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【母親殺し・・・】

2006年01月17日 20:31

オレはお袋が嫌いだった。
子供の頃から何かにつけて弟とオレを比べ

「おにいちゃんなんだから、しっかりしなさいっ!」
「何で弟の○○ちゃんが分かるのに、アンタが分からないのっ?」
「はぁ、ホントに順番が逆だったらよかったのに・・・」
「いいわよ、老後は○○ちゃんに見てもらうから
 アンタじゃ何されるか、わかったもんじゃないからねっ」

こんなことを年中言われ続けていて、好きになれるはずがない。

だけど、皮肉なことにそんなお袋の面倒をオレが見ることになったんだ。
弟には弟の生活があり、その生活の中にはお袋が入り込める余地がなく
オレには、不幸なことにその余地があった。
何より、オレのカミさんがお袋と意気投合しちゃって
喜んでお袋の面倒を見るって言い出したからだった。

お袋が一緒に住むようになってからというもの
それまでのカミさんとはうって変わって
オレに対して攻撃的になった。
お袋も歳をとってもオレに対する態度は変わらず
カミさんと一緒になってオレを批判する。

ある日、カミさんが子供たちを連れて買い物に出ているときのことだ。
二人きりで、気まずい状態でいるリビングでお袋が突然
「アンタ、あたしは知ってるのよ
 アンタが他の女とよろしくやってるのを」
とニヤッと笑い
「○○さんや、子供達が知ったら悲しむだろうーね~クククク」
と、意味深に笑った。そしてオレに手を差しだし
「はい、口止め料」
と言った。
最近お袋は競馬にこっていて、日曜になるとTVの競馬中継に釘付けで
アツくなってる姿をよくみかけていた。

オレは黙って、財布ごとお袋に渡し「好きなだけ抜けよ」と言った。

口止め料でもあるし、小遣いのつもりでもあった。

それからのお袋は狂ったようにギャンブルに金を注ぎこむようになった。

競馬だけにとどまらずあらゆる公営ギャンブルパチンコ
フリーのマージャン・・・・
その度にオレに資金の無心をする。
もちろんカミさんのいない所でだ。
その額もシャレじゃすまなくなってきて
オレは店の運営資金にまで手を付けるようになっていた。

ある日、いつものようにお袋がオレに金の無心に来たとき
オレの中の何かが壊れた。

ニタニタと笑うお袋の首に手をかけた。
何も考えられず、ただお袋の首に力を込めた。
そのうちに、子供の頃からの恨み辛みをオレは口に出していた。
「オレだってな・・・ちっきしょー・・・好きでアニキになったんじゃねー よ・・」
などと口走りながら、力を込めていった。
お袋の顔色が段々と青ざめていき
やがて白くなり
口からは泡を吹き
だらんと舌が出て



そしてお袋の身体から力が抜けた・・・



はっと我に返ったオレはまずいっと思ったが手遅れだった。
この手で母親を殺してしまった。

しかし、不思議と罪悪感はなく、ただ今の生活を壊したくない思いだけだった。

オレはすぐにお袋の死体を車に積み込み
近くの山中に埋めに行った。

山の奥深く、獣道もない場所を選び、スコップで穴を掘りお袋の死体を車から出し
穴の中に放り込んだときに、また言いしれぬ怒りが涌いてきて
気が付くとお袋の顔をスコップでめった刺しにしていた。

しばらくその場所で息を落ち着けてから
今では面影もなくなったお袋の顔にオレは土をかけた・・・
車に戻る道を歩きながらオレは身体全体が重いのを感じた。
これが罪の意識をしょうことなんだろうかと思った。


服に付いた泥を払い、出来るだけ冷静を装い家に帰ると
幸いなことにまだ、カミさん達は帰ってきてなかった。
そのまま何事もなかったように過ごすことをオレは決心した。
お袋のことを聞かれたら、ぶらっと出て行ったと言おう。
そして、しばらくしたら母親が帰ってこないと警察に捜索願を出そう。
そうだ、最近少しボケが始まっていたようだと言おう。
金は持ってるから、電車でどっかに行っちゃったのかもって言おう。

よしよし、老人の失踪なんて珍しくないから
きっと警察だって本気で捜査なんてしやしないさ。

良い方へ良い方へと自分の考えを持っていき
務めて冷静になるようにしているうちにカミさん達が帰ってきた。

カミさんも子供達もお袋がいないことを気にしていないようだ。
よしよし、オレもあえて触れないでいよう。

不思議なことに夜になっても誰も何も言わない。
オレもそのことに触れず、その晩は全員が眠りについた。
ただ一人、オレだけがベッドの中で背筋を走る妙な感覚に眠れなかったが。

次の日になってもその次の日になっても誰も何も言わない。
オレは段々全てが勘違いで、夢でも見ていたのかと思うようになってきた。
最初からお袋はこの家にはきていなくて、オレがお袋を殺したことも
何もかもが幻想だったんじゃないだろうか?と思うようになった。

しかし、オレの背筋を走る妙な感覚だけはいつまでたっても消えず
毎晩眠りの浅い夜を過ごしていただけである。

ある日のこと
真ん中の娘が突然不思議そうにオレにこう言った。


「ねぇ、何でいつもおばぁちゃんはお父さんの後ろを付いて歩いてるの?」



オレの全身から血の気が引き
ぞくっとした寒気がオレを襲い
娘の瞳の焦点がオレの後ろに合っているのを確認した途端
オレは夢中で後ろに向かって手を振り回し

「うわぁーーーーーーー勘弁してくれっ!!!!」

と叫んでいた。
するとオレの耳元で「わかった」って声が聞こえ
サササササササッという気配がしたと思ったら
すーっと背筋が軽くなり
そしてお袋がリビングの入口から走り去る後ろ姿が一瞬だけ見えた。

それを見た瞬間全てが分かった








ははーん、なるほど

オカン悪寒)が走る」

ってオチだ

このウラログへのコメント

  • まりな 2006年01月17日 23:37

    な…何か凄い!!!文章力ありますね~♪

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