10年後

ｶﾊﾞｰなのかｵﾘｼﾞﾅﾙなのか、
それすら分からなかったけど、
うるさいほどの爆音と、
照明の赤や緑が心地よかった。
人がまばらなﾗｲﾌﾞﾊｳｽで、
並んで音楽を聞いている。

たまに耳打ちをする君の声は、
音楽にかき消されて、
ほとんど聞こえなかったけど、
話し終わったあと
私の目を見て微笑むから、
つられて笑ってしまった。

触れているわけじゃないのに、
左半身がふわっと温かい。
この距離が妙に落ち着いた。

一緒にいることの不思議。
君は昔からの友達。
君が結婚してからは、
こうやって2人で会うことなんて
まったく想像してなかった。
君が離婚をしたあと、
君が離れた子供を思って
泣いているのも知っている。
そんなとき、なぐさめてくれる彼女が
どんないい子かも知っている。

友達としての距離は、
縮まることもなく、
離れることもなく、
心地いいまま続いていく。