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虐殺器官 伊藤計劃 著

2010年06月07日 01:20

伊藤計劃(いとうけいかく)という作家はすでにこの世にはいないそうです。

彼は1974年に生まれ、2007年、この「虐殺器官」でデビューし、癌によって2009年に亡くなっています。
2001年から癌との闘病が続いていながら、その中でこの傑作をものしたのですから、そのヴァイタリティーはものすごいものです。

かなり前に読み終えていたのですが、暴力殺戮シーンが多いため、少しブログに書くのをためらっていました。しかし、本日の朝日新聞書評にも取り上げられているのを見て(尻馬に乗るものではないのですが)、この機会に紹介しておこうと思い立ちました。

近未来の物語です。ナノテクノロジーバイオテクノロジー、IT技術の進歩により戦争・もしくは虐殺は、単なる技術となっています。主人公は、アメリカ暗殺・虐殺を本務とするセクションの人間なのですが、この近未来では企業までもが戦争や虐殺を請け負っています(現在もすでにそうですね。特に広告業界による戦争の報道などは企業によります)。
伊藤計劃の筆は非常に精緻であり、近未来の描写が、まるで目の前の殺戮シーンをカタログスペックを読み上げながら解説されているかのようです。
そのようなシーンが続く中で、主人公と母親との関係や、虐殺のシーンにかならず姿をみせるアメリカ人ジョン・ポール、そして彼の恋人の人間が描かれていき、ついに主人公クラヴィス・シェパード(神の羊使いですよねシェパードって)は、アメリカ平和宅配ピザが疑問もなく届く状態)の本質を知るわけです。

何とも暗い物語です。

自らが癌による手術・治療を耐えながら、人間の虐殺シーンを描く、その心理はいかなるものだったのでしょうか?

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