三王朝交代説

戦後直ぐに早稲田の水野某が唱えた説
基本的に建前上日本の皇統は万世一系だから否定はされているが
興味深い説ではある

記紀の記載の重箱の隅をつついたような話ではある
古代天皇の異常な長寿やそれに基づく神武即位を紀元前660年としたり
二代綏靖天皇から九代開化天皇までの事績の記載がなく実在が怪しいとされ
この間の八代を欠史八代などともいう。

A神武王朝
B崇神王朝
C応神王朝

①崇神王朝
②応神王朝
③継体王朝

ABCは歴代天皇の漢風諡号で「神」の字が当てられているのがこの三名のみであるという点からくる
日本書紀は国史でもあるが外交文書でもあり日本という国の歴史を海外に発信する意味もあった
天皇の諡号は淡海三船という人物が一括して付けている。記紀の編纂に関わっていたとも思うし臣籍降下した歴とした皇族でもあるから数多くの資料を目にしたであろうし説得力はある

①②③はABCもそうなのだが記紀の事績と怪しい点を照らし合わせて語られている
まず崇神（神武）王朝。神武と崇神を同一人物とする。確かに神武は即位後に薨じており大和での事績は描かれていない。そのためより具体的となる崇神と同一人物とし仲哀天皇までを第一の王朝とする
次に応神王朝。父である仲哀天皇が新羅征伐に向かう途中に九州で不可解な死を遂げる。
仲哀天皇、神功皇后、武内宿禰と三人で神降ろしの儀式を行い巫女でもあった神功皇后が神憑りし
神意を得た時に仲哀天皇は薨じている。そのため当時妊娠していた神功皇后が長となり新羅征伐にあたるため石を腹に巻き出産を遅らせ応神は別称として胎中天皇ともいわれた。この物語が王朝の断絶があったのではと推察されまた応神以降は王権の地が大和から河内に移っていることから河内王朝とも言われている。
この王朝は宣化天皇の代に実際に男系男子が途絶えている。
そして継体王朝。応神の子孫を迎えるために宣化天皇の死後、越前に勢力を持ったオホド王という応神五世孫を探し出し大和入りさせた。記紀によると大和からの抵抗に遭い二十年間の戦の末にやっとのことで
大和入りすることとなる。

ざっくり書いたがこんな感じ。

自分の考えはどうかと問われると王朝交代はなかったと思う。

特に明快な答えはないが後の日本史を見てみると家として武力を放棄した天皇家は連綿と続き
武力でもって天皇家を倒せるだけの権力者を挙げるといくらでもいるが皆それをしなかった。
日本史の一番不可解なところはここにある。
あの信長でさえ天皇にはなろうとしなかった。
足利義満の権力は恐らく日本史史上最大の力を持っていた。実際に義満は明から日本国王とされているが
これは交易のためであろうし名ばかりの権威は必要なかったであろう。

古代から徳川時代まで一貫しているのが自身の権力基盤を安定させるために各時代の実力者達は
自身の娘を皇后に据えその子を天皇にすることで実権を握っていた。

古代の姿はどうだったのだろうか？
今でも出産は里に帰り行うという習慣がある
古代の皇子の名に多いと感じるのが出生地と母系はどの家系かが分かる名前が多い
藤原氏が台頭する頃のような露骨さはなかったろうが
天皇家と同等の力を持つ豪族は多くいた
天皇は「大王」であって「王」をまとめた王であった
大王家と手を組むことができる王が現実的な政治を大王と共に各王と共にしていたのではないか
各王（豪族）はそれぞれ基盤とする地域も違うし出来ることも違ったと思う
灌漑工事が得意な豪族
鉄器を製造できる豪族
稲作を主導できる豪族
特別な鉱脈を抑えている豪族
祭祀を司る豪族
戦の先頭に立てる豪族
などなど
今でも地方地方で特産物は違う
日本人の精神性というと大袈裟かもしれないが
奪うより取り込みそれなりの地位を与え重用する
天皇・大王家の職能はその調整だったのではないだろうか
故に
「和を以て貴しとなす」

次に祭祀や呪術について考えます