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猫を抱いて象と泳ぐ

2009年03月02日 04:14

猫を抱いて象と泳ぐ

小川洋子の新作です。あの「博士の愛した数式」が数式で人生を、愛を語る人々の物語だとしたら、この「猫を抱いて象と泳ぐ」はチェスで人生を、愛を語る物語です。
 それにしても小川洋子という人のストーリィテラーの腕は見事です。唇が閉じて生まれた少年。デパートの屋上から降りられなくなった象。壁の隙間に挟まって死んでミイラになった少女。動かないバスに住み、おやつを作りながら少年にチェスを通して人生を教えるすさまじいばかりの肥満男。汚くなった布巾を手放すことのない老女。そして、チェスを指すからくり人形。こうしたさまざまな小道具をすべてつなげて一つの物語を紡ぎだしていくのです。しかも、それぞえの人には悲劇が訪れるのですが、その悲劇が必ずあたたかい視線でやわらげられるのです。
 まるで「ガープの世界」のアーヴィングのような筆さばきであり、死にゆく人々への慈しみは、「タイタンの妖女」のカートヴォネガットのそれのようです。
 チェス盤の下に、猫を抱いた小さな男がうずくまって、人形を操作してチェスを指しているなんて映像、考えるだけでわくわくします。
 チェスをする場面で、象が泳ぎ、ミイラがあたたかくよりそい、猫がうずくまる。なんてすごい映像でしょう。いずれ映画化されたらって心底願いました。心に残る小説でした。

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