残念という気もなかった。
あれほどつるんでいたけど夏樹保がいなくなってからは疎遠になってしまったからだろうな。
「やぁ、懐かしいな」と阿古先生が近づいてきた。
考えたら僕たちの担任だったころ、阿古先生は今の僕たちより若かったんだな。
もともと小柄な阿古先生は少し小さくなったような気がする。
僕は「阿古先生、物持ちがいいですね。その淡い水色のジャンパー、僕達が高校生の頃からお召しじゃなかったですか?」と尋ねた。
阿古先生は「おや、記憶力がいいね。そうなんだ。私は痩せてるから服が傷まないし、このジャンパー仕立てが良くてね^^」と笑っていた。
僕は「夏樹保の件は遂に迷宮入りになりましたね。犯人に『時効も過ぎたしよかったね』なんて思ったらひどすぎかな?」と阿古先生の表情を見ながら言った。
阿古先生は昔と変わらない柔和な表情で言った。「心の痛みは一生消えないからね。時効が過ぎようがどうしようが記憶喪失にならない限り一生の心の傷となる。犯人は今も苦しみ続けているかもしれない。もう過去のことだ。君達が夏樹保くんの分まで幸せに生きたらいいんだよ」。
そう言って阿古先生は他の元生徒のほうに行った。
その水色のジャンパーを着た小柄な先生の背中を見ながら僕は思った。
阿古先生、30年前に僕が“犯人が誰か気がついている”って事に気がついているんじゃないですか?
何も言わなかったのは僕達生徒を動揺させないためですか?
そしてもう一生僕達にも、保のご両親にも言わないんですね?
だから、保のお葬式の帰路で「犯人は学校外の人かも?」お話をずらそうとしたんですね?
きっとそうだ。あなたは当時、生徒思い・父兄思いで定評があった。
犯人と夏樹保との間で何があったのか?
真相を知っているのは天国に行った保だけでいい。
誰にも言わなくていい。
それよりも生徒たちがこれからも仲良くしてくれたらいい。
そう判断したんですね?
だから、卒業式の日、僕があなたに「犯人が誰かに気がついている」と言ったときに
「もう何も考えなくていい」と抑えたんですね?
そうですよね?
阿古潤太郎先生。
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さて、犯人は誰なのでしょう。
ある程度、皆さんの推理をお寄せいただいてから解答いたしまする。
このウラログへのコメント
はは !(^^)/
> you88さん
あっちのどっちというのは、どっちのこっちのことですにゃ。
> hiroさん
21:28に少し編集しましたが大筋は変わっていません。さて、犯人は・・・
まったく わから~ん けど「鳴海君」で ファイナルアンサー^^
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