過去への旅（藤の花が咲きました）

「えりスケ。藤の花が満開やで。見においで。」

北白川の伯父の誘いに乗って。。。

手入れされた藤棚にいくつもの紫の花を垂らして綺麗に咲いていた。

「年々大きくなっていくなぁ。綺麗に咲かせるなぁ。」
「あんまり傍へ行くと蜂がおるで、刺されんようにな。」
「手入れ大変やろ。こんだけ立派に咲かせようとおもたら。」
「そうでもないで。畑仕事に比べたら楽やで。」
「そうかぁ。。。それにしても見事やな。」

「えりちゃん。ひなさんにおうてきたんやて？」
「うん。会ってきた。」
「初めてか。。」
「前に会ったっていってはったけど。覚えてないし。。」

「会ったからといって。。。お父さんのこと、理解できたわけでもないわ。余計に混乱してる。」
「そうか。」
「何を期待してたわけでもないんやけどね。」
「うんうん。」
「ひなさんにとっては、楽しい昔話やったんやろな。お父さんとのことは。」
「そうやろかなぁ。」
「私にとっては、未だに解決できないことやのにね。」
「そうかぁ。」
「結局のところ。私は、ひなさんにも痛い思いをしていて欲しかったんやろね。父親との生活が楽しい昔話で終わっていて不満なのかも。」
「えりちゃんは、お母さんのこと思うからやろ。」
「それもあるな。」
「お母さん。苦労しはったしなぁ。」
「おっちゃん。私はな。そんな可愛いこと思ってなかったんよ。」
「うん？」
「きっと。。。
私の大事なものを全て奪っていったのは、あなた。私の家族が不幸だったのも全てあなたのせいなの。って押し付けたかったのかもな。
全部、あなたが悪いのよ。そうやってひなさんとお父さんのせいにしたほうが楽やったから。。。」
「まぁ。ええ父親ではなかったしな。」
「ほんで。。。
ごめんなさい。私が悪かったです。
って、ひなさんに謝って欲しかっただけなのかもな。」
「謝ったかい？」
「ううん。おにぃのことも一言も口にせなんだ。」
「ほんで余計に腹が立ったと。。（笑）」
「図星や。ようわかるなぁ。」
「長く生きてるしな。（笑）
えりちゃんの正義は、ひなさんの正義ではない。」
「思いを押し付けたらあかんと？」
「そういうこっちゃ。」

「まぁ。考えようによっちゃ。お父さんも可哀想な人やね。
家族にすら本当の自分を見せられなかった。挙句。死んでからも娘に嫌われている。（苦笑）」
「ひなさんには。本当の姿を見せてたといってはったか？」
「ようわからんって。。。優しかったらしいけど。」
「案外。家族に見せてのが、本心やったのとちゃうか？」
「わからん。私は、酔っ払って暴れてる父親しかみたことないから」
「『火宅の人』やったからなぁ。」
「家が燃えてるのに、遊び狂うか。。。まさに。。。」

「まだ続けるのか？父親探し。。。」
「わからん。まだ見つけてはいないけど。
一生かかっても見つけ出せそうにないしな。」
「焦ることではないな。まぁ。そやって気にしてるってことは、忘れ去られるよりええやろから。」
「恨みつらみばっかりやけどね。（苦笑）」
「それでもええがな。娘に忘れ去られるほど辛いことはないて。」
「あんな強烈な人。忘れられんやろ（笑）」
「そらそうや。（笑）」

「しかし。。綺麗やなぁ。今年は少し早いのか？」
「そやな。藤の花言葉は、『決して離れない』やで。」
「ほう。。おっちゃん。教養あるなぁ。」
「インターネットで調べた」
「うあ！使えるンや。」
「年寄りをバカにしたらあかんでぇ。（大笑）」
父と母とは、一体どんな色の縁で結ばれていたのだろうか。。。

「えりちゃん。筍の佃煮あるで。お茶づけ食べておいき。」
「いや。もうそろそろ帰ります。」
（京都のぶぶ漬け。。。）
「そういう意味でいうたんとちゃうで。」
「じゃ。佃煮。貰ってかえろ。」
「あははは。あつかましい娘やな。」
「うふふふ。。。」