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「緑の資本論」 中沢新一著

2009年03月11日 03:49

中沢新一は、「虹の階梯」から、著作がでるとつい手に取ってしまう人物です。彼の宗教に対する造詣はとてつもなく深く、その宗教哲学文学を通しての提言は、今までにない斬新な見方からのものです。
 「チベットモーツァルト」がそうでしたし、「雪片曲線論」「蜜の流れる博士」「はじめてのレーニン」など、それぞれが非常に魅力的な作品ばかりです。
 この「緑の資本論」は2002年に発行されているのですが、現在の混迷した資本主義(の暴走)を予見した論文です。
 そもそも9.11事件をきっかけに書かれた「圧倒的な非対称」でさえ、「世界にとりかえしのつかない非対称ができてしまった」状態を分析し、「富んだ世界」と「貧困な世界」の住人が戦いを起こしている現在に、対称性を回復する知性を呼び戻すよう呼びかけることからはじまります。
 そして利子という貨幣が誕生するときに湧いて出てくる「精霊」のようなものを、その誕生の段階で刈り取ることで貨幣の増殖を止めようとする一神教たるイスラーム経済学原理考察することで、「三位一体」という曲芸のような理論構築を作り上げたことにより資本主義と深くかかわることになったキリスト教文明への「経済学批判」を行おうとする「緑の資本論」の章。
 また、ギリシャにはじまり西洋文明に流れ込む「ピュシュス」という存在のありかたと、日本の「モノ」という存在のあらわれかたの違いにより、資本主義を邁進させ、科学技術を先端化させる現代文明に対する批判である「モノとの同盟」の章。
 すべての章が読んでいて楽しく、知的好奇心を満足させてくれる。
 おすすめの一冊である。

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